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「検索結果」削除めぐり最高裁初判断、京大・曽我部教授「安易な削除に歯止めかけた」
2017年02月02日 15時47分

検索サイト大手・グーグルで、自分の名前を入力すると、過去の逮捕歴などが表示されるのは人格権の侵害だとして、男性がグーグル社に「検索結果」の削除を求めた仮処分申し立ての抗告審で、最高裁第3小法廷(岡部喜代子裁判長)は1月31日、削除を認めない決定をした。

最高裁は今回、検索結果を表示することの社会的な意義などと比較したうえで、「プライバシー保護の利益が優越することが明らかな場合に削除を求めることができる」という判断基準を初めて示した。公共性を重視して、削除に高いハードルを課したかたちだ。

そのうえで、「男性の逮捕歴は公共の利害に関する」などとして、削除を認めなかった。いわゆる「忘れられる権利」への言及はなかった。

検索サイトの検索結果をめぐっては、削除を求める訴えがあいついでいる。下級審の判断はこれまでわかれている状況だったが、今回の最高裁の決定は、グーグルなどの今後の対応にも影響を与えるとみられる。今回の決定をどうみればいいのか、京都大学の曽我部真裕教授(憲法学)に聞いた。

検索サイト大手・グーグルで、自分の名前を入力すると、過去の逮捕歴などが表示されるのは人格権の侵害だとして、男性がグーグル社に「検索結果」の削除を求めた仮処分申し立ての抗告審で、最高裁第3小法廷(岡部喜代子裁判長)は1月31日、削除を認めない決定をした。

最高裁は今回、検索結果を表示することの社会的な意義などと比較したうえで、「プライバシー保護の利益が優越することが明らかな場合に削除を求めることができる」という判断基準を初めて示した。公共性を重視して、削除に高いハードルを課したかたちだ。

そのうえで、「男性の逮捕歴は公共の利害に関する」などとして、削除を認めなかった。いわゆる「忘れられる権利」への言及はなかった。

検索サイトの検索結果をめぐっては、削除を求める訴えがあいついでいる。下級審の判断はこれまでわかれている状況だったが、今回の最高裁の決定は、グーグルなどの今後の対応にも影響を与えるとみられる。今回の決定をどうみればいいのか、京都大学の曽我部真裕教授(憲法学)に聞いた。

●「安易に削除されることになれば、インターネットの記録性が失われる」

「近年、東京地裁を中心に検索結果の削除を求める仮処分や訴訟が多発しています。下級審では、判断基準・方法そのものについても立場がわかれていたことから、今回の決定によって判断方法が示された意義は大きい。また、『表現の自由』を尊重する判断で、安易な削除に歯止めをかけたことも重要です。

EU(欧州連合)の『忘れられる権利』の影響で、一部では立法の必要性も主張されてきましたが、ひとまずこうした動きは収まるのではないでしょうか。

他方で、今回の決定が大きく取り上げられたことなどの影響で、この手の事件が全国に広まる可能性があります。検索事業者も、例外的であれ、削除請求権が認められたことを踏まえ、救済に値する被害者が迅速確実に権利を行使できるよう、削除手順の明確化やその説明など、自主的な取り組みが求められます」

犯罪歴などが掲載されつづけることに問題はないのだろうか。

「たしかに、犯罪歴が掲載されつづけることは、書き込まれた本人にとって、大きな負担になるでしょう。

ただ、犯罪歴を掲載したのは、実名報道をおこなった報道機関や、それをもとに書き込むネットユーザーであって、検索事業者ではありません。

こうした場合、検索事業者に削除義務を負わせることの是非が問われたのが今回の問題です。検索結果の削除義務という狭い問題設定ではなく、全体を俯瞰した議論が求められます」

検索結果をそう安易に削除すべきでないということか。

「インターネットには、記録性という重要な特徴があります。われわれはそこから大きな恩恵を受けていますが、それも検索サービスがあればこそです。

犯罪歴にしても、たとえば産婦人科医が性犯罪を起こしていたとすれば、それが過去のことであっても、周辺住民が知っておくべき情報です。検索結果が安易に削除されることになれば、こうしたネットの記録性というメリットが失われることになりかねません。

また、書き込まれる側の立場の人に、自己に都合の良い情報だけを残して、自己イメージを操作するのを許すことになってしまうと思います」

【取材協力】

曽我部真裕(そがべ・まさひろ)京都大学大学院法学研究科教授(憲法学)。

現在の研究テーマはメディア・情報法制の国際比較。著書に『反論権と表現の自由』(有斐閣、2013年)など。

(弁護士ドットコムニュース)

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