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マンション屋上から飛び降り自殺――不動産業者に「事故物件」の告知義務はあるか?
2016年01月10日 10時41分

「不動産屋ですすめられた物件が、いわゆる事故物件だったんです」。こう語るのは、東京都内のIT企業に勤めるミノリさん(27)だ。

一人暮らしの部屋を探すために訪れた不動産屋で紹介されたのは、都心の人気エリアに建つマンション。ところがこの賃貸物件、実は、約10年前に屋上から飛び降り自殺があった「事故物件」だというのだ。

ミノリさんにこの物件を紹介した不動産屋のスタッフは、こう語ったという。「以前、この物件を気に入ってくださったお客様がいたんですが、契約日の直前に、マンションの管理会社から事故物件だと知らされて、キャンセルになったんですよ。事故物件だと知っていたのは管理会社だけで、私たちも把握していませんでした」

ミノリさんは不動産屋の話を聞き、今後の物件探しに不安を覚えたという。「もし管理会社から知らされなければ、そのお客さんは事故物件に入居していたかもしれないですよね。私も、何も知らされないまま事故物件に入居させられたらどうしよう・・・と不安になってしまいました」

「事故物件」の告知義務について、法律ではどのように定められているのか。鈴木軌士弁護士に聞いた。

「不動産屋ですすめられた物件が、いわゆる事故物件だったんです」。こう語るのは、東京都内のIT企業に勤めるミノリさん(27)だ。

一人暮らしの部屋を探すために訪れた不動産屋で紹介されたのは、都心の人気エリアに建つマンション。ところがこの賃貸物件、実は、約10年前に屋上から飛び降り自殺があった「事故物件」だというのだ。

ミノリさんにこの物件を紹介した不動産屋のスタッフは、こう語ったという。「以前、この物件を気に入ってくださったお客様がいたんですが、契約日の直前に、マンションの管理会社から事故物件だと知らされて、キャンセルになったんですよ。事故物件だと知っていたのは管理会社だけで、私たちも把握していませんでした」

ミノリさんは不動産屋の話を聞き、今後の物件探しに不安を覚えたという。「もし管理会社から知らされなければ、そのお客さんは事故物件に入居していたかもしれないですよね。私も、何も知らされないまま事故物件に入居させられたらどうしよう・・・と不安になってしまいました」

「事故物件」の告知義務について、法律ではどのように定められているのか。鈴木軌士弁護士に聞いた。

●建物の「心理的欠陥」が問題になる場合もある

「不動産仲介業者の告知義務については、宅地建物取引業法47条1号により、建物の取引条件であって、借りる人の判断に重要な影響を及ぼす事柄をわざと告知しないことは、禁止されています」

鈴木弁護士はこのように切り出した。

「賃貸目的の建物内で自殺・他殺の事実があったことは、目的物にまつわる『嫌悪すべき歴史的背景』に起因する心理的欠陥(=目的物を使用するにあたって、心理的に十全な使用が妨げられる事情)として、貸主は『瑕疵担保責任』を負う場合があります。

これは、さきほど述べた『建物の取引条件であって、借りる人の判断に重要な影響を及ぼす事柄』にあたります」

そのような事柄を、不動産会社や管理会社が、わざと知らせないことには問題があるのか。

「不動産会社などの仲介業者は、知っている事実をわざと告げなかったり、または、知った上でウソの内容を告げることを禁止されています。ただし、知らない事実については、告知義務はありません。

いっぽう、建物の貸主である大家などは、仮に自殺や他殺の事実を知らなかった場合でも、心理的欠陥に基づく『瑕疵担保責任』を追及される可能性があります」

管理会社には告知義務があるのか。

「管理会社の告知義務は、管理義務上は、マンションの区分所有者や、この者から仲介以来を受けた仲介業者、もしくは既に建物を借りている賃借人に対して負うものです。これから借りようとする新規の賃借人(候補者)に対しては、直接告知義務を負うものではないと思われます」

●「10年前の飛び降り自殺」が瑕疵にあたるか?

「ちなみに、自殺・他殺が瑕疵となるのかどうかは、法令による明確なルールはありません。個別のケースごとに、自殺・他殺(殺人)の場所・事情、土地建物の状況、賃貸までの経過期間、利用目的、地域性などを考慮して判断されます。判断のよりどころは、判例などの先例です」

今回のケースの場合は「瑕疵」になるのだろうか。

「本件は、『約10年前に』かつ『マンションの屋上から』飛び降りたということです。時間的に直近でもなく、場所的にも賃借対象の部屋自体でもないことからすれば、瑕疵にあたるか否かは非常に微妙だと考えられます。

参考になる判決例を紹介しましょう(東京地判平成21年6月16日)。平成17年(2005年)12月2日に、ある人が投資目的で代金2億2000万円でビル1棟を購入しました。ところが購入後、そのビルの7、8階に住んでいた元所有者の娘が、平成16年(2004年)1月ごろ自殺を図り、居室で睡眠薬を多量に飲んで病院に搬送され、約2~3週間後に病院で死亡していたことが判明したのです。

この事案について東京地裁は、自殺については『隠れた瑕疵』(目に見えない欠陥や不具合)であると肯定したものの、『瑕疵としては<極めて軽微なもの>になっていた』と判断しています。

本件とこの裁判の事案を一概に比較はできないものの、やはり事件発生から『約10年』と結構な期間が経過していること、場所も『対象居室』自体ではなく屋上ということは、瑕疵にあたるかどうかという判断において、相当の障害になるでしょう」

では、「入居予定のまさにその部屋で半年前に殺人事件があった」などのケースは、どうだろう。

「そのようなケースでは、期間も半年とそれほど経過しておらず、対象の居室自体の中ですし、何よりも、殺人は自殺に比べて、事件としても死亡原因の異常さが認められます。そのようなことを考慮すると、『瑕疵』にあたる可能性は格段に高くなるものと思われます」

(弁護士ドットコムニュース)

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