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「隣の家」から伸びてくる「つる」にモヤモヤ、どうしたらいい?
2013年09月11日 19時30分

一戸建てのマイホームを建てることが目標――そう考えているサラリーマンは、いまでも少なくないだろう。しかし、念願のマイホームを手に入れたとしても、隣の家とのトラブルで悩みを抱えることになるかもしれない。インターネットの相談サイト「発言小町」には、隣の敷地との「境界」をめぐる悩みが投稿されている。

新築の分譲住宅に入居して、敷地内にフェンスを設置したところ、隣家が庭に植えた植物のつるがフェンスに巻き付いてきたという。ところが、隣家は何ら対策をとることなく毎朝水を与え、ついにはこちらの敷地に侵入するほど育ってしまった。

隣のつるが自分の敷地に伸びてくるの見て、「毎日モヤモヤしている」という相談主だが、何か対策を打つことはできるのだろうか。瀬戸仲男弁護士に聞いた。

●樹木の枝が境界線を越えてきた場合を想定した「法律」がある

「今回のように、隣地の樹木の枝や根が境界線を越えてきた場合に対する法律として、民法233条があります」

このように瀬戸弁護士は民法の条文を紹介したうえで、次のように説明する。

「この条文の第1項によると、『隣地の竹木の枝が境界線を越えるときは、その竹木の所有者に、その枝を切除させることができる』ことになっています。つまり、越境している枝を切るように請求できるということです」

今回のケースでは、隣家の住人が植えた植物なので、その所有者も隣家だと考えてよいだろう。そこで、隣家に切除をお願いすることになるわけだが、「わかりました」と承諾してくれれば、話が簡単だ。瀬戸弁護士によれば、「樹木切除承諾書」のような文書に署名してもらって、相談者が自分で切除するのが早いのではないかという。

●隣家が切除を承諾しない場合は、どうすればいいのか

問題は、隣家が承諾してくれなかった場合だ。それでも解決したいときは、裁判所に訴訟を起こすか、調停を申し立てるということが考えられる。急ぐ場合は、仮処分の申立てという手段もある。仮に訴訟を起こしたとき、裁判所はすぐさま「切除の請求」を認めてくれるかというと、意外にもそうではないらしい。瀬戸弁護士は次のように述べる。

「参考になる判例として、『新潟地裁昭和39年12月22日判決』があります。この判決は、枝の切除要求が『権利濫用』となる場合があることを認めています。『権利濫用』とは、権利の行使に見えても、当事者の利益衡量などの実質を考えれば、権利行使が許されない場合のことです」

つまり、民法では、隣地から伸びてきた植物の切除を請求する権利が認められているのだが、その権利を行使することが「濫用」とみなされる場合があるということだ。

「新潟地裁が示している権利濫用のケースは、第1に、越境した枝によってなんらの被害も被っていないか、あるいは、被っていたとしてもその被害がきわめて小さい場合です。第2に、枝を切除することによって被害者が回復する利益が小さいのにくらべて、樹木の所有者が受ける損害が不当に大きい場合です。このような場合には、切除要求が認められないことになる可能性が大きいといえます」

●勝手に切除すると、損害賠償を請求される可能性がある

このような条件をみたす場合は、植物の切除要求が「権利濫用」として認められないというのだ。ちなみに、「ええぃ、面倒だ!切っちまえ!」と言って、勝手に枝を切ってしまったら、隣家から損害賠償請求をされたり、器物損壊罪で告訴される可能性があるから、注意が必要だ。

このように、植物の侵入といっても法律的にはなかなか複雑なのだが、今回のケースはどう考えたらいいのだろうか。

「相談者の場合は、『隣のつるが自分の敷地に伸びてくるの見て、毎日モヤモヤしている』ということのようですが、実際には被害が生じていないようです。したがって裁判所が、切除を認めてくれる可能性は小さいと思われます」

こう推測する瀬戸弁護士は、次のようにアドバイスしている。

「ものは考えようといいますし、発想を転換してみては、どうでしょう。花が咲くような『つる』であれば、自分が植える手間が省けるわけですから、愛でて楽しんでみてはいかがでしょうか」

(弁護士ドットコムニュース)

一戸建てのマイホームを建てることが目標――そう考えているサラリーマンは、いまでも少なくないだろう。しかし、念願のマイホームを手に入れたとしても、隣の家とのトラブルで悩みを抱えることになるかもしれない。インターネットの相談サイト「発言小町」には、隣の敷地との「境界」をめぐる悩みが投稿されている。

新築の分譲住宅に入居して、敷地内にフェンスを設置したところ、隣家が庭に植えた植物のつるがフェンスに巻き付いてきたという。ところが、隣家は何ら対策をとることなく毎朝水を与え、ついにはこちらの敷地に侵入するほど育ってしまった。

隣のつるが自分の敷地に伸びてくるの見て、「毎日モヤモヤしている」という相談主だが、何か対策を打つことはできるのだろうか。瀬戸仲男弁護士に聞いた。

●樹木の枝が境界線を越えてきた場合を想定した「法律」がある

「今回のように、隣地の樹木の枝や根が境界線を越えてきた場合に対する法律として、民法233条があります」

このように瀬戸弁護士は民法の条文を紹介したうえで、次のように説明する。

「この条文の第1項によると、『隣地の竹木の枝が境界線を越えるときは、その竹木の所有者に、その枝を切除させることができる』ことになっています。つまり、越境している枝を切るように請求できるということです」

今回のケースでは、隣家の住人が植えた植物なので、その所有者も隣家だと考えてよいだろう。そこで、隣家に切除をお願いすることになるわけだが、「わかりました」と承諾してくれれば、話が簡単だ。瀬戸弁護士によれば、「樹木切除承諾書」のような文書に署名してもらって、相談者が自分で切除するのが早いのではないかという。

●隣家が切除を承諾しない場合は、どうすればいいのか

問題は、隣家が承諾してくれなかった場合だ。それでも解決したいときは、裁判所に訴訟を起こすか、調停を申し立てるということが考えられる。急ぐ場合は、仮処分の申立てという手段もある。仮に訴訟を起こしたとき、裁判所はすぐさま「切除の請求」を認めてくれるかというと、意外にもそうではないらしい。瀬戸弁護士は次のように述べる。

「参考になる判例として、『新潟地裁昭和39年12月22日判決』があります。この判決は、枝の切除要求が『権利濫用』となる場合があることを認めています。『権利濫用』とは、権利の行使に見えても、当事者の利益衡量などの実質を考えれば、権利行使が許されない場合のことです」

つまり、民法では、隣地から伸びてきた植物の切除を請求する権利が認められているのだが、その権利を行使することが「濫用」とみなされる場合があるということだ。

「新潟地裁が示している権利濫用のケースは、第1に、越境した枝によってなんらの被害も被っていないか、あるいは、被っていたとしてもその被害がきわめて小さい場合です。第2に、枝を切除することによって被害者が回復する利益が小さいのにくらべて、樹木の所有者が受ける損害が不当に大きい場合です。このような場合には、切除要求が認められないことになる可能性が大きいといえます」

●勝手に切除すると、損害賠償を請求される可能性がある

このような条件をみたす場合は、植物の切除要求が「権利濫用」として認められないというのだ。ちなみに、「ええぃ、面倒だ!切っちまえ!」と言って、勝手に枝を切ってしまったら、隣家から損害賠償請求をされたり、器物損壊罪で告訴される可能性があるから、注意が必要だ。

このように、植物の侵入といっても法律的にはなかなか複雑なのだが、今回のケースはどう考えたらいいのだろうか。

「相談者の場合は、『隣のつるが自分の敷地に伸びてくるの見て、毎日モヤモヤしている』ということのようですが、実際には被害が生じていないようです。したがって裁判所が、切除を認めてくれる可能性は小さいと思われます」

こう推測する瀬戸弁護士は、次のようにアドバイスしている。

「ものは考えようといいますし、発想を転換してみては、どうでしょう。花が咲くような『つる』であれば、自分が植える手間が省けるわけですから、愛でて楽しんでみてはいかがでしょうか」

(弁護士ドットコムニュース)

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