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「身内の会計を半額に」1年以上続けたレジ打ちバイト、ついに不正行為が発覚 どんな罪になるのか
2025年05月28日 10時05分

小売店のレジ打ちのアルバイトとして働く人から弁護士ドットコムに相談が届いた。

身内が客として来店した際に、会計で不正行為をはたらいていたという。

商品をレジで通さなかったり、「半額シール」の貼られていない商品を半額にしたりする行為を1年以上続け、浮かせた会計は200万円にもなる可能性があるそうだ。

ついに店にバレたことで、相談者も身内も反省しているというが、この不正はどんな罪に問われうるだろうか。青栁剛史弁護士に聞いた。

小売店のレジ打ちのアルバイトとして働く人から弁護士ドットコムに相談が届いた。

身内が客として来店した際に、会計で不正行為をはたらいていたという。

商品をレジで通さなかったり、「半額シール」の貼られていない商品を半額にしたりする行為を1年以上続け、浮かせた会計は200万円にもなる可能性があるそうだ。

ついに店にバレたことで、相談者も身内も反省しているというが、この不正はどんな罪に問われうるだろうか。青栁剛史弁護士に聞いた。

●「背任罪」が成立しうる

——店のレジ打ちのバイトが、客の商品を勝手に半額にしたり、商品を通さずに会計したりする行為は、どんな罪に問われる可能性があるでしょうか。なお、バイト(相談者)だけでなく、身内も買い物の際の不正を認識しています。

店員の側から検討すると、もっともわかりやすく該当するのは背任罪でしょう。

店員の仕事は、お店(他人)のために、商品の対価を適正に収受する事務を処理することです。その事務処理の任務に背いて、実際に無料や根拠のない割引を受けた身内の利益を図り、お店に損害を与えていますから、背任罪の構成要件を満たします。

法定刑は5年以下の懲役または50万円以下の罰金です。

利益を受けた身内が、この不正を知っていれば、当然に共同正犯として、同じ重さで処罰されることになります。

●業務上横領罪、あるいは窃盗罪の成立の可能性

背任罪より重い横領罪(この場合は業務上横領罪=法定刑は10年以下の懲役)が成立するかは、店員が店でどの程度の立場にいるかどうかで左右されます。

具体的には、店長や、時間帯責任者として、商品に対する占有を有しているかどうか、ということに左右されます。

商品に対する占有がない場合には、対象商品は「自己の占有する他人の物」(刑法253条)とはいえませんので、横領は成立しづらいといえるでしょう。

この場合には、店が占有する「他人の財物」である商品を奪うという形になりますから、窃盗罪(刑法235条)が成立する可能性があります。

●便宜をはかってもらった「身内」の責任は? 

不正会計でレジを客として通してもらった身内の側から検討すると、そのような店員と、業務上横領罪、もしくは窃盗罪の共同正犯となる可能性があります。

ただし、その商品をあえてレジに通さない場合には罪が成立することはわかりやすいのですが、勝手に半額にした場合には、これらの犯罪が成立するかは微妙なところです。

ほかには、店舗自体を欺いたという詐欺に該当するかという点も考えられなくはないですが、その店員でなくお店自体が「無料や割引で良いよ」という意思は持っていないわけですから、詐欺の成立に必要な処分行為がなく、詐欺罪の成立は厳しいでしょう。

背任罪と、業務上横領罪・窃盗罪では、業務上横領罪や窃盗罪の方がやや重い刑罰になっていますが、実際に考える際には、割引行為などが含まれるのであれば、構成としてわかりやすい背任罪として処断される可能性が高いのではないかと思います。

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