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取引先が「土下座」強要、上司は「やるしかない」と指示…業務命令でも断れる?
2023年09月03日 09時38分

仕事でミスをした弟が、取引先と上司から「土下座」を求められている。そんな相談が弁護士ドットコムに寄せられた。

相談者によると、弟はミスの発覚後に電話で取引先に謝罪した。しかし、相手の怒りはおさまらず「直接、目の前で土下座しろ」と求められたという。

上司に相談したところ、「先方に行って、やるしかない」と言われてしまったが、はたして、この指示に従うべきなのか。金井英人弁護士に聞いた。

仕事でミスをした弟が、取引先と上司から「土下座」を求められている。そんな相談が弁護士ドットコムに寄せられた。

相談者によると、弟はミスの発覚後に電話で取引先に謝罪した。しかし、相手の怒りはおさまらず「直接、目の前で土下座しろ」と求められたという。

上司に相談したところ、「先方に行って、やるしかない」と言われてしまったが、はたして、この指示に従うべきなのか。金井英人弁護士に聞いた。

●土下座の要求に従う義務はない

ーー相談者の弟は、取引先の要求に応じるべきなのでしょうか。

取引先との関係で発生させてしまった仕事のミスについては、本来は所属している会社と取引先の間の問題として、履行責任や賠償責任など、法律上のあるべき責任の取り方を検討すべきです。

悪意をもって取引先を害する行動に出た場合はともかく、今回のケースのように仕事上のミスで従業員が取引先から個人的に責任を問われるのは、法律上の根拠がないといえます。

また、土下座は感情的に要求されるものでしかなく、法的な責任の取り方としての性質もなければ、それによって会社間の責任が免除されることもありません。法律上、土下座をする義務はないということです。

ーー土下座の要求には、どのような問題があるのでしょうか。

要求された側は、地面に膝と手をついて頭を下げさせられることになるので、一般的には、意に反して屈辱的な感情をともなう行動をすることになります。

そのため、取引先の担当者が土下座を求めること自体が、他人に対して故意に精神的苦痛を与える行為といえます。これは民法上の不法行為にあたるので、実際にさせられた場合は取引先に対して損害賠償を請求できる可能性もあります。

また、土下座を求める際に脅迫的な発言などが伴えば、刑法上の強要罪にあたる可能性も考えられるでしょう。

ーー上司による土下座の指示はいかがでしょうか。

土下座を指示すること自体が不法行為にあたる可能性があります。また、土下座を指示・強要されたことが原因で精神疾患を発病した場合は、労災にあたることもあります。

業務上の指示として土下座を命じたのであれば、雇用主である会社は上司と雇用先の会社は安全配慮義務違反など、雇用契約上の賠償責任を負うことにもなりえます。

●きっぱり断り、会社に相談を 

ーー相談者の弟は今後に悩んでいるようです。どのように回避すればよいでしょうか。

義務はないとして、きっぱり断ることが重要です。ミスをした負い目から難しいと感じるかもしれませんが、会社に対応を相談すべきでしょう。具体的には、会社内のハラスメント対応窓口やほかの上司、可能であれば役員などに相談することが考えられます。

取引先とのトラブルは本来会社が対応すべきことで、上司の指示が不法行為や労災にあたる可能性もあることから、会社はその責任を放棄できません。

土下座の強要は、明らかに義務のない不当な要求です。会社が対応できない、してくれない場合には、早急に弁護士などの専門家に相談してください。

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