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婚活女子が選ぶべきは「開業医」? 医療法人のメリットとは
2018年06月22日 11時00分

青山のとあるカフェにて、隣の席のグループからこんな会話が聞こえてきた。

「やっぱ狙うなら医者だよね〜」「医者っていっても、“開業医”の方がいいらしいよ?」「へぇ〜そうなんだ〜」

ーーどうやら婚活女子の集いのようだ。

彼女たちが言う「いい」とは、もちろん年収が「いい」ということだろうと予想できるが、彼女たちはなぜ「“開業医”の方がいい」のか、本質は理解していないだろう。

青山のとあるカフェにて、隣の席のグループからこんな会話が聞こえてきた。

「やっぱ狙うなら医者だよね〜」「医者っていっても、“開業医”の方がいいらしいよ?」「へぇ〜そうなんだ〜」

ーーどうやら婚活女子の集いのようだ。

彼女たちが言う「いい」とは、もちろん年収が「いい」ということだろうと予想できるが、彼女たちはなぜ「“開業医”の方がいい」のか、本質は理解していないだろう。

●開業医は2種類いる

そもそも開業医とは、たとえば大学病院で働く医師(勤務医)とは違い、オーナーとして自分の病院を経営する医師のこと。

ところがひと口に開業医といっても、個人で医院を運営している場合と、医療法人、つまり会社として医院を運営している場合との2種類がある。

これらは単に医院の売上や事業の規模で決まるのでは無く、医療法人としての届出や手続きをしているかどうかで決まるのだが、開業医の多くは医療法人を選択するという。

それには、税金の面で医療法人の方がメリットが多くなる場合があるからだ。

●医療法人のメリットとは

わかりやすく簡単な例として、1年間の利益が2000万円だったとする。

税金にまつわる法律では、得た利益 のことを「所得」と呼び、その種類は様々あるが、個人で医院を運営している場合、2000万円の利益は「事業所得」という種類になる。

所得には税金がかけられるので、所得の金額が多いほど支払う税金も多くなる。そこで「控除」と呼ばれる、税金がかけられる金額を少なくなるできる制度があり、それによって納税の負担を減らすことができるのだが、「控除」にも種類がいくつかあり、種類によって金額も異なっている。

個人で医院を運営している場合の「事業所得」には、「基礎控除」と所定の手続きをすれば「青色申告特別控除」というふたつの控除を適用することができ、それぞれ38万円、65万円と金額が決められている。

つまり「(事業所得)2000万 ー(基礎控除)38万 ー(青色申告特別控除)65万」=1897万円に税金が課せられることになる。

一方で医療法人として医院を運営している場合、2000万円の利益は「給与所得」という種類になり、いわゆる会社からもらうお給料と同じ扱いになる。

「給与所得」は「基礎控除」のほか「給与所得控除」も適用されるが、年収2000万円であれば「給与所得控除」の金額は220万円と決められている。

よって「(給与所得)2000万 ー(基礎控除)38万 ー(給与所得控除)220万」=1742万円に税金が課せられることになり、「事業所得」の場合よりも税金がかかる金額が155万円も少なくなり、税額では、約58万円の差が生じる。

これはあくまで一例に過ぎず、実際はもっと細かいが、総じて「給与所得」として利益を得た方が結果的に納める税金が少なくなる場合が多いため、医療法人として開業する医師が多いのである。

このほか将来的なことを考えると、事業をより拡大させたいときに2店舗目となる分院を展開できたり、「相続税」の負担が少なく済むため医院を子に継がせやすかったり、「退職金」を会社の必要経費として計上できるといったメリットもある。

●医療法人にはデメリットもある

もちろん、個人経営の医院に比べて医療法人がいいことばかり、というワケではない。

まず、医療法人として登録する際には「定款」という会社の決まり事の作成費や、会社として正式に認められるための申請費など、なにかと創立費用がかかる。その金額は一般的に、およそ50万円から100万円程度とされている。

そして、医療法人として続けていくためにはそれなりに維持費用もかかる。たとえば医療法人のスタッフは社会保険への加入が義務付けられているため、個人で運営する医院に比べ人件費が増大する場合がある。また、接待での飲食代やタクシー代といった「交際費」に使える金額が制限されるという面もある。

したがって医療法人の設立を考え始めるときは、税理士などの専門家と相談しながらメリット・デメリットを比較して費用を見積もり、設立時期や内容を決めるのがよいとされている。

ーーさて、カフェで見かけた彼女たちが狙い通り開業医と結婚したら、今度は次のような会話を繰り広げるかもしれない。

「子どもに後を継がせたいから、医療法人にしようかしら」「そうね〜設立までは大変だけど、退職金ももらいたいしね〜」「人件費とか交際費のやりくりもしっかりしなきゃね!」

【監修】

小林 拓未(こばやし・たくみ)税理士

東京都中央区にて平成19年から開業。「専門家として、長期的な視点で顧問先の発展に尽力する」ことを経営理念に掲げる。顧問先サービスの拡充のため、平成30年1月から社会保険労務士業務も開始。

事務所名 :税理士法人石川小林

事務所URL:https://www.ktaxac.com

(弁護士ドットコムニュース)

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