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クレディセゾンが全従業員「正社員化」…多くの企業に広がると労働市場はどう変わる?
2017年08月27日 07時23分

クレジットカード大手のクレディセゾンは8月14日、現在総合職や専門職などに分類されている社員区分を無くし、全従業員を正社員に一本化すると発表した。制度の導入は9月16日から。

クレディセゾンの発表によると、現在は総合職社員(無期雇用で月給、賞与あり、確定拠出年金制度あり)・嘱託社員(有期雇用で月給)・専門職社員(無期雇用で月給、賞与あり)・パート社員(有期雇用で時給)の4区分に分かれていたが、全社員を正社員とし賃金や処遇を統一する。

今回の制度では賃金水準や昇進、福利厚生などの差がなくなり、従業員にとってはメリットが多そうだが、使用者(会社)側はどんなメリットがあるのだろうか。こういった流れが広がれば、社会はどう変わるのか。神内伸浩弁護士に聞いた。

クレジットカード大手のクレディセゾンは8月14日、現在総合職や専門職などに分類されている社員区分を無くし、全従業員を正社員に一本化すると発表した。制度の導入は9月16日から。

クレディセゾンの発表によると、現在は総合職社員(無期雇用で月給、賞与あり、確定拠出年金制度あり)・嘱託社員(有期雇用で月給)・専門職社員(無期雇用で月給、賞与あり)・パート社員(有期雇用で時給)の4区分に分かれていたが、全社員を正社員とし賃金や処遇を統一する。

今回の制度では賃金水準や昇進、福利厚生などの差がなくなり、従業員にとってはメリットが多そうだが、使用者(会社)側はどんなメリットがあるのだろうか。こういった流れが広がれば、社会はどう変わるのか。神内伸浩弁護士に聞いた。

●正社員の中で仕事内容などに応じて賃金差をつけていく必要がある

今回のクレディセゾンの制度改革を、どう評価するのか。

「面白い試みだと思います。確かに、正社員と非正規従業員の違いが、職務の内容などによるのではなく、純粋に有期か無期か、あるいは、月給制か時給制かといった契約期間や賃金の算出方法などにしか生じていないのであれば、正社員とそれ以外とで区分けをする必要性はないように思われます」

全従業員の正社員化にはどんなメリットがあるのか。

「全員正社員としつつも、短時間勤務制度やフレックスタイム制度、在宅勤務制度などを活用することで、フルタイムで働くことができない人もこれまでと同様の働き方を維持できます。

また、従業員の雇止めをするにしても現行法制下では、解雇する場合と同様に合理的理由が問われますから、企業が自由に雇止めをすることはできません。ですから、『有期労働契約』というのは極めて名目的であるともいえます。

まして契約期間が5年を超えると無期転換申込権(労働契約法18条1項)が発生し、企業は無期化を拒むことができないわけです。『それならばいっそのこと全員無期労働契約にしてしまおう』という発想はある意味『潔い』とさえ思えます」

正社員と非正規雇用の差がなくなるというのは新しい。

「はい。ただ、『正社員』というブランドイメージも、いまだに日本人の意識の中に少なからずあります。これまでなかなか正社員になれなかった人たちにとっては、モチベーションの上がる制度となるかもしれません。

しかし、逆にこれまで正社員として頑張ってきた人たちに『何の努力をしなくても正社員になれるのか』と思われないように、正社員の中でも職務の内容や職責等に応じた賃金の差別化をきちんと図っていく必要があるでしょう」

●クレディセゾンが成功すれば、これに続く企業が増えていく可能性も

NTTグループが今年3月、契約社員にも正社員と同額の手当を支給すると発表した際に、神内弁護士は「待遇差を是正すると、人材が流動的になる」と指摘していました(「NTT、契約社員にも正社員と同額の手当支給へ…待遇差の解消、どうあるべき?」https://www.bengo4.com/c_8/n_5855/)。今回の件もそういった面があるのか。

「確かにあらゆる企業が、クレディセゾンのように一斉に待遇差をなくせば、労働者としてはどこで働いても同じである(どの会社でも正社員として雇ってもらえる)ため、人材の流動化に拍車がかかる要因になるものと思われます。

しかし、現状は多くの企業で正社員と非正規従業員との待遇格差が生じており、またそれが良くも悪くも正社員であることのブランドイメージにもつながっています。そのためクレディセゾンのような企業が数社出てきたところで、何か劇的に労働市場が変わるということはないでしょう」

今後クレディセゾンのような制度を導入する会社が増えると、どうなるのか。

「クレディセゾンの人事施策が成功すれば、これに続く企業がネズミ算式に増えていく可能性もあります。そうなれば、法制度もさらなる変更を余儀なくされ、現状では誰も思い描かなかった新たな価値観を伴った労働市場が、近い将来形成されることとなるかもしれません」

(弁護士ドットコムニュース)

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