14698.jpg
VTuberへの殺害予告は「人間に向けられたもの」 ツイッター社に開示命令…東京地裁
2022年12月14日 17時30分

バーチャルユーチューバー(VTuber)への「殺害予告」は、CGキャラクターを演じている人間に向けたものと言えるのか。この点が争われた訴訟で、裁判所は「実在の個人を対象とするもの」という判断を示した。

バーチャルユーチューバー(VTuber)への「殺害予告」は、CGキャラクターを演じている人間に向けたものと言えるのか。この点が争われた訴訟で、裁判所は「実在の個人を対象とするもの」という判断を示した。

●「お前も✳✳✳✳くうかもしれないからな」伏せ字と包丁の絵文字を使ったツイート

VTuberとは、2D・3DCGキャラクターを演じて、動画投稿や生配信をする配信者のことだ。

そんなVTuberの女性がツイッター上で被害を受けたとして起こした裁判で、東京地裁(黒木宏太裁判官)は12月14日、米Twitter社(イーロン・マスクCEO)に対して、ツイッターにコメントした投稿者の発信者情報開示を命じる判決を言い渡した。

原告の女性は、実名などを明かさず、あるキャラクターの姿でYouTube、ツイッターで活動している。キャラクターのアカウントのチャンネル登録者数、フォロワー数はそれぞれ100万人を超える人気VTuberだ。

2021年11月、このツイッターアカウントのツイートに返信する形で「お前も✳✳✳✳くうかもしれないからな」などと伏せ字を使った投稿がなされた。

問題の投稿には、別の配信者に向けて「1ヶ月中に✳✳✳す」などと書かれたほか、末尾に包丁の絵文字も使われていた。

女性側は、伏せ字には「1ヶ月中にぶっ殺す」「お前も巻き添えくうかもしれない」などのような文言が入ることは容易に想像できるとし、さらに包丁の絵文字が付けられた投稿は、実在の個人である原告を対象とした「生命または身体に対する害悪の告知」であると主張していた。

この投稿によって、女性は外を歩くことが不安になるほどの恐怖を感じ、多大な精神的苦痛を受けたと訴えていた。

●「キャラクターに実在の身体はない」

東京地裁の黒木裁判官は、女性側の主張を認め、問題の投稿は「対象者の生命または身体に対する害悪の告知といえる」と判断した。

さらに、キャラクターとしてのツイートに返信するかたちで、「お前」などと呼びかけながら投稿した対象は、「『●●』というCGで描かれたキャラクターに実在の身体はない以上、その背後の『●●』として活動する実在の個人である原告を対象とするものというべきである」(※判決文から、「●」は編集部)と指摘。

投稿によって、原告の人格権が侵害されたことは明らかといえるとした。

「あくまでVTuberに向けられた投稿で、実人格またはリアルな生身の人間としての原告に向けられたものではない」などとするTwitter社側の反論は認められなかったかたちだ。

VTuberに対するネットの投稿をめぐっては、キャラクターに向けられた投稿が本人の名誉毀損にあたるとする判決が今年出ている。

こうした状況の下、業界大手2社のカバーとANYCOLORは12月5日、所属VTuberらに対する誹謗中傷や殺害予告などに対して、法的措置を含めた対応の連携を発表している。(塚田賢慎)

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る