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無期転換逃れで雇い止め「6カ月後にまた来てよ」 雇い直されなかったらどうなる?
2018年08月12日 09時59分

4月から適用がはじまった「無期転換ルール」。2013年4月を始期として勤続5年超の有期労働者には、無期転換申込権(以下「申込権」)が発生するようになりました。本人が望めば、次の契約更新から無期契約に転換できます。

人手不足から率先して無期転換を進める企業もありますが、一方で労働者を辞めさせづらくなるため、無期転換逃れの「雇止め」も問題になっています。懸念される手口の1つが「クーリング」を利用した脱法行為の増加です。

4月から適用がはじまった「無期転換ルール」。2013年4月を始期として勤続5年超の有期労働者には、無期転換申込権(以下「申込権」)が発生するようになりました。本人が望めば、次の契約更新から無期契約に転換できます。

人手不足から率先して無期転換を進める企業もありますが、一方で労働者を辞めさせづらくなるため、無期転換逃れの「雇止め」も問題になっています。懸念される手口の1つが「クーリング」を利用した脱法行為の増加です。

●「また雇用してあげるから」という雇止めは無効と考えられる

クーリングとは、契約と契約の間に一定の期間を空ければ、勤続年数がリセットされる仕組みのことです。これを悪用して、「クーリング期間後にまた雇用してあげるから」などと約束して労働者を雇止めする手法が考えられます。

もしも、クーリング期間後の再雇用を約束したのに、守られなかった場合、法的にはどういう扱いになるのでしょうか。

労働問題にくわしい山口毅大弁護士は、「結論から言えば、合意はそもそも無効で、労働者が望めば継続して働けると考えられます」と答えます。ただし、複数の見解があるそうです。細かい内容を見ていきましょう。

●公序良俗に反するので無効になる

――法律的には何が論点になるのでしょう?

今回のような想定は、申込権が発生しないようにすべく、労働契約法18条(無期転換ルール)を潜脱する(法の網を潜る)目的でクーリング後に雇用の合意をしている以上、実質的には「申込権を事前に放棄する」という条件のもとで、クーリング期間後の日を就労始期とする「始期付労働契約」を締結したとみることが考えられます。

このようにとらえた場合、その合意が有効かどうかという問題と「雇止め法理」(労契法19条)の適用の問題になります。

たとえば、5年間で契約満了として雇止めされたあと、6カ月経過後に雇い直すという合意があった場合、その合意の有効性については、無期転換ルールの趣旨にさかのぼって考える必要があります。

――無期転換の趣旨とは?

無期転換ルールの趣旨は、有期労働契約の濫用的な利用を抑制し、労働者の雇用の安定を図る点にあります。

有期契約は不安定な雇用をもたらすだけでなく、契約が更新されないのではないかという不安から、労働者が法令や契約上の権利を行使するのを躊躇させています。

そう考えると、申込権を放棄することを含む合意は、無期転換ルールの趣旨を没却するものですから、公序良俗に反し、無効です。これは契約締結段階の約束でも、更新時や申込権が成立した後でも一緒です。

もっとも、「いかなる場合も、申込権の放棄は無効である」という私見とは異なる見解もあります。

この見解でも、申込権の発生前(勤続5年に満たない場合など)に放棄する「事前放棄」は、原則として公序良俗違反になりますが、例外的に、高額の報酬で任期を限って雇用される高度専門職につき事前放棄の合意がある等といった特段の事情があれば、公序良俗とは評価されず、有効と考えます。

また、申込権の発生後に放棄する「事後放棄」の場合は、労働者の自由な意思による放棄であれば可能であるとしています。

ただし、その見解に立ったとしても、今回想定するようなケースは、単なる労契法18条(無期転換ルール)の潜脱である以上、特段の事情が存在しない場合が実務上圧倒的に多いと考えられます。

ですので、本件のようなケースでは、ほとんどの場合、公序良俗に反し、無効となるでしょう。

●実際にはどんな救済が考えられる?

ーー法律的にはそもそも無効だとしても、実際には、雇止めされる労働者が出てくる可能性があります。具体的には、どういう救済が考えられるでしょうか?

一つの考え方としては、期間の定めのない契約と実質上異ならない状態であるといえる場合や既に雇用継続への合理的期待が生じているといえる場合には、雇止め法理で救済する方法があります。

想定されたケースでは、無効な合意とはいえ、労契法18条を潜脱する趣旨で、会社が再雇用を約束している以上、既に雇用継続への合理的期待が生じていると考えられます(労契法19条2号)。

さらに、このような雇止めは、労契法18条を潜脱する意図でなされている以上、客観的合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないと評価できます。また、更新の申込みの要件についても、クーリング期間が経過した後に異議表明をしたとしても、「正当な又は合理的な理由による申込み」として許容されるでしょう。

ですので、契約期間満了をもって契約終了ということにはならず、従前の有期契約が更新されると考えられます(雇止め法理/労契法19条)。

ーーその場合、無期転換権はどうなるのでしょうか。勤続年数はリセットされない?

想定されたケースでは、雇止め法理によって契約が更新された結果、通算期間が5年を超える以上、申込権が発生するので、労働者は、契約の期間満了日までは申込権を行使できるようになります。

(弁護士ドットコムニュース)

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