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ニルヴァーナのジャケ写「全裸赤ちゃん」提訴が話題、日本の法律で「児童ポルノ」にあたる?
2021年08月30日 10時12分

30年前、米ロックバンド、ニルヴァーナのアルバムジャケットに使用された赤ちゃんの裸の写真をめぐり、被写体となった米国人男性が、性的搾取だとして、バンド関係者を提訴した。海外メディアが報じている。

報道によると、男性は生後4カ月だった1991年、プールの中で全裸になって、釣り糸でぶら下げられた1ドル札に手を伸ばしている姿を撮影された。

この写真は、ニルヴァーナのセカンドアルバム「Nevermind」(ネヴァーマインド)のアルバムジャケットとして使用された。アルバムは3000万枚の売り上げを記録した。

現在30歳の男性は、彼とその両親が、写真の使用を許可する文書に署名したことはなく、全裸画像が「児童ポルノ」であると主張。

元メンバーなど15人を相手取り、それぞれ15万ドル(約1650万円)の支払いを求めて、米カリフォルニア州の裁判所に提訴しているという。

世界的に有名なアルバムジャケットだが、日本の法律に照らすと、児童ポルノにあたるのだろうか。奥村徹弁護士に聞いた。

30年前、米ロックバンド、ニルヴァーナのアルバムジャケットに使用された赤ちゃんの裸の写真をめぐり、被写体となった米国人男性が、性的搾取だとして、バンド関係者を提訴した。海外メディアが報じている。

報道によると、男性は生後4カ月だった1991年、プールの中で全裸になって、釣り糸でぶら下げられた1ドル札に手を伸ばしている姿を撮影された。

この写真は、ニルヴァーナのセカンドアルバム「Nevermind」(ネヴァーマインド)のアルバムジャケットとして使用された。アルバムは3000万枚の売り上げを記録した。

現在30歳の男性は、彼とその両親が、写真の使用を許可する文書に署名したことはなく、全裸画像が「児童ポルノ」であると主張。

元メンバーなど15人を相手取り、それぞれ15万ドル(約1650万円)の支払いを求めて、米カリフォルニア州の裁判所に提訴しているという。

世界的に有名なアルバムジャケットだが、日本の法律に照らすと、児童ポルノにあたるのだろうか。奥村徹弁護士に聞いた。

●「児童ポルノとされる恐れがある」

――赤ちゃんの裸体は、日本の法律に照らして、児童ポルノにあたるのか?

「微笑ましい」「あどけない」といって許容されると言いたいところですが、児童ポルノ法には、そのような除外事由はなく、「性欲を興奮させ又は刺激するもの」(児童ポルノ法2条3項3号)にあたるかどうかで判断されます。

立法関係者の解説書によれば、「性欲を興奮させ又は刺激する」とは、一般人の性欲を興奮させ又は刺激することをいうものと解しています」「一部の少数者の性欲を興奮させ又は刺激するものは、一般人の性欲を興奮させ又は刺激するものでない限り、児童ポルノには当たりません」(『よくわかる改正児童買春・児童ポルノ禁止法』)とされています。

乳幼児のあどけない裸体画像は、除外されるかのように説明がされていて、裁判例では「沐浴している場面」は、児童ポルノに該当しないとするものもあります(横浜地裁平成28年7月20日)

ただし、高裁判例レベルでは、「トイレに座る画像、一部着衣してあどけなく座る画像、児童が突っ立っている画像」や「男湯脱衣場にいる女児画像」について、児童ポルノに該当するとされていて、厳しい態度をとっています(東京高裁平成30年1月30日/大阪高裁平成24年7月12日)。

これらによれば、問題のジャケット画像の乳児の画像も、性器が写っているので、「児童ポルノ」とされるおそれがあります。

●芸術性を備えれば、児童ポルノ性が否定される余地あり

――過去に撮影されたものでも「児童ポルノ」にあたる?

法律上、児童の定義は、実在する18歳未満の者ですが(児童ポルノ法2条1項)、年齢要件は、撮影された時点で判断されます。児童を撮影した場合は、撮影後、何年経っても、児童ポルノ性は失われません。

――芸術性があってもダメなのか?

芸術性については、いわゆる「CG児童ポルノ事件」の東京高裁判決(平成29年1月24日)が「学術研究、文化芸術活動、報道等」への配慮条項(児童ポルノ法3条)を受けて、当該画像等の具体的な内容に加え、それが作成された経緯や作成の意図等のほか、その画像等の学術性、芸術性、思想性等も総合して検討し、性的刺激等の要素が相当程度緩和されていると認められる場合には、性欲を興奮させ又は刺激するものに当たらず、児童ポルノには該当しないと解すべきである」と判示していて、一定の理解を示しています。

この判決によれば、アルバムジャケットなどの画像も、こういう芸術性を備えれば、児童ポルノ性が否定される余地はありそうです。

――今回の米国の裁判をどう見ますか?

児童ポルノの被害というのは、「性的虐待」であって、児童の健全な育成を阻害しつづけるという継続的な害悪ですが、日本の刑事損害賠償命令(犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律23条)では、金銭賠償になじまないとして、児童ポルノ罪は対象外となっており、民事訴訟になることは稀です。

対照的に、アメリカの連邦法(18 USC §2259)では、児童ポルノ関連犯罪では、必要的被害弁償が命じられることになっていて、賠償の範囲の規定もされていることから、金銭賠償が一般的なようです。

最近の論稿(隅田陽介「インターネット時代における児童ポルノの所持と被害弁償(2・完)」)などによれば、単純所持者に対する損害賠償請求が認められる場合があると報告されています。

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