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交際相手との「性的行為」理由に高校を退学させられた…妥当な処分なのか?
2016年06月23日 10時31分

交際相手と性的な行為をしたことを理由に高校の退学を勧告されたのは行き過ぎで違法だとして、18歳の男子大学生が、仙台市のサッカー強豪校として知られる高校の学校法人と校長に約600万円の損害賠償を求める訴えを仙台地裁に起こした。

河北新報によると、高校は、男子学生が3年生だった2015年12月、交際相手と性的な行為をしたことを理由に退学処分を決定し、自主退学するよう勧めた。男子学生は転校を余儀なくされ、指定校推薦で進学が決まっていた関東の私立大から合格を取り消された。また、男性学生が所属していたサッカー部は全国高校サッカー選手権に出場したが、男子学生は開幕の2日前に退学したため出場できなかったという。

男子学生側は「性的な行為が退学処分の理由になるとの校則は存在しない。教師も周知しておらず、裁量権の乱用で違法だ」と主張している。

この高校の学則を調べてみると、「校長は、校規を乱し、訓戒にそむき、その本分に違反した生徒」を「退学」にできると定められていた。退学にできる場合として、「性行不良で改善の見込がないと認められる者」、「学力劣等で成業の見込がないと認められる者」、「正当な理由がなくて出席常でない者」、「学校の秩序を乱し、その他生徒としての本分に反した者」という4つの項目が定められていた。

このほか、「生徒心得」などは校長が別に定めると規定されていたため、「性的な行為」がそうした生徒心得などで禁止されているのか、弁護士ドットコムニュース編集部は高校側に問い合わせたが、「生徒のプライバシーに関わることなので、校則が存在するかどうかを含め、何もコメントできません」との回答だった。

一般論として、交際相手との性的行為があったことのみを理由に、高校が生徒を退学処分とすることは、法的に問題があるのだろうか。猪野亨弁護士に聞いた。

交際相手と性的な行為をしたことを理由に高校の退学を勧告されたのは行き過ぎで違法だとして、18歳の男子大学生が、仙台市のサッカー強豪校として知られる高校の学校法人と校長に約600万円の損害賠償を求める訴えを仙台地裁に起こした。

河北新報によると、高校は、男子学生が3年生だった2015年12月、交際相手と性的な行為をしたことを理由に退学処分を決定し、自主退学するよう勧めた。男子学生は転校を余儀なくされ、指定校推薦で進学が決まっていた関東の私立大から合格を取り消された。また、男性学生が所属していたサッカー部は全国高校サッカー選手権に出場したが、男子学生は開幕の2日前に退学したため出場できなかったという。

男子学生側は「性的な行為が退学処分の理由になるとの校則は存在しない。教師も周知しておらず、裁量権の乱用で違法だ」と主張している。

この高校の学則を調べてみると、「校長は、校規を乱し、訓戒にそむき、その本分に違反した生徒」を「退学」にできると定められていた。退学にできる場合として、「性行不良で改善の見込がないと認められる者」、「学力劣等で成業の見込がないと認められる者」、「正当な理由がなくて出席常でない者」、「学校の秩序を乱し、その他生徒としての本分に反した者」という4つの項目が定められていた。

このほか、「生徒心得」などは校長が別に定めると規定されていたため、「性的な行為」がそうした生徒心得などで禁止されているのか、弁護士ドットコムニュース編集部は高校側に問い合わせたが、「生徒のプライバシーに関わることなので、校則が存在するかどうかを含め、何もコメントできません」との回答だった。

一般論として、交際相手との性的行為があったことのみを理由に、高校が生徒を退学処分とすることは、法的に問題があるのだろうか。猪野亨弁護士に聞いた。

●「禁止する事項ではなく、教育の中で高校生に考えさせていく問題」

「あくまで一般論としての解説になりますが、高校3年の男子学生が交際相手との性的関係を持ったことのみを理由に、高校が生徒に対して退学処分をすることは違法で、処分は無効と判断される可能性があります」

猪野弁護士はこのように述べる。なぜだろうか。

「高校生の本分は学業ですが、さまざまな人たちとの関わりの中で成長し、その中に特定の異性と恋愛することも自然なことだと考えられます。

ただ、高校生であるがゆえに成人(社会人)と同様の関係を築くことができなかったり、まだ未熟さからくる失敗(適正な距離間がわからず相手を傷つけたり、無知から意図しない妊娠をしてしまうことなど)があったりするかもるかもしれません。

しかし、そうしたことがらは、そもそも禁止する事項ではなく、教育の中で高校生に考えさせていく問題です」

処分をするかどうか、高校に決める裁量はないのか。

「退学などの学校の懲戒処分は、基本的には、学校内の秩序を乱した生徒に対して加えられる制裁です。懲戒処分ができる範囲は、秩序を乱したという範囲に限定されると考えます。

そして、懲戒処分をするにあたっては一定の裁量があるとされています。この裁量の考え方は、『一定の幅の中で、どのような処分をするのか懲戒処分権者が決定してよい』とする考え方です。

裁量権の濫用というのは、今回のケースで言えば、『高校側に生徒を懲戒する裁量があったとしても、退学処分は、いくらなんでも裁量の範囲を逸脱している』という主張です。裁判所の判断の枠組みに合わせた主張といえるでしょう」

●「裁量権の範囲を逸脱する可能性」

性的行為を理由に生徒を退学処分にすることは、裁量の範囲内なのか。

「戦前なら男女交際の禁止など当然の扱いでしたが、現代において通用する価値観ではありません。

学校内で行われたとか、意図的に自分から吹聴しているとか校内秩序を乱す事情がない限り、そもそも、懲戒処分の対象になり得ないと考えられます。

しかも、いきなり退学処分ともなれば、学業の道を絶つ重大な処分であり、それが部活動であろうとも高校教育の一環ですから、そう簡単に奪ってはならないものです。

こうしたことから考えると、交際相手との性的行為を理由に退学処分にすることは、裁量の範囲を逸脱している可能性があると考えられます」

今回のケースで争われているのは、私立高校の処分だが、私立か公立かという点はポイントになるのか。

「私立高校であろうと事情は変わりません。

私立大学の退学処分が争われたケースで、学生が学外で政治活動を行ったことを理由に下した退学処分の有効性が争われた裁判がありました。『昭和女子大事件』と呼ばれる裁判です。

最高裁は1974年の判決では、私学には建学の精神があることなどを理由に、退学処分を有効としました。

しかし、現在でもこの判決の考えが妥当するとは思いません。政治活動を行った国家公務員が国家公務員法違反で起訴された事件で、無罪判決が2012年に最高裁で下されたという流れからも見て取れると思います。

男女の交際を禁止するというのが『建学の精神』というならば、そうした考えは現代では受け入れられないのではないでしょうか」

猪野弁護士はこのように述べていた。

(弁護士ドットコムニュース)

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