15408.jpg
オリンパス「不当配転」訴訟で原告敗訴 「まさか・・・」茫然自失の記者会見
2015年07月09日 19時16分

退職勧奨を拒否したところ、不当な配置転換を命じられたとして、精密機器メーカー「オリンパス」社員の石川善久さん(51)が、同社などを相手取り、配転先で働く義務がないことの確認と慰謝料の支払を求めていた裁判で、東京地裁は7月9日、原告の請求をすべて棄却する判決を下した。原告は控訴する意向だ。

判決後、東京・霞ヶ関の司法記者クラブで会見した石川さんは「まさか、原告の請求を棄却するというような判決になるとは全く思っていなかった。(勝訴したら会見で)しゃべろうと思って用意してきた内容が全く使えない・・・」と茫然とした様子で語った。

退職勧奨を拒否したところ、不当な配置転換を命じられたとして、精密機器メーカー「オリンパス」社員の石川善久さん(51)が、同社などを相手取り、配転先で働く義務がないことの確認と慰謝料の支払を求めていた裁判で、東京地裁は7月9日、原告の請求をすべて棄却する判決を下した。原告は控訴する意向だ。

判決後、東京・霞ヶ関の司法記者クラブで会見した石川さんは「まさか、原告の請求を棄却するというような判決になるとは全く思っていなかった。(勝訴したら会見で)しゃべろうと思って用意してきた内容が全く使えない・・・」と茫然とした様子で語った。

●退職勧奨を拒否したら、未経験の部署へ「配転」

「私は、あらゆる分野で30年近く製品開発を担当し、職務発明も、社内では私を超える人がいないくらいの発明数で、報奨金もいただいてきた。まさか自分が退職勧奨の対象になるとは思っていなかった。なぜ自分なのか、上司に聞いても『会社の総合的な判断』と言われるだけだった」

そう話す石川さんは1984年にオリンパスに入社して以来、医療用内視鏡やレーザー顕微鏡などの製品開発に携わってきた。2012年9月、同社が業績の低迷を理由に約100人の希望退職者を募集した際、石川さんは上司から「社内であなたの能力を活用する場はない」と、5度にわたって退職勧奨を受けた。拒否すると、2013年1月付けで、全く経験のない、社員教育を担当する新設部署への異動を命じられた。

さらに、奇妙だったのは、異動先の部署のチームリーダーが、内部告発の経験がある濱田正晴さんだったことだ。

濱田さんは、取引先の社員を引き抜こうとした上司の行動を内部通報した結果、畑ちがいの部署へ異動を命じられたため、会社を相手取って「配転無効」を求める裁判を起こし、勝訴した。その後、濱田さんは、再配転先として、新設された部署のチームリーダーに任命された。

しかし実際には、部下がいない名ばかりの「チーム」だとして、濱田さんは2012年11月、ふたたび配転無効を主張して提訴した。その2カ月後、「部下」として配属されたのが石川さんだったのだ。

そこで、石川さんは、自らの配転は、濱田さんとの「訴訟対策」であり、退職勧奨を拒否したことへの制裁であるとして、会社と人事担当者を相手取り、東京地裁に裁判を起こした。

●原告側代理人の弁護士「前代未聞の判決だ」

しかし、東京地裁の戸畑賢太裁判官は、会社側が退職勧奨対象者を選択するにあたって考慮したという2008年から2012年の石川さんの勤務評価をふまえ、「本件退職勧奨の目的、対象者としての認定基準及びこれに基づく人選には一定の合理性が認められるものと解するのが相当」だとした。

また、上司による退職勧奨についても「必ずしも執拗なものとはいえない」「退職の有無による諸々の有利不利を説明しつつ説得を行った」として、適法だと認めた。

さらには、配置転換そのものも問題はなく、「給与その他の待遇に特段の変化がある旨の事情についても主張立証はなく、本件配転命令が、原告に対して通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものとも認められない」とした。

石川さんらが主張した「訴訟対策」による配置転換だったことも「十分に裏付けるまでの証拠は見いだせない」と、違法性は認められなかった。

代理人の光前幸一弁護士は「前代未聞の判決。事件の概要でこちらが主張している事実を全て否定している」と判決に強く異議を唱えた。

光前弁護士によると、提訴後、オリンパスから石川さんに対して、退職勧奨と配置転換の無効を認めて解決金を支払う和解案の提示があったという。

「しかし、事実関係をきっちり裁判所が判断して、オリンパスの問題点を判決の中で示してほしいということで、(和解ではなく)判決になった。まさか、こんな判決が出るとは思っていなかったというのが、代理人としても率直なところだ。

非常にうすっぺらい、会社の言い分だけを書いた判決。控訴して、(原告側が主張する)事実を認定してもらい、正しい判断をしてもらおうと考えている」

(弁護士ドットコムニュース)

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る