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排水弁を閉め忘れ「300万円賠償」、職員負担で良いの? 教員のプール水流出でも多発
2021年02月16日 10時25分

さすがにこの金額だと、水に流せないのかーー。職員のミスで水漏れが1カ月続き、兵庫県庁の水道代が約600万円も余計にかかったことが話題になっている。

報道によると、水漏れが起きたのは県庁地下にある受水槽。2019年10月に業者が掃除をした際、一緒にいた50代の県職員が「自分が閉める」と言ったにもかかわらず、排水弁を閉め忘れてしまったそうだ。

神戸市水道局が指摘するまでの1カ月間、水は流れ続けたという。

県庁は職員に対し、約300万円の賠償を求め、すでに支払い済みだという。残りの半分は県が負担することになる。この職員は「訓戒」の処分(規律違反を注意するものだが懲戒処分ではない)も受けている。

さすがにこの金額だと、水に流せないのかーー。職員のミスで水漏れが1カ月続き、兵庫県庁の水道代が約600万円も余計にかかったことが話題になっている。

報道によると、水漏れが起きたのは県庁地下にある受水槽。2019年10月に業者が掃除をした際、一緒にいた50代の県職員が「自分が閉める」と言ったにもかかわらず、排水弁を閉め忘れてしまったそうだ。

神戸市水道局が指摘するまでの1カ月間、水は流れ続けたという。

県庁は職員に対し、約300万円の賠償を求め、すでに支払い済みだという。残りの半分は県が負担することになる。この職員は「訓戒」の処分(規律違反を注意するものだが懲戒処分ではない)も受けている。

●プールの水では賠償多数

公務員のミスで水漏れが起こることは珍しくない。代表的なのは、学校プールの水が流しっぱなしになるケースだ。

たとえば、千葉市の小学校で2015年にあった給水栓の閉め忘れでは、約438万円の損害が発生。校長、教頭、ミスをした教諭の3人が全額を返済した。

ただ、「全額」は珍しいようだ。2015年に起きた都立高校プールの水栓閉め忘れをめぐる住民監査請求に関し、教育庁は次のように回答している。

「(都内の自治体では)判例や顧問弁護士との協議により、プール水の流失事故において25%から75%までの割合で損害賠償請求を行っているとの情報提供を受けている」

実際、このとき問題になったケースでは、状況なども踏まえて、ミスした教員の負担は、損害額の半分に当たる58万円だった。

●ミスしたら労働者から

業務中のミスで発生した損害について、使用者が労働者(被用者)に対して賠償を求められる(=求償)のかという点では、「茨石事件(最高裁昭和51年7月8日第一小法廷判決)」という有名な判例がある。

タンクローリーで衝突事故を起こした運転手に、働いていた会社が損害賠償を求めた事件だ。

この中で最高裁は、事業の規模や性格、業務内容や労働条件などの諸事情に照らしたうえで、「信義則上相当と認められる限度」で請求が認められるとしている。

ただし、実務上は求償が認められるケースはそんなに多くはない。たとえば、居酒屋店員が店の皿を割ったなどというレベルでは、賠償の必要はないと考えられる。

この判例は民間のケースではあるが、公務員にも概ね同様の基準が適用できると考えられている(cf.最高裁平成29年9月15日第二小法廷判決)。

なお、民間と公務員では違いもある。行政法の研究者でもある平裕介弁護士は、「公務員の場合は、軽過失だと求償権が条文上否定されています」と説明する。

国家賠償法1条2項では、公務員が求償されることがある場合について、故意または重過失があるときとしているのだ。

「公務員に故意又は重大な過失があったときは、国又は公共団体は、その公務員に対して求償権を有する」

これは萎縮せずに公務に当たれるようにするなどの趣旨だと解されている。ただ、バルブの閉め忘れによる大量の水流出は、「重大な過失」として扱われうるようだ。

「今回の県庁のケースは、公権力の行使に当る公務員が自治体以外の他人に損害を加えた場合(国家賠償法1条1項)ではなく、同条2項が適用されるわけではありません。

とはいえ、公務員に賠償責任を負わせると酷であり公務執行の円滑を損なうおそれがあるため、今回のような場合にも同項の趣旨は妥当しうると考えられます

また、茨石事件判決は被用者の行為により使用者が直接損害を被った場合の損害賠償についても求償の場合と同様の基準で判断すべきとしています。

ですから、今回のケースにおいても同項の趣旨を全く考慮しないというのは妥当ではなく、公務員の賠償責任の範囲については慎重な検討がなされるべきでしょう」(平弁護士)

●行政側の体制の不備も考慮される

さて、今回のケースについては、職員に請求するのは酷だという声もあがっている。

「裁判にまでなるケースがほとんどないため、必ずしも実態は分かりませんが、裁判例の中には、重過失のあった公務員への8割の求償を認めたものもあります(浦和地方裁判所平成8年6月24日判決)。

ただし、事実関係(特に賠償額)によっては公務員に酷だろうと思います。今回のケースも、公務員が求償される場合と概ね同様に、自治体は、損害の公平の分担という見地から信義則上相当と認められる限度で公務員に賠償請求をすることができると考えられます。

今回の5割も、自治体側の確認体制がある程度整っていたといえる場合には適法に請求できるものだとされる可能性がありますが、今後同種の事故が起こってしまった場合、公務員の賠償責任の範囲について慎重な検討が必要です」(平弁護士)

求償の割合については、行政側の確認体制(本件では例えばダブルチェックの体制)の不備なども考慮される。たとえば、ミスを予防する仕組みがないなども含まれる場合があるという。

なお、求償されたり、裁判を起こされたりした場合などに備えて、共済組合や民間が提供する「公務員賠償責任保険」というものもある。

【2月16日23時10分:国家賠償法にかかわる記述を一部修正しました】

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