15487.jpg
ベネッセ「賠償金」は700億円以上にのぼる? 大規模「個人情報流出」の法的責任
2014年07月10日 13時25分

ベネッセホールディングスは7月9日、傘下のベネッセコーポレーションから、「進研ゼミ」などの顧客情報760万件が外部に漏えいしたことを発表した。データベースに保存されていた2070万件すべての顧客情報が流出した可能性もあり、衝撃が走っている。

ベネッセによると、今回流出したのは、同社の通信教育サービスを利用している顧客の郵便番号、住所、氏名(子どもと保護者)、電話番号、子どもの生年月日・性別だ。クレジットカード番号や成績情報などは流出していないという。

6月下旬、ベネッセにしか登録していないはずの個人情報にもとづき、他社によるダイレクトメール送信や電話勧誘が行われているというクレームが急増して、発覚に至った。社外から不正アクセスを受けた形跡がないことから、従業員以外の内部関係者が関与したとみられている。今のところ、金銭的な被害はないという。

個人情報が漏えいしてしまった人にとってはショッキングな話だが、ベネッセに対して、損害賠償を請求したら、認められるのだろうか。もし認められた場合、賠償額はどの程度になるのだろうか。清水陽平弁護士に聞いた。

ベネッセホールディングスは7月9日、傘下のベネッセコーポレーションから、「進研ゼミ」などの顧客情報760万件が外部に漏えいしたことを発表した。データベースに保存されていた2070万件すべての顧客情報が流出した可能性もあり、衝撃が走っている。

ベネッセによると、今回流出したのは、同社の通信教育サービスを利用している顧客の郵便番号、住所、氏名(子どもと保護者)、電話番号、子どもの生年月日・性別だ。クレジットカード番号や成績情報などは流出していないという。

6月下旬、ベネッセにしか登録していないはずの個人情報にもとづき、他社によるダイレクトメール送信や電話勧誘が行われているというクレームが急増して、発覚に至った。社外から不正アクセスを受けた形跡がないことから、従業員以外の内部関係者が関与したとみられている。今のところ、金銭的な被害はないという。

個人情報が漏えいしてしまった人にとってはショッキングな話だが、ベネッセに対して、損害賠償を請求したら、認められるのだろうか。もし認められた場合、賠償額はどの程度になるのだろうか。清水陽平弁護士に聞いた。

●1件あたり「1〜2万円」の慰謝料になる可能性が高い

「自分の個人情報を漏えいされたわけですので、漏えいされた人は、ベネッセに対して損害賠償請求の裁判を起こすことができます。問題は同社が支払う慰謝料がいくらになるのかでしょう。

参考になるのは、宇治市住民基本台帳データ漏えい事件(大阪高裁2001年12月25日判決)や早稲田大学名簿提供事件(最高裁第2小法廷2003年9月12日判決)、エステティックホームページ個人情報流出事件(東京高裁2007年8月28日判決)です」

これらの事件では、どれくらいの慰謝料が認められたのだろうか。

「それぞれ、損害賠償請求の裁判を起こした人に対して、慰謝料が認められました。1999年に宇治市の住民基本台帳のデータ約22万人分が流出した事件では、1件あたり1万5000円(慰謝料1万円、弁護士費用5000円)でした。

また、1998年に早稲田大学で行われた江沢民・中国国家主席(当時)の講演会の参加者名簿1400人分を大学側が無断で警察に提供した事件では、1件あたり慰謝料5000円が認められました。

高額だったのは、2002年にエステ大手TBCグループのホームページを通じて個人情報5万人分が流出した事件で、1件あたり3万5000円(慰謝料3万円、弁護士費用5000円)です。身体に関する情報は秘密にしておく必要性が高く、法的に強く保護すべきだということで、通常よりも高い慰謝料が認定されました。

今回漏えいしたのは、氏名、住所、電話番語、子どもの生年月日・性別といった情報で、身体に関する情報ではありません。この点を考慮すると、損害賠償請求をすれば、1件あたり1~2万円程度の慰謝料となる可能性が高いと思います」

では、ただ単に個人情報が漏えいしただけではなく、その個人情報にもとづいて高額商品を買わされるなど、何らかの金銭的な被害が生じた場合は、どうなのだろうか。

「今回は、クレジットカード番号や金融機関の口座情報などの漏えいは確認されていないようですが、これらの情報が悪用されて経済的な損害が発生した場合、その損害賠償も求めることができる可能性があります」

●1件500円の商品券だったとしても「38億円」の負担に

慰謝料を払うことになれば、流出した企業にとっては、大きな痛手になるのではないだろうか。

「現時点でも少なくとも760 万件あるということなので、仮に1件あたり1万円だとしても、ベネッセが負担する金額は760億円という莫大な金額になります。

ただし、これまでに発生した企業の個人情報流出のケースでは、お詫び状と500円程度の商品券などが配布されることで対応することが多かったようです。

その場合でも、仮に1件あたり500円とすれば、38億円+郵送費という巨額の支出が必要になりますね」

38億円だとしても、業績を揺るがしかねない巨額の負担になってしまいそうだ。

「今回の情報漏えいは、グループ社員以外の内部者が関与しているとされています。どんなに注意をしていても、不心得者がいると情報の保護を崩されてしまいます。

件数が非常に多く、対応も大変だと思いますが、漏えいルートを明らかにしてほしいところです」

今回の件では、警視庁が捜査に乗り出しており、刑事事件に発展する可能性もある。顧客への対応とともに、誰が、どのようにして情報を流出させたのかが注目されそうだ。

(弁護士ドットコムニュース)

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る