575.jpg
「妹は稼ぎの道具だったのか」16歳で自殺した農業アイドル、遺族が提訴前に会見
2018年10月11日 18時37分

愛媛県松山市を中心に活動する農業アイドル「愛の葉Girls(えのはがーるず)」のメンバーだった大本萌景(ほのか)さん(当時16)が自殺したのは、パワハラや過重労働が原因だとして、遺族が当時の所属事務所などを相手どり、約9268万円の損害賠償を求めて松山地裁に提訴する。

東京都内で開いた記者会見に参加した母幸栄さんと姉可穂さんは「ただただ真実を知りたい」「妹は稼ぎの道具だったのか」と訴えた。

愛媛県松山市を中心に活動する農業アイドル「愛の葉Girls(えのはがーるず)」のメンバーだった大本萌景(ほのか)さん(当時16)が自殺したのは、パワハラや過重労働が原因だとして、遺族が当時の所属事務所などを相手どり、約9268万円の損害賠償を求めて松山地裁に提訴する。

東京都内で開いた記者会見に参加した母幸栄さんと姉可穂さんは「ただただ真実を知りたい」「妹は稼ぎの道具だったのか」と訴えた。

●休日を希望すると「お前の感想はいらん」

訴状などによると、萌景さんは中学2年の時に「自分をいじめている友達を見返したい」とオーディションを受け、2015年7月に農業生産法人「hプロジェクト」と専属マネジメント契約を締結。同社所属の「愛の葉Girls」のメンバーとして活動を始めた。

萌景さん

1年間無給で研修生として活動したあと、2016年8月からはレギュラーメンバーに昇格。土日を中心にライブイベントを行なっていたが、早い時には午前4時半に集合し、解散は翌日の午前2時ごろになるなど長時間拘束されることも多くあったという。

2017年4月からは通信制の県立高校に通ったが、平日もイベントに駆り出され、休みの日がほとんどなかった。そんな中、スタッフに脱退したい旨を伝えると、LINEで「次また寝ぼけた事言いだしたらマジでブン殴る」と返され、休日を希望すると「お前の感想はいらん」「その理由によって、今後事務所はお前の出演計画を考えにゃならん。そこまで考えて物を言え」などと返信されるなど、スタッフによるパワハラもあったと主張している。

LINEの履歴

17年6月ごろには「日曜のイベントに出られる」という理由から、社長から全日制の高校進学を勧められた。その際、進学費用は会社側が工面すると聞かされ、萌景さんもそのつもりで進学を期待していたが、高校に納付する前日になって貸付を拒否されたという。

萌景さんは貸付を拒否された翌日の3月21日に自ら命を絶った。友人には「グループを辞めるのであれば1億円支払えと言われた」と打ち明けており、遺族側は「貸付の拒否は、8月ごろから脱退したい旨を伝えていた意趣返しだ」と主張している。

●メンバーは家族への相談禁止

「愛の葉Girls」ではメンバーが家族に相談したりメンバーの保護者同士が相談したりすることは禁止されていた。萌景さんは2018年1月にリーダーに就任してから、母の幸栄さんに対して度々「もう辛い」「やめたい」とLINEしていたが、何があったか尋ねても具体的には教えてくれなかったという。

遺影を持つ母の幸栄さん

萌景さんの死後、幸栄さんが社長に責任を感じるか尋ねたところ「責任考えたことないですね」と言われたという。幸栄さんは「娘がなぜ社長をあそこまで信頼していたのかがわからなくなりました」と涙した。

●地下アイドル、相談相次ぐ

アイドルの労働問題に取り組む安井飛鳥弁護士によると、最近はテレビなどのメディアに出演せず、ライブハウスや地方での活動を中心とする「地下アイドル」が増えているが、その契約の特殊性から相談も相次いでいるという。

多くの場合、アイドルなど芸能人は芸能事務所との間で「専属マネジメント契約」を締結する。しかし、一般的に事業主間の契約であるため、一般企業で労使関係を結ぶ労働関係とは異なり、原則として労基法や労働法令が適用外だ。

安井弁護士はこうした事情から「アイドルの場合は事後的な救済が主で、労働者への安全配慮が働きにくい」と指摘。「契約実態に照らして法令の適用判断がなされるため、専属マネジメント契約でも労働者性が認められる事例は多くある。今回の事例もそうだと考えている」と話した。

「愛の葉Girls」は2012年3月、タレント育成などを行う「hプロジェクト株式会社」から日本の農業の魅力を伝える「農業発信ガールズユニット」としてデビュー。18年3月に活動を自粛すると発表した。18年6月1日からイベント会社「株式会社フィールド愛の和」に事業譲渡され、活動を再開している。

(弁護士ドットコムニュース)

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る