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電車の「窓ガラス」が割れてケガ 被害者はどんな請求ができる?
2013年05月09日 16時10分

電車の窓ガラスが突然割れる――。4月18日、神奈川県横須賀市の「京急線」京急田浦―安針塚駅間で、上り特急電車と下りの電車がすれ違った際に、特急電車の窓ガラスが割れて、乗っていた高校生2人が首などに軽いケガを負うという事故が起きた。

警察や関東運輸局が、窓ガラスが割れた事故車両を調査したところ、外から石などを投げられた形跡は見つからなかったという。また同線では、2010年にも同じような事故が起きているが、原因は不明だそうだ。被害を受けた人は鉄道会社にどのような請求ができるだろうか。前島憲司弁護士に聞いた。

●原因不明の場合は損害賠償の請求は難しい

被害者が損害賠償を請求するには、鉄道会社に『過失』があることが必要です。そして、過失があったといえるためには、鉄道会社が、『被害を予見できて』かつ『被害を回避する措置をとらなかった』という2つの事情が必要なのです」

前島弁護士はまず、このように損害賠償について説明する。「あらかじめ窓ガラスが割れるような状況があった」にもかかわらず、「対策を取らずに放置していた」ら、過失になるということだ。逆に言うと、被害を予見できなかったり、十分な対策を施した場合は過失にはならない。

では、今回の場合はどうなるのだろうか。京急電鉄によると、事故原因は不明で現在も調査中だということだが・・・。

「今回の事故の場合、現在のところ原因が不明ということですので、鉄道会社が『被害を予見できた』という事情を認定することは、なかなか難しいのではないかと思います。

また、損害賠償を求める訴訟を提起しても、裁判所に請求そのものを認めてもらうことはなかなか難しいのではないでしょうか」

つまり、事故原因が不明で、鉄道会社の「過失」を証明できないため、損害賠償を請求することは難しいということだ。では、今後の調査が進んで事故原因などが明らかになった場合は、損害賠償請求は可能となるのか?

「たとえば、車両同士がすれ違ったときの風圧強度試算が不十分だった場合や、車両の構造に欠陥があった場合、あるいは、線路沿いの立木と列車が接触して窓ガラスが割れたなどの事情が判明したとします。このような具体的な原因が、ある程度明らかになれば、損害賠償請求が可能になるかもしれません」

今回の事故で被害者は軽傷で済んだかもしれないが、大きな被害になった可能性もある。しっかりとした原因究明が求められるだろう。

(弁護士ドットコムニュース)

電車の窓ガラスが突然割れる――。4月18日、神奈川県横須賀市の「京急線」京急田浦―安針塚駅間で、上り特急電車と下りの電車がすれ違った際に、特急電車の窓ガラスが割れて、乗っていた高校生2人が首などに軽いケガを負うという事故が起きた。

警察や関東運輸局が、窓ガラスが割れた事故車両を調査したところ、外から石などを投げられた形跡は見つからなかったという。また同線では、2010年にも同じような事故が起きているが、原因は不明だそうだ。被害を受けた人は鉄道会社にどのような請求ができるだろうか。前島憲司弁護士に聞いた。

●原因不明の場合は損害賠償の請求は難しい

被害者が損害賠償を請求するには、鉄道会社に『過失』があることが必要です。そして、過失があったといえるためには、鉄道会社が、『被害を予見できて』かつ『被害を回避する措置をとらなかった』という2つの事情が必要なのです」

前島弁護士はまず、このように損害賠償について説明する。「あらかじめ窓ガラスが割れるような状況があった」にもかかわらず、「対策を取らずに放置していた」ら、過失になるということだ。逆に言うと、被害を予見できなかったり、十分な対策を施した場合は過失にはならない。

では、今回の場合はどうなるのだろうか。京急電鉄によると、事故原因は不明で現在も調査中だということだが・・・。

「今回の事故の場合、現在のところ原因が不明ということですので、鉄道会社が『被害を予見できた』という事情を認定することは、なかなか難しいのではないかと思います。

また、損害賠償を求める訴訟を提起しても、裁判所に請求そのものを認めてもらうことはなかなか難しいのではないでしょうか」

つまり、事故原因が不明で、鉄道会社の「過失」を証明できないため、損害賠償を請求することは難しいということだ。では、今後の調査が進んで事故原因などが明らかになった場合は、損害賠償請求は可能となるのか?

「たとえば、車両同士がすれ違ったときの風圧強度試算が不十分だった場合や、車両の構造に欠陥があった場合、あるいは、線路沿いの立木と列車が接触して窓ガラスが割れたなどの事情が判明したとします。このような具体的な原因が、ある程度明らかになれば、損害賠償請求が可能になるかもしれません」

今回の事故で被害者は軽傷で済んだかもしれないが、大きな被害になった可能性もある。しっかりとした原因究明が求められるだろう。

(弁護士ドットコムニュース)

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