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「反捕鯨のかたは入館できません」 クジラ博物館の対応は「憲法違反」なのか?
2014年06月06日 13時37分

「捕鯨のまち」「イルカ漁のまち」として知られる和歌山県太地町。この人口3000人あまりの小さな町が揺れている。観光施設「町立くじらの博物館」に入館拒否されたオーストラリア人女性らから、慰謝料約670万円を求める訴訟を起こされているためだ。

朝日新聞によると、このオーストラリア人女性はイルカ漁に反対する団体のメンバー。今年2月、博物館を訪れたとき、「反捕鯨のかたは入館できません」と書かれた紙を職員から示され、入館を拒否された。女性らは「(入館拒否は)憲法14条が禁じる人種差別にあたる」「思想・良心の自由も侵害している」と主張しているという。

一方、博物館長は「町の文化や財産、産業を守るため。差別ではない」と反論している、と報じられている。捕鯨・イルカ漁をめぐっては、賛成派と反対派の対立がエスカレートしがちといえるが、今回の問題をどう見ればよいのだろうか。日弁連憲法問題対策本部の委員をつとめる森一恵弁護士に聞いた。

「捕鯨のまち」「イルカ漁のまち」として知られる和歌山県太地町。この人口3000人あまりの小さな町が揺れている。観光施設「町立くじらの博物館」に入館拒否されたオーストラリア人女性らから、慰謝料約670万円を求める訴訟を起こされているためだ。

朝日新聞によると、このオーストラリア人女性はイルカ漁に反対する団体のメンバー。今年2月、博物館を訪れたとき、「反捕鯨のかたは入館できません」と書かれた紙を職員から示され、入館を拒否された。女性らは「(入館拒否は)憲法14条が禁じる人種差別にあたる」「思想・良心の自由も侵害している」と主張しているという。

一方、博物館長は「町の文化や財産、産業を守るため。差別ではない」と反論している、と報じられている。捕鯨・イルカ漁をめぐっては、賛成派と反対派の対立がエスカレートしがちといえるが、今回の問題をどう見ればよいのだろうか。日弁連憲法問題対策本部の委員をつとめる森一恵弁護士に聞いた。

●「精神的な自由」の問題は、厳格な検討が必要

「今回のケースでは、太地町が、『反捕鯨』の立場の外国人を対象として、入館を拒否しています。裁判所では、博物館が拒否した理由・目的と、拒否した手段の妥当性の2点が、厳格に検討されることになります」

「原告は、次の2点を主張しています。

(1)人種・信条による差別を禁止し、法の下の平等を保障した憲法14条に反するのではないか

(2)思想・良心の自由を保障した憲法19条に反するのではないか

これらは『精神的自由』と関連する問題になります」

精神的な自由は、誰にも保障されているので、入館拒否の理由にはならない気もするが・・・

「したがって、『町の文化や財産、産業を守るため』という入館拒否の理由が、本当に必要なものであったかどうかを吟味しなければなりません。

これは、私個人の意見ですが、この博物館が捕鯨の歴史や文化を展示していることから、『町の文化や財産、産業を守るため』という拒否した理由は、妥当なものだったと考えます」

●入館時の立ち入り方が争点のひとつ

では、拒否した方法・手段の妥当性については、どう考えるべきなのだろうか。

「『反捕鯨』の立場の外国人を対象として入館を拒否するという手段が、必要最小限度のものだったかどうか、判断しなければなりません。

ここでは、原告らが入館しようとした際の立ち入り方が問題となるでしょう。また、入館拒否以外の手段を取ることができなかったかどうかといった、個別具体的な事情を考慮して判断することになります」

確かに、たとえば普通の入館者として秩序を守って静かに入館したのと、捕鯨反対のプラカードを持ってシュプレヒコールをしていたのとでは、大きく判断が分かれそうだ。

「はい。これは、憲法問題を含む難しい問題です。意見が分かれるでしょうので、裁判所の判断が注目されます」

捕鯨問題では、国内でも様々な意見があるだろう。ただ今回は、捕鯨問題だけでなく、憲法の問題という視点も加えて裁判ウォッチしたいものだ。

(弁護士ドットコムニュース)

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