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元ホス狂、元トー横の23歳女性「強欲のモメたん」が詩集・写真集を出版 「歌舞伎町の経験生きた」
2024年12月07日 09時14分
#オーバードーズ #トー横キッズ #歌舞伎町 #強欲のモメたん

日本一の歓楽街とされる新宿・歌舞伎町。この地で、ホストにハマる「ホス狂」や路上にたむろする「トー横」を経験した女性が、「強欲のモメたん」(23)だ。OD(市販薬の過剰摂取)やリストカットによる入退院も繰り返すなど、「病みのデパート」状態だった彼女が11月末、詩集と写真集を電子出版した。その半生と作品を世に出した経緯を歌舞伎町で聞いた。(ジャーナリスト・富岡悠希)

日本一の歓楽街とされる新宿・歌舞伎町。この地で、ホストにハマる「ホス狂」や路上にたむろする「トー横」を経験した女性が、「強欲のモメたん」(23)だ。OD(市販薬の過剰摂取)やリストカットによる入退院も繰り返すなど、「病みのデパート」状態だった彼女が11月末、詩集と写真集を電子出版した。その半生と作品を世に出した経緯を歌舞伎町で聞いた。(ジャーナリスト・富岡悠希)

●「地雷系メイク」でやってきた

モメたんは12月上旬の取材当日、泣き腫らしたような赤い目元が特徴的な「地雷系メイク」で待ち合わせ場所に登場した。

彼女は10月末からODで今年2回目の入院となり(1回目は夏のリストカット)、11月下旬に退院したばかり。体調が心配だったが、やや肌寒い中でもコートを脱いでの写真撮影に快く応じた。

聞けば、この日も依存症から抜け出すための自助グループの集いに参加したあと、やって来ていた。詩集のプレスリリースでは、彼女のことを精神的に沈んでいる「病み界隈」にも属していると紹介している。

しかし、筆者と向き合った彼女は、快活とまでは言えないが、日常生活を過ごす気力、体力は十分にあるように感じた。とはいえ、インタビュー用に気合を入れてくれた部分もあるだろう。

詩集『刺激中毒』(リブオン)と写真集『わたしの全てにいいねして』(東京ローレライ)は11月30日に同時発売。詩集には20編の詩と、モメたんが得意とするイラスト28枚を収録している。写真集は、歌舞伎町の路上やホテルで撮ったカットに加え、7千字に及ぶロングインタビューが巻末にある。

画像タイトル 取材に応じる「強欲のモメたん」(2024年12月上旬/富岡悠希撮影)

●「歌舞伎町で学んできたことは無駄じゃない」

詩集の一遍「真実と嘘について」から、一部を引用する。

"グラスに注がれるシャンパンの味はなんだか変な味がしたけれど、そんなのはどうでもよくて、きみの幸せそうな顔が、ぼくを幸福にした。 いま、この幸福に包まれた中で、全てを終わらせたいと思った。"

"きみは、ハマったホストAで、「ぼく」はモメたんのことだ。ホストクラブでシャンパンタワーをやった時のことだろうか。お金で買った一時の「幸福」なだけに、そこには儚さがついて回る。"

モメたんは詩集と写真集が世に出た感想をこうまとめた。

「ホストに貢いだりODしたりと、世間から否定されることをしてきました。けれども、私は歌舞伎町で学んできたことは無駄じゃないと思っている。二つの作品を出せたのはうれしい」

画像タイトル 「強欲のモメたん」(撮影:紀世はじめ 提供:東京ローレライ)

●歌舞伎町を歩いているとキャッチにつかまった

東京で生まれ育ったモメたんだが、幼少期から父母のケンカが絶えず、家に警察官が来ることもしばしばあった。不登校になるようなことはなかったが、17歳ごろからうつ病になり、ODやリストカットに走るようになる。

高校卒業後、看護の専門学校に進むも、精神的にしんどくなり休学した。20歳のとき、人と会う予定を終え、歌舞伎町を一人で歩いているとキャッチにつかまった。何となく興味を持ち、流れで初めてホストクラブに行くことに。キラキラした内装の中、ホストにちやほやされて楽しかった。

当時から、頻繁にTwitter(現X)で投稿する「ツイ廃」だった。そのうちTwitterで、中性的な顔立ちで、タイプのホストAを見つけた。お店に行き指名すると、「まさにこの人!」と一目惚れした。そのAから、翌日以降「付き合おう」「同棲しよう」「結婚しよう」などと言われた。

「今思えば営業トークだったとわかるのですが、舞い上がっていた私は『彼が全て』となりました」

Aはモメたんの恋心を巧みに利用し、「月150万円、お店で使ってほしい」と貢がせにかかった。当初は復学した専門学校に通いながら夜職で稼いだが、次第に両立できなくなる。退学して、「夜職一本で、毎日鬼出金でノルマの150万円を死守しました」(モメたん)。

そして月2回ほどAが在籍する店にいくと、数十万、ときに三桁万円を使い、彼の売上に貢献した。

画像タイトル 「強欲のモメたん」(撮影:紀世はじめ 提供:東京ローレライ)

●「トー横キッズたちこそ、『命を大切にしている』と言いたい」

しかし、自分に尽くしているモメたんを、Aは次第にぞんざいに扱うようになる。1年ほどが過ぎ、貢いだ総額2千万円ほどとなったタイミングで、Aと別れた。

家庭環境が悪く、専門学校からも離れた22歳の彼女を受け入れ、次の居場所となったのがトー横だった。各地から集まってくる中高生を含む10代たちは、モメたんを温かく迎えてくれた。一緒にお酒を飲み、ODをして騒いだ。

筆者が初めてトー横キッズをネット記事にしたのは、2021年夏。まだ、ゴジラのオブジェがある「新宿東宝ビル」横の路上にいる頃だった。その後、「歌舞伎町シネシティ広場」に移動し、メンバーを入れ替えながら、長らくその姿が確認された。最近は広場が柵で覆われたことから、向かいの路上に居場所を変えている。

時期からすると、広場にいるモメたんを筆者は目にしたことがあるかもしれない。10代半ばの幼顔の男女の中にいると、22歳は大人だ。その分、彼女はキッズたちを冷静に分析する。

「過度の飲酒やODで病院に運ばれるメンバーもいるから、キッズたちは『命を粗末にしている』と指摘されます。しかし、私の見方は違っていて、キッズたちこそ、『命を大切にしている』と言いたい」

「『生きたい』からこそ、家出をしてやって来て、女の子は売春をしながら生活費を得ている。男の子も、できる支えをしています。彼ら彼女たちも一生懸命なのです」

画像タイトル 「強欲のモメたん」(撮影:紀世はじめ 提供:東京ローレライ)

●モメの名前は「飼い猫モグとメメの頭文字」

モメたんの言葉は、彼らと一緒に過ごしてきただけに説得力がある。

少し年上のお姉さんだったモメたんは、トー横キッズたちが起こすトラブル収拾に尽力した。「自分に重なるところもあるし、見捨てられないと思って、彼らが困っていたら助けてあげていました。しかし、彼らとは人生経験の違いもあるし、数カ月が経つと足が遠のくようになりました」。

モメたんは、自身の思考や感情を「文字に書き出し文章にすると整理できる」とする。そのためAとの失恋を乗り越えようと、昨年からXに心情を吐露する文章を投稿するようになった。

それらが、今回の詩集・出版のプロデュース役となる井川楊枝さんの目にとまる。井川さんは「文章が独特で、描く絵も魅力的。ビジュアルも映えることから、歌舞伎町発のアーティストになれる魅力がある」と考え、モメたんの作品を手掛けることにした。

モメたんの入院などで延び延びとなっていたが、今夏に撮影などを実施。11月末の発売にこぎつけた。

彼女のモメの名前は、かつての飼い猫モグとメメの頭文字から取った。そのうえに「強欲」の漢字二文字を付けたのは、自分の内面を見つめたからだ。

「ODをやめられず、ホストとの恋愛に執着した私は人一倍、欲が強いのだと感じています。それならば、隠さずに思い切って名乗ってしまえと付けました」

モメたんは、今後も文章や絵などでの発信を続けていくつもりだ。そして「歌舞伎町にいる子どもたちに届き、共感して、彼らが諦めずに生きることにつながってほしい」とも加えた。

何かを創作するときには、作者の中に生み出す大きなエネルギーが必要となる。モメたんが抱える強欲のエネルギーは、創作へ望むような形で転生できるに違いない。

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