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硬貨を投げる「あごマスク客」に店員が「私、奴隷じゃない」 弁当屋「カスハラ」騒動の意味
2021年06月05日 10時04分
#カスタマーハラスメント

200円弁当など、安さと量に定評のある24時間営業の弁当屋「キッチンDIVE」(東京・亀戸)で、来店した男性2人組が店員を怒鳴ったり、硬貨を投げつけたりする動画が話題だ。店側は警察に被害届を提出。示談にも応じないと公言している。

昨今は客からの暴言や暴行など、カスタマーハラスメント(カスハラ)にも注目が集まっている。

店主の伊藤慶さんは、「クレーマーや面倒くさい人は客じゃない。放っておいたら優良顧客が逃げてしまう」と語り、断固たる態度をとるべきと話す。迷惑客への対応を聞いた。(編集部・園田昌也)

200円弁当など、安さと量に定評のある24時間営業の弁当屋「キッチンDIVE」(東京・亀戸)で、来店した男性2人組が店員を怒鳴ったり、硬貨を投げつけたりする動画が話題だ。店側は警察に被害届を提出。示談にも応じないと公言している。

昨今は客からの暴言や暴行など、カスタマーハラスメント(カスハラ)にも注目が集まっている。

店主の伊藤慶さんは、「クレーマーや面倒くさい人は客じゃない。放っておいたら優良顧客が逃げてしまう」と語り、断固たる態度をとるべきと話す。迷惑客への対応を聞いた。(編集部・園田昌也)

●「密回避」で電子レンジ撤去が発端に

事件が起きたのは、5月25日の午前3時台。流れは次のようなものだ。

酔った男性2人組が来店し、弁当や惣菜パックの山を前に“あごマスク”状態で談笑しながら商品を物色。会計時に商品を温めるよう求めた。

この時間帯、勤務していた店員は男女1名ずつ。キッチンDIVEでは、コロナ以前はセルフの電子レンジを置いていたが、時間帯によっては客の列ができていたため、密集を避けるために撤去していた。客の求めに対し、男性店員はレンジは置いていないと答えた。

その後、商品のキャンセルなどをめぐり、2人組が「お前、態度悪すぎるぞ」などと語気を強めはじめ、「だからそんな(弁当屋の)仕事してんねん、アホ」「俺、お前の年収、一カ月で儲けてるから、クズ」などと罵倒。店員側も反論したことで、2人組がヒートアップし、大声で怒鳴ったり、お金を投げつけたりする行為に及んだ。

キッチンDIVEでは、店内の様子をYouTubeでライブ配信しており、映像はテレビ局のニュースで放送されるなど、話題になっている。

●「うちは映像があったから良かったけど…」

「弁当の在庫が分かるようにとやっています。年に1~2回暴言を吐かれることもあるけれど、このコロナ禍の深夜にこんなことが起きるとは思わなかった。

うちは映像があったから対応できたけど、居酒屋などでは、表に出て来ないだけで同じようなケースはたくさんあるんだろうなと思いました」(伊藤さん)

24時間営業なので、警備会社とも契約しているものの、客の滞在時間が短く、店員と話す機会も滅多にない弁当屋で、警察沙汰になるようなことは想定していなかったという。

●怒鳴る客、ひるまぬ店員「お客さんじゃないです」

映像によると、2人組のうちひとりは接客業を自称し、「こんな口のききかたするか、客に向かって。客じゃないってこと? するんかって、お前」などと怒鳴りつけている。

これに対し、女性店員が「お客さんじゃないんで、出て行ってもらえますか」と応じたところ、男性は返品時に受け取った硬貨を投げつけ、「金払ったら客だろうが、コラ、オイ」などと声を荒げている。

女性店員はひるむことなく、「お客さんじゃないです」「(お金)払ってもらってないです。投げただけです」と返している。

伊藤さんは、「店員には、場合によっては客を出禁にして良いと伝えてある。お客さんの代わりはいるけど、スタッフの代わりはいない。スタッフを採用するほうが難しいし、コストがかかる」と強調する。

●店員に対する優越感「本当に日本人?」

絡んできたときに、ひたすら頭を下げていれば、“あごマスク男”たちもここまで激昂しなかったかもしれない。

実際、接客業だという“あごマスク男”のひとりは、店員に対して「ないんでしょ、お客さんに対してありがとうって」「本当に日本人?」などと述べている。“格下であるべき”店員が頭を下げず、“口答え”したことで、ヒートアップしてしまったのだろう。

中には店員の対応に疑問を持つ人もいるだろう。しかし、店員なら侮辱に耐えなくてはならないのだろうか。「お前の給料はここで買ったお金で払われてんだろ」となじられた女性店員は「私、奴隷じゃないです」と反論している。怒鳴り、侮辱し、物を投げつけたほうに非があるのは明らかだ。

ただし、場合によっては殴られるなどの危険もある。伊藤さんが謝罪は受け入れないとアピールしているのは、迷惑客を遠ざけ、店員を守るという狙いもあるのだろう。

選択権があるのは、客のほうばかりではない。「店に不満があるなら来なくていい」と伊藤さんは言い切る。

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