15057.jpg
ピースサインの写真から「指紋」盗み取られるリスク…どんな法的問題に発展する?
2017年01月15日 10時03分

カメラにピースサインをするだけで、指紋の情報が出回ってしまうーー。顔と手を一緒に撮影した写真から、個人と指紋を特定されてしまうリスクがあることを報じた産経新聞の記事「指紋ネット盗難 『ピースサインは危険!』3メートル離れて撮影でも読み取り可能」が話題になっている。

記事は、指紋の盗撮防止技術を開発した国立情報学研究所の越前功教授のコメントを掲載したものだ。同研究所の実験では、3メートル先で撮影した画像でも、指紋などの個人の生体情報を読み取ることが明らかになった。

生体情報は、スマートフォンの認証や建物の入退出管理など、様々な場面で用いられている。このような情報が容易に読み取られてしまうリスクがあるとのことだ。

もし第三者が、SNSなどに投稿されているピースサインの画像などから、生体情報を手に入れた場合、どんな法的問題があるのか。小林正啓弁護士に聞いた。

カメラにピースサインをするだけで、指紋の情報が出回ってしまうーー。顔と手を一緒に撮影した写真から、個人と指紋を特定されてしまうリスクがあることを報じた産経新聞の記事「指紋ネット盗難 『ピースサインは危険!』3メートル離れて撮影でも読み取り可能」が話題になっている。

記事は、指紋の盗撮防止技術を開発した国立情報学研究所の越前功教授のコメントを掲載したものだ。同研究所の実験では、3メートル先で撮影した画像でも、指紋などの個人の生体情報を読み取ることが明らかになった。

生体情報は、スマートフォンの認証や建物の入退出管理など、様々な場面で用いられている。このような情報が容易に読み取られてしまうリスクがあるとのことだ。

もし第三者が、SNSなどに投稿されているピースサインの画像などから、生体情報を手に入れた場合、どんな法的問題があるのか。小林正啓弁護士に聞いた。

●個人情報保護法に違反する行為

「個人情報保護法、刑法、民法上の問題があります。

平成29年5月30日に施行予定の改正個人情報保護法は、『特定の個人の身体の一部の特徴を電子計算機の用に供するために変換した文字、番号、記号その他の符号であって、当該特定の個人を識別することができるもの』を『個人識別符号』とし、これが含まれる生存する個人に関する情報を個人情報と定義して保護の対象にしましたから、指の画像から指紋に関する情報を抜き取ることは、個人情報保護法に違反する行為です」

では罰則はあるのか。

「SNSに掲載された画像から指紋情報を抜き取ることを処罰する規定はないので、刑法に違反する行為、すなわち犯罪にはなりません。ちなみに、クレジットカード等から不正に電磁的記録を取得する、いわゆるスキミングは刑法163条の2ないし5によって処罰されますが、指紋情報は電磁的記録にあたるとしても、同法にいう『クレジットカードその他の代金又は料金の支払用のカードを構成するもの』には該当しないので、同法の罪には問われません。

ただし、取得した他人の指紋情報を不正に使用して、ネットワークに接続されている端末にアクセスすれば、不正アクセス禁止法違反(3年以下の懲役又は100万円以下の罰金)の罪に問われます」

民事上の責任はどうなるのか。

「民法上、指紋情報は個人のプライバシー情報にあたりますから、他人の指紋情報を不正に取得した相手に対しては、損害賠償請求や、使用の差し止めを請求することができます。

指紋や目の虹彩などの情報を生体情報といいます。生体情報は、鍵やカードを持ち歩いたり、パスワードを記憶したりしなくて済むなど便利な反面、盗まれても変更できないという短所があります。今後生体情報が認証手段として普及するときには、厳格な管理の仕組みが不可欠になるでしょう」

(弁護士ドットコムニュース)

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る