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「抗がん剤治療」1回60万円だけど「自己負担1万5000円」…高額医療費制度の仕組み
2016年09月09日 10時33分

「母親に結構な金が注ぎ込まれてる」。そんなタイトルで「はてな匿名ダイアリー」に書かれた投稿が話題になった。ブログを書いた人の母親はステージ4の卵巣がん患者。現在は抗がん剤治療中だ。「効かなくなったり、副作用が強く出てきたりしたら新しい薬に変える」治療を受けているが、「3ヶ月ほど前、また抗がん剤が変わった」ことで、冒頭の高額な医療費に気づいた。

母親は幸いにも、新しい抗がん剤の副作用は重くなく、腫瘍マーカーの数値もよくなったという。しかし「請求の明細を見ると、やはりいろいろと考えてしまう」と、戸惑いを感じたそうだ。「母の抗がん剤治療には、1回60万円以上の金が注ぎ込まれている」からだ。しかも「後期高齢者である母は、高額医療費の援助を勘定に入れれば、実質1万5000円程度しか払っていない」。

なぜ、1回60万円もかかる抗がん剤治療で、自己負担が1万5000円程度ですむのだろうか。「高額医療費」制度について、松永容明税理士に聞いた。

「母親に結構な金が注ぎ込まれてる」。そんなタイトルで「はてな匿名ダイアリー」に書かれた投稿が話題になった。ブログを書いた人の母親はステージ4の卵巣がん患者。現在は抗がん剤治療中だ。「効かなくなったり、副作用が強く出てきたりしたら新しい薬に変える」治療を受けているが、「3ヶ月ほど前、また抗がん剤が変わった」ことで、冒頭の高額な医療費に気づいた。

母親は幸いにも、新しい抗がん剤の副作用は重くなく、腫瘍マーカーの数値もよくなったという。しかし「請求の明細を見ると、やはりいろいろと考えてしまう」と、戸惑いを感じたそうだ。「母の抗がん剤治療には、1回60万円以上の金が注ぎ込まれている」からだ。しかも「後期高齢者である母は、高額医療費の援助を勘定に入れれば、実質1万5000円程度しか払っていない」。

なぜ、1回60万円もかかる抗がん剤治療で、自己負担が1万5000円程度ですむのだろうか。「高額医療費」制度について、松永容明税理士に聞いた。

●負担限度額は「年齢や所得によって異なる」

高額療養費制度とは、1カ月の医療費の自己負担が高額になったとき、自己負担限度額を超えた分が高額療養費として払い戻される制度です。手続きによっては、窓口の支払い時点から「限度額」を超えた分の支払いが不要になることもあります。

今回の投稿者のケースでは、自己負担が1万5000円程度ですんだとのことですが、年齢や所得によって負担限度額は異なるので、注意が必要です。

まず、年齢については「70歳未満」「70歳以上〜75歳未満」「75歳以上(後期高齢者)」の区分にわけられます。その上で、各区分によって負担限度額やその基準となる年収が異なります。

さらに、70歳未満か70歳以上かで大きな違いとなるのが、自己負担額に「外来」と「外来+入院費」の2種類がもうけられている点です。

「70歳以上〜75歳未満」「75歳以上の後期高齢者」の場合、「外来だけの上限額」(8000円〜4万4400円)が設けられています。

そのため、「70歳未満」に比べ、高額療養費の支給ハードルが下がるのが特徴です。

医療費は通常、外来費と入院費とを別々に計算します。そのため「70歳未満」の方は、「外来+入院」の合算医療費で、高額療養費を計算します。一方で、70歳以上の方は、「外来」の医療費だけで高額療養費を計算した後、「外来+入院」の合算で高額療養費を計算します。

たとえば、1カ月の外来医療費の自己負担金が1万円だったとします。一見すると、負担限度額に満たない金額ですが、住民税が非課税の方の「外来だけの上限額」は8000円ですので、「1万円-8000円=2000円」が高額療養費として支給されることになります。

なお、現役並み所得者(住民税課税所得が145万円以上)の場合には、外来での自己負担限度額は「4万4400円」となりますので、外来医療費が1万円であれば、その全額を支払う必要があります。

●後期高齢者では「1万5000円の負担ですむ」ケースも

次に、所得水準によって、負担限度額が異なります。

75歳以上の場合、所得区分は、現役並み所得者(住民税課税所得が145万円以上)、一般(区分Ⅰ、Ⅱ以外)、低所得者(Ⅰ、Ⅱ)の4区分に分けられ、現役並み所得者は負担限度額が大きく、低所得者は負担限度額が小さく設定されていす。

例えば、60万円の医療費がかかった場合、現役並み所得者の1カ月の負担額は8万3430円ですが、一般所得者は4万4000円、低所得者Ⅱは2万4600円、低所得者Ⅰは1万5000円の負担ですみます。

現役世代の高額療養費についても、「外来だけの上限額」が設けられていないだけで、基本的な仕組みは同じです。2015年1月から、負担能力に応じた負担をという観点から、70歳未満の方の所得区分が、これまでの3段階から5段階に細分化されました。

●「70歳未満」なら「限度額適用認定証」が便利

ところで、70歳以上は、窓口での支払い時から限度額は適用されています。窓口で限度額を超える分を支払う必要はありません。

しかし「70歳未満」の患者さんでも、入院、手術などで事前に医療費が高額になることが予測されている時には、あらかじめ「限度額適用認定証」を提出することで、限度額を超えた分の支払いをしない制度を利用できます。

認定証は加入する健康保険組合に発行を依頼し、入院する際などに窓口へ提示するだけで、限度額を超える分の支払いは不要となります。

もし認定証の手続きを経ない場合には、いったん窓口で支払いをした後、後日に健康保険組合へ申請し、還付してもらいます。

今回は「世帯合算」や「多数回該当」といった仕組みには触れませんでしたが、高額療養費制度については、ぜひ一度ご自身で勉強されておくと、万が一の時に安心ですね。

【取材協力税理士】

松永 容明(まつなが・ひろあき)税理士

国税局、ビック4系税理士事務所、UBS信託銀行などを経て、神奈川県大和市で独立。国税当局在職中から、国際課税、国際相続、移転価格などに選択と集中を行う。現在、中小企業の海外進出アドバイス、資産税の節税スキーム等で人気が高い。 

事務所名   : 松永ひろあき税理士事務所

事務所URL:http://www.bantoh.jp/

(弁護士ドットコムニュース)

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