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<京都不審死事件>被告人の女性が頼りにしていた「公正証書遺言」ってなに?
2014年12月11日 15時08分

青酸化合物で夫を殺害したとして、京都府向日市の筧千佐子被告人(67歳)が12月10日、殺人罪で起訴された。本人は容疑を否認しているが、週刊誌やテレビでは、これまでの経歴などが大きく報じられている。

週刊朝日の報道によれば、結婚相談所や婚活サイトを通じて知り合った高齢の男性と結婚するものの、その後しばらくして男性が死亡し、遺産を相続するというパターンが繰り返されていたのだという。

その際、千佐子被告人が頼りにしていたのが「公正証書」だったそうだ。千佐子被告人は、逮捕前のテレビインタビューで公正証書の有用性について語っており、「公正証書遺言があれば、死んだ時点で、書いてあることが全部、国の力で奥さんにいく」などと話している。

そもそも「公正証書」とは、いったいなんだろうか。また、どのような効力があるのだろうか。三平聡史弁護士に聞いた。

青酸化合物で夫を殺害したとして、京都府向日市の筧千佐子被告人(67歳)が12月10日、殺人罪で起訴された。本人は容疑を否認しているが、週刊誌やテレビでは、これまでの経歴などが大きく報じられている。

週刊朝日の報道によれば、結婚相談所や婚活サイトを通じて知り合った高齢の男性と結婚するものの、その後しばらくして男性が死亡し、遺産を相続するというパターンが繰り返されていたのだという。

その際、千佐子被告人が頼りにしていたのが「公正証書」だったそうだ。千佐子被告人は、逮捕前のテレビインタビューで公正証書の有用性について語っており、「公正証書遺言があれば、死んだ時点で、書いてあることが全部、国の力で奥さんにいく」などと話している。

そもそも「公正証書」とは、いったいなんだろうか。また、どのような効力があるのだろうか。三平聡史弁護士に聞いた。

●公正証書の遺言には「強い力」がある

「公正証書は、法律の専門家である『公証人』が法にのっとって作成し、公証役場で保管する『公文書』です。遺言なども公正証書で作成すると、公文書の扱いになります」

このように三平弁護士は述べる。

「遺言を公正証書で作成した場合、力を発揮するのは、遺言者が亡くなったときです。本人が遺言を保管した場所を知らさずに死亡した場合、遺族は家じゅうをひっかき回さなければなりません。

また、遺族が納得できないような内容だった場合でも、遺言が読まれている時点では『書いた本人』はすでに亡くなっており、説明しようがありません。しかし『公正証書遺言』ならば、公証人や証人が遺言者の意思をしっかり確認しています」

後々のトラブルを避けるために、遺言を公正証書にしておくと安心ということだ。

「公正証書には『執行力』といって、判決と同じような強い力があります。もし内容が守られなかった場合でも、公正証書があれば、裁判をしなくても強制執行ができるというメリットがあります」

遺言という観点から、そのほかにメリットといえることはあるのだろうか。

「たとえば、遺言の中で不動産の相続について書かれている場合、他の誰にも知られずにスムーズに相続手続きを進められるという点があるでしょう」

三平弁護士はこう述べる。どういうことだろうか。

●自筆の遺言は裁判所の「検認」が必要

「公証役場を通さずに自分で書いただけの遺言(自筆証書遺言)の場合は、発見されたら家庭裁判所で『検認』という手続きが必要です。相続人が見守る中、裁判官が開封して記載内容を確認します。『誰かが勝手に開封して偽造する』ということを防ぐためです。

しかし、公正証書遺言の場合、『検認』は必要ありません。すでに作成時点で、公証人や証人が内容を確認しており、公証役場で保管しているためです。また、不動産の相続は、もらった人が単独で勝手に登記申請することができます。

ですから、他の相続人に知られずに、不動産の移転登記ができるでしょう」

今回の事件をめぐり、千佐子容疑者は、「独身の高齢者」「子どもなし」「蓄財が多い」という条件で結婚相手を探していたと報道されている。仮に子どもがいない人が亡くなったとしても、兄弟から文句が出ないのだろうか。

「遺言に『妻に100%財産を譲る』と書かれていた場合、兄弟は異議を唱えることはできません。いかに自分の財産といえども、財産すべての相続先を遺言で決められないのが通常です。財産の2分の1から3分の1は、子どもや自分の親への最低限の取り分(遺留分)として、残さなければなりません。ただ、残念ながら兄弟は、この遺留分を請求する権利はないのです」

遺言書があれば、財産を独り占めすることも可能だというわけだ。そういえば、ハリウッドスターについて、結婚前に財産について契約を交わすという話を耳にすることがあるが・・・

「日本の民法にも『夫婦財産契約』についての規定がありますが、米国では、プレナップとしてメジャーです。トム・クルーズが『11年以内の離婚では財産分与なし』を飲ませたということが報道され、有名になりました。

ただ、日本では『夫婦財産契約』はまだ、普及していません。『縁起が悪いことは考えてはいけない』という文化的な価値観がまだ強いのでしょう」

このように三平弁護士は話していた。

(弁護士ドットコムニュース)

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