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「契約更新は50歳で最後」大手塾講師の「雇い止め」は無効ーー東京高裁が判決
2015年12月03日 19時33分

大手学習塾「市進学院」で有期雇用社員として長年働いていた講師2人が、契約の更新を止められたこと(雇い止め)は不当だとして、塾を運営する「市進」に雇い止めの撤回を求めていた裁判で、東京高裁(綿引万里子裁判長)は12月3日、雇い止めの無効を認めた1審判決を支持し、会社側の控訴を棄却した。50歳という年齢を理由とする雇い止めを認めなかった。

大手学習塾「市進学院」で有期雇用社員として長年働いていた講師2人が、契約の更新を止められたこと(雇い止め)は不当だとして、塾を運営する「市進」に雇い止めの撤回を求めていた裁判で、東京高裁(綿引万里子裁判長)は12月3日、雇い止めの無効を認めた1審判決を支持し、会社側の控訴を棄却した。50歳という年齢を理由とする雇い止めを認めなかった。

●「契約更新は50歳が最後」という就業規則の効力を認めず

訴えを起こしたのは、市進学院の講師をしていた佐藤匡克さん(55)と高畑光弥さん(46)。判決によると、2人はいずれも勤続年数20年以上のベテラン講師で、市進と1年間の「有期雇用契約」を結んで働いていたが、2013年まで20回以上、契約更新を繰り返してきた。ところが、2013年2月、佐藤さんは「契約更新は50歳が最後」とする就業規則に基づいて、高畑さんは勤務成績が悪いことを理由に、契約を更新することができなかった。

この「雇い止め」の撤回を求めて、佐藤さんと高畑さんは2013年6月、東京地裁に提訴した。2015年6月、東京地裁は、雇い止めについて「社会的相当性や合理性を認められない」などとして原告の訴えを認める判決を下したが、市進はこれを不服として控訴していた。

2審の東京高裁は、1審の判断を支持した。「契約更新は50歳が最後」とする就業規則について、労働者が被る不利益が小さくない一方で、そのような制度を導入する高度の必要性が認められないと判断。50歳をすぎても「特別嘱託専任社員」または「嘱託教務社員」という名の契約社員として、60歳まで働くことができるとした。また、実際にそのような形で勤務している社員が「多数存在している」と認定した。

そのような事情からすると、佐藤さんが50歳をすぎたあとも「雇用契約が更新される」と期待することには「合理性な理由がある」として、有期雇用契約の更新について定める労働契約法19条に基づき、市進による更新拒絶は認められないと判断した。

また、高畑さんに対する「生徒や保護者からクレームが多い」「多数の退会者を出している」といった雇い止め理由についても、「客観的かつ具体的な資料によって裏付けられているとまでは認められない」として、労働契約法19条が更新拒絶の条件としてあげる「客観的な合理性、社会通念上の相当性」を認めることはできないとした。

●「本当に嬉しさがこみ上げるのは職場に復帰したとき」

東京高裁の判決後、東京・霞ヶ関の厚生労働省記者クラブで記者会見が開かれた。原告の佐藤さんは「高校生と大学生の子どもがいるため、(雇い止めをされて)生活維持に不安を覚えた。安定して働けなければ、生徒に良い指導ができない。いい判決をいただけたと思う」と話した。

また高畑さんは「本当に嬉しさがこみ上げるのは、職場に復帰したときだと思う。それまで会社と戦っていきたい」と述べた。

原告側代理人の棗一郎弁護士は、「有期雇用の人について、50歳で雇い止めにして良いという判決が出たら、日本の社会は大変なことになる。きちんと判断してもらって良かった。今後は、職場復帰を前提に交渉を進めていきたい」と述べた。

市進の親会社である市進ホールディングス広報宣伝部は、弁護士ドットコムニュースの取材に対して、「まだ判決の内容がわからないので、コメントはできない」と話した。

(弁護士ドットコムニュース)

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