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アイドル「推し活」、SNSでの「布教画像」に法律の落とし穴
2022年02月12日 08時45分

アイドル、YouTuber、アニメのキャラクター...。自分の大好きな「推し」を応援する「推し活」において、SNSは情報収集やファンの拡大のために大変重要です。そんな「推し」の良さや好きなところを広め、認知度を上げてファンを増やそうと画策することは「布教」と呼ばれています。

しかし、SNSで「布教」をするうえで悩ましいのは、推しの画像「布教画像」の使い方です。その法律的な問題について、河西邦剛弁護士、松下真由美弁護士の新著「清く楽しく美しい推し活 推しから愛される術」(東京法令出版)より一部抜粋して紹介します(小見出しなど編集部が一部修正)。

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アイドル、YouTuber、アニメのキャラクター...。自分の大好きな「推し」を応援する「推し活」において、SNSは情報収集やファンの拡大のために大変重要です。そんな「推し」の良さや好きなところを広め、認知度を上げてファンを増やそうと画策することは「布教」と呼ばれています。

しかし、SNSで「布教」をするうえで悩ましいのは、推しの画像「布教画像」の使い方です。その法律的な問題について、河西邦剛弁護士、松下真由美弁護士の新著「清く楽しく美しい推し活 推しから愛される術」(東京法令出版)より一部抜粋して紹介します(小見出しなど編集部が一部修正)。

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●布教に貢献したかっただけだけど...

雑誌を購入したら、あまりにかっこいい推しの写真を発見。布教しようと、誌面をきれいにスキャンしてSNSに投稿したところ、完売で買えない人もいるらしく、瞬く間に拡散された。いいことをしたぞ!と思っていたのに、翌日、コメント欄には「著作権法違反だ!」「損害賠償だ!」と批判が殺到していて...。

この事例のように、「これを見ればファンが増えるはず。なんて推しの布教に貢献的なわたし!」などと思って、雑誌に掲載された推しのベストショットをSNSで拡散する行為。実はこの行為、意図せずとも著作権法に違反している可能性があります。

●そもそも著作権法とは?

著作権法について覚えておきたいポイントは、 (1)著作権は基本的に著作物(雑誌、写真、DVD、CD等)について生じる (2)人間そのものは著作物にならないが、パブリシティ権(肖像権)が生じる場合がある(3)著作物を許可なくネットにアップする行為は著作権法違反になる の3つです。

「著作物」=「物(もの)」なので、例えば写真集や雑誌、DVDやCDは著作物になります。近年はダウンロードやストリーミング等で映像や音楽を楽しむ方も多いと思いますが、CDのようにパッケージ化されていない映像や音楽も著作物に当たります。

もし勝手にこの著作物をSNSに投稿するなど著作権法違反の行為をした場合、10年以下の懲役もしくは1千万円以下の罰金(両方という場合もあります)と、かなり重い罪になります。

お金を出して雑誌を買っていても、雑誌に掲載されたものをネットにアップすると、著作権法違反になります。ポイントは、「所有権」と「著作権」という2つの異なる権利を意識することです。つまり、購入したのはその雑誌の所有権だけであり、雑誌の著作権は出版社に残ったままなのです。

したがって、所有権をもつ雑誌の購入者が、その雑誌を誰かにあげたり、捨てたり、売ったりすることは、法律的には全く問題ありません。しかし、雑誌の著作権は出版社にありますので、購入者が雑誌を複製して転売したりネットにアップしたりすることは、著作権を侵害する行為になってしまいます。

●著作物の一部分をSNSに投稿した場合は?

雑誌の表紙は、レイアウトに創作性がある場合がほとんどのため、著作物といえます。各ページやその一部分についても、創作性があるとして著作物となる可能性もあります。また、もし「推しがめっちゃいいこと言っているから、知ってもらいたい」という思いで雑誌の文章部分のみをSNSに投稿した場合、著作権法に違反してしまうことがあります。文章部分にも創作性が認められ、著作物に当たる可能性が十分にあるからです。

つまり、雑誌の表紙や各ページの一部分だけでも勝手にSNSに投稿したら著作権法違反になってしまうわけです。

映像についても、同じことがいえます。購入した円盤のライブ映像をたとえほんの数秒でも、動画共有サイトやSNSに投稿すると著作権法違反になります。自身のスマホでその映像の一部を撮影してアップした場合も同様です。

●推しの「顔」に「著作権」は発生する?

著作権法で守られる「著作物」は「物(もの)」なので、タレントの顔や身体自体は著作物には当たりません。いろいろな考え方がありますが、顔や身体に対し芸能人と一般人で権利に差をつけることは、法の下の平等に反してしまうのです。

ただ、商品が売れるかどうかを基準にすると、写っている人が芸能人だからこそ「物(もの)」が売れるのも事実です。そこで、このような有名人の「顧客誘引力」を保護しているのが、「パブリシティ権(肖像権)」という権利です。

例えば、コンサート会場付近やネット上で、勝手に撮影したアイドルの写真を販売する業者を目にしたことはありませんか。この業者がアイドルのパブリシティ権を侵害しているのは明らかで、そのアイドルが所属する芸能事務所は、業者に対し損害賠償の請求ができます。

もしも「非公式写真の方が、写りもいいし安いから買いたい」と思っても、購入は控えていただくのがよいと思います。不正転売チケットと同様、本来利益が行きわたるべきところに行かなくなってしまいます。事務所の売上に繋がり経営が安定すれば、タレントに利益を還元している芸能事務所であれば、推しの福利厚生や生活も安定することになります。

このような違法業者が即逮捕されることは難しくても、違法行為を肯定したり放置したりするべきではないのです。

●自分自身の言葉で「布教」しよう

逆に「権利を侵害しない投稿」とはどんな物なのか、気になるかと思います。一例として、雑誌を読んだあなた自身の感想をSNSに投稿することは、基本的に問題ありません。

事例においては、「昨日発売の◯◯(雑誌名)に写っている海辺のショットがすごくかっこいい」「◯月号にあった推しのツアーインタビュー、泣ける。読んでほしい」と、あなたならではの感想を書く分には、違法行為とはならないでしょう。

布教したいと思ったら、無断転載など違法な方法は避けて、自分自身の言葉で雑誌の魅力を伝えるといいかと思います。

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