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ツイッターで歌詞をつぶやいたら、著作権法に触れる?
2013年03月19日 20時54分

「『ツイッターで歌詞つぶやくと利用料』 JASRACの説明にネットが騒然」。このような見出しの記事が今年のひな祭りの日、3月3日にネット上で話題になった。記事はネットメディア「J-CASTニュース」のもの。だが、日付をよく見ると、2010年3月2日と書かれており、3年前のものだとわかる。それが、なぜか今頃になってネット上で拡散されたようだ。

この記事によると、JASRAC(日本音楽著作権協会)の菅原瑞夫常務理事(現理事長)が2010年2月28日のニコニコ生放送の番組内で「ツイッターで歌詞をつぶやいたら、JASRACの利用料が発生する」と発言したという。また、当時のJASRACの見解として、「ツイッターで歌詞を書いた場合は著作権法に抵触する」「使用料については現在検討している」ということも記事に書かれている。

JASRACは音楽の著作権を管理する団体で、著作者に代わって利用料を徴収する業務を行なっている。今回の騒ぎを受けて、JASRAC広報に問い合わせてみたところ、ツイッターで歌詞をつぶやいた場合の利用料について「現在も検討中だ」と答えた。

では、そもそもツイッターで歌詞をつぶやいたら、著作権を侵害していることになるのだろうか。また、どういった場合に侵害にあたるのだろうか。著作権法に詳しい福井健策弁護士に聞いた。

●「無断で長めの歌詞などをつぶやくと侵害にあたる可能性がある」

福井弁護士によると、ツイッターで歌詞をつぶやいた場合、著作権に触れることになるかどうかは「場合による」。

「歌詞全体は基本的に著作物ですから、著作権が働きます。そして、ツイッターでつぶやく行為は複製権(著作権法21条)や公衆送信権(同法23条)にかかわりますから、無断で長めの歌詞などをつぶやくと侵害にあたる可能性がある、というわけです」

ということは、つぶやいた歌詞の長さによって、侵害にあたるかどうかが変わるということだろうか。

「まず、著作権が働くのは『創作的な表現』であって、ごく短いフレーズはなかなかあたりません。ですから、既存の曲から、歌詞のごく短い一部だけを借りてくる場合には、ひとの著作物の利用にはならず、問題はありません。

どの程度の短さなら良いかと簡単には言えませんが、私はかつてコラムの中で『♪にくいよ!この、ど根性ガエル』(『ど根性ガエル』主題歌のフレーズ)程度はいいのでは、と書いたことがあります。

他方、歌詞ではありませんが、短いフレーズという点では、かつて裁判で『ボク安心 ママの膝よりチャイルドシート』という交通標語が、いわばギリギリで著作物だと認められたことがあります。このあたりがひとつのヒントになるかもしれませんね」

さらに、福井弁護士は「著作権法では『引用』は認められています」と付け加える。著作権法32条を見てみると、「公表された著作物は、引用して利用することができる」とあり、また「その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない」とある。

「ですから、既存の歌詞についてコメント・批評などするために借りる場合には、一定の条件でもう少し長めのフレーズでも使えるケースはあるでしょう 」

●JASRACと事業者との間で取り交わされる「包括契約」とは?

今回、JASRACに問い合わせたところ、「個別に利用料を請求することは現実的な対応ではない」とした上で、「建設的なライセンスを結べるようにツイッター社と交渉していかなければと考えているが、合意に至っているわけではない」という返答があった。これはどういうことを意味するのだろうか。福井弁護士は次のように解説する。

「日本では、ほとんどのプロの作詞家・作曲家は、JASRACなどに歌詞・楽曲の著作権の管理を委ねていますから、申請して利用許可をもらえば使えます。ただ、つぶやくたびにJASRACに申請するのは、到底現実的ではないですよね。

そこで、『包括契約』という考え方が出てきます。これはツイッター社などの事業者がJASRACなどと年間の契約を結んでしまって、ユーザーがJASRACの管理曲をつぶやく行為について一括して許可を受ける。そして、曲の個別申告などは不要にして、たとえばツイッター社の年間収入から一定割合の使用料を納める方法です」

福井弁護士によると、「テレビなどの放送局がアーティストの楽曲を流せたり、ネット動画サイトのニコニコ動画やYouTubeで、『歌ってみた』『踊ってみた』などをユーザーがアップできるのも、事業者がJASRACなどと包括契約を結んでいるから」なのだという。このように実情を説明した上で、福井弁護士は「そうした契約を早く交わすことが、ひとつの現実的な解決でしょうね」とまとめた。

今のところ、ツイッターで歌詞をつぶやいて、JASRACから利用料を請求されたという話は聞かないが、安易な気持ちで歌詞をツイッターでつぶやくと、著作権を侵害する場合があるということは意識したほうが良いだろう。

(弁護士ドットコムニュース)

「『ツイッターで歌詞つぶやくと利用料』 JASRACの説明にネットが騒然」。このような見出しの記事が今年のひな祭りの日、3月3日にネット上で話題になった。記事はネットメディア「J-CASTニュース」のもの。だが、日付をよく見ると、2010年3月2日と書かれており、3年前のものだとわかる。それが、なぜか今頃になってネット上で拡散されたようだ。

この記事によると、JASRAC(日本音楽著作権協会)の菅原瑞夫常務理事(現理事長)が2010年2月28日のニコニコ生放送の番組内で「ツイッターで歌詞をつぶやいたら、JASRACの利用料が発生する」と発言したという。また、当時のJASRACの見解として、「ツイッターで歌詞を書いた場合は著作権法に抵触する」「使用料については現在検討している」ということも記事に書かれている。

JASRACは音楽の著作権を管理する団体で、著作者に代わって利用料を徴収する業務を行なっている。今回の騒ぎを受けて、JASRAC広報に問い合わせてみたところ、ツイッターで歌詞をつぶやいた場合の利用料について「現在も検討中だ」と答えた。

では、そもそもツイッターで歌詞をつぶやいたら、著作権を侵害していることになるのだろうか。また、どういった場合に侵害にあたるのだろうか。著作権法に詳しい福井健策弁護士に聞いた。

●「無断で長めの歌詞などをつぶやくと侵害にあたる可能性がある」

福井弁護士によると、ツイッターで歌詞をつぶやいた場合、著作権に触れることになるかどうかは「場合による」。

「歌詞全体は基本的に著作物ですから、著作権が働きます。そして、ツイッターでつぶやく行為は複製権(著作権法21条)や公衆送信権(同法23条)にかかわりますから、無断で長めの歌詞などをつぶやくと侵害にあたる可能性がある、というわけです」

ということは、つぶやいた歌詞の長さによって、侵害にあたるかどうかが変わるということだろうか。

「まず、著作権が働くのは『創作的な表現』であって、ごく短いフレーズはなかなかあたりません。ですから、既存の曲から、歌詞のごく短い一部だけを借りてくる場合には、ひとの著作物の利用にはならず、問題はありません。

どの程度の短さなら良いかと簡単には言えませんが、私はかつてコラムの中で『♪にくいよ!この、ど根性ガエル』(『ど根性ガエル』主題歌のフレーズ)程度はいいのでは、と書いたことがあります。

他方、歌詞ではありませんが、短いフレーズという点では、かつて裁判で『ボク安心 ママの膝よりチャイルドシート』という交通標語が、いわばギリギリで著作物だと認められたことがあります。このあたりがひとつのヒントになるかもしれませんね」

さらに、福井弁護士は「著作権法では『引用』は認められています」と付け加える。著作権法32条を見てみると、「公表された著作物は、引用して利用することができる」とあり、また「その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない」とある。

「ですから、既存の歌詞についてコメント・批評などするために借りる場合には、一定の条件でもう少し長めのフレーズでも使えるケースはあるでしょう 」

●JASRACと事業者との間で取り交わされる「包括契約」とは?

今回、JASRACに問い合わせたところ、「個別に利用料を請求することは現実的な対応ではない」とした上で、「建設的なライセンスを結べるようにツイッター社と交渉していかなければと考えているが、合意に至っているわけではない」という返答があった。これはどういうことを意味するのだろうか。福井弁護士は次のように解説する。

「日本では、ほとんどのプロの作詞家・作曲家は、JASRACなどに歌詞・楽曲の著作権の管理を委ねていますから、申請して利用許可をもらえば使えます。ただ、つぶやくたびにJASRACに申請するのは、到底現実的ではないですよね。

そこで、『包括契約』という考え方が出てきます。これはツイッター社などの事業者がJASRACなどと年間の契約を結んでしまって、ユーザーがJASRACの管理曲をつぶやく行為について一括して許可を受ける。そして、曲の個別申告などは不要にして、たとえばツイッター社の年間収入から一定割合の使用料を納める方法です」

福井弁護士によると、「テレビなどの放送局がアーティストの楽曲を流せたり、ネット動画サイトのニコニコ動画やYouTubeで、『歌ってみた』『踊ってみた』などをユーザーがアップできるのも、事業者がJASRACなどと包括契約を結んでいるから」なのだという。このように実情を説明した上で、福井弁護士は「そうした契約を早く交わすことが、ひとつの現実的な解決でしょうね」とまとめた。

今のところ、ツイッターで歌詞をつぶやいて、JASRACから利用料を請求されたという話は聞かないが、安易な気持ちで歌詞をツイッターでつぶやくと、著作権を侵害する場合があるということは意識したほうが良いだろう。

(弁護士ドットコムニュース)

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