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「違法な退職勧奨なかった」 黒瀬陽平氏とカオスラを訴えた女性の請求棄却…原告側は控訴
2022年12月01日 18時34分

現代アート集団「カオス*ラウンジ」の運営会社に勤務していた女性が、当時の会社代表だった黒瀬陽平氏と同社スタッフ2人から違法な退職勧奨を受けたとして、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認などを求めた裁判の判決が11月17日、東京地裁(布施雄士裁判長)であった。

布施裁判長は「退職合意は有効になされたもの」と結論づけ、請求の大部分を棄却した。原告側は「不当な判決である」として控訴した。

現代アート集団「カオス*ラウンジ」の運営会社に勤務していた女性が、当時の会社代表だった黒瀬陽平氏と同社スタッフ2人から違法な退職勧奨を受けたとして、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認などを求めた裁判の判決が11月17日、東京地裁(布施雄士裁判長)であった。

布施裁判長は「退職合意は有効になされたもの」と結論づけ、請求の大部分を棄却した。原告側は「不当な判決である」として控訴した。

●「ハラスメント」告発から、2つの訴訟に発展

この訴訟の発端は、合同会社カオスラに勤務していた安西彩乃さんが、2020年8月にネット上で、黒瀬氏やカオスラのスタッフによるハラスメントを告発したことだった。

カオスラ側は当初、社内で安西さんに対するハラスメント行為を認めたものの、2020年10月にすべてを撤回した。

同時にカオスラ側は、安西さんに「不法行為となりうる複数の問題行為」があり、告発文は虚偽で、名誉を傷つけられたとして、安西さんに500万円の賠償金を求める訴えを起こした(名誉毀損訴訟)。こちらは現在も、東京地裁で係争中だ。

安西さんは名誉毀損で訴えられたことなどを受け、違法な退職勧奨にあったとして、2021年2月に黒瀬氏やカオスラの社員らを提訴した(ハラスメント訴訟)。今回、判決が下されたのはこちらの訴訟である。

●「退職合意は成立していた」と判断

判決によると、主な争点は「退職合意が成立していたか」「退職合意における強迫または錯誤があったか」だった。

東京地裁は、退職合意は成立しており、退職合意における強迫などはなかったと判断した。

その理由として、カオスラ側が2020年6月、安西さんに対して退職フローについて書いたメールを送り、安西さんも自己都合退職をすることを明記したメールを自らの代理人弁護士に送っていたことを指摘した。

また、同月に黒瀬氏やカオスラ社員、安西さんの4人でおこなわれた「会議」において、カオスラ側の態度は、安西さんを「畏怖・困惑させるものだったとはいえない」などとした。

この判決を不服として、安西さん側は11月24日、東京高裁に控訴した。

なお、これまでの両訴訟の記録は、安西さんの支援団体「Be with Ayano Anzai」(https://bewithayanoanzai.cargo.site/)で公開されている。

●コメント

弁護士ドットコムニュース編集部では、この判決について、安西さんとカオスラ側に取材した。

【安西彩乃さんのコメント】

「不当な判決のため控訴します。Be with Ayano Anzaiでは、双方の訴訟書面、尋問調書、尋問レポートを公開してきました。被害告発や判決のみをドラマチックに受け取るのではなく、問題および訴訟の内容を知り、固有の問題への理解を深めた上で、各々が判断基準を持ち思考することが重要だという考えに変わりはありません」

【カオスラの藤城滉高代表のコメント】

「証拠上当然の結果だと思っています。その他の思い等は判決当日に、私(藤城)のTwitterアカウントで投稿しています。裁判事案にもかかわらず、相手方の言い分のみ記載された一方的なネット記事が存在します。なかには『当方による訴訟提起自体がハラスメント』などと述べるものがあり、これは根拠のない名誉棄損に対して、異を唱えることすらもハラスメントだとするもので、極めて悪質です。各記事作成者は、証拠を見た上で責任ある対応をしてほしいというのが今最も言いたいことです」

(編集部注)弁護士ドットコムニュース編集部はこれまで、名誉毀損訴訟とハラスメント訴訟について、3回にわたってカオスラ側に取材依頼メールを送っていたが、回答は得られていなかった。

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