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出所者支援の現場に"予算削減"の波「存続が危ぶまれる」、更生保護連盟が法務省に緊急要望
2025年11月04日 17時25分
#再犯 #委託費 #更生保護 #出所者

刑務所を出た人たちを受け入れる施設への委託費が、国の予算不足で足りなくなっている問題で、「全国更生保護法人連盟」は、委託費を切り詰める国の方針を「到底受け入れがたい」として、法務省保護局長に対して財源の確保を求める緊急要望書を提出した。要望書は10月31日付。(弁護士ドットコムニュース・一宮俊介)

刑務所を出た人たちを受け入れる施設への委託費が、国の予算不足で足りなくなっている問題で、「全国更生保護法人連盟」は、委託費を切り詰める国の方針を「到底受け入れがたい」として、法務省保護局長に対して財源の確保を求める緊急要望書を提出した。要望書は10月31日付。(弁護士ドットコムニュース・一宮俊介)

●各地の施設から上がる不安や悲鳴

危機に直面しているのは、刑務所を出た出所者や、執行猶予付きの判決を受けた人たちが生活する「更生保護施設」や「自立準備ホーム」だ。

これらの施設は、帰る家や仕事がない人たちを一時的に受け入れ、宿泊や食事を提供し、就職活動を支援するなどして社会復帰を後押ししている。

しかし、多くの施設が運営資金として頼る国の委託費は、今年度の当初予算で前年度の約53億9200万円から8900万円減少。これを受けて、法務省は全国の施設に委託費を切り詰める方針を伝えた。現場からは、不安や悲鳴が上がっている。

この状況を踏まえて、全国102の更生保護施設が加盟する「全国更生保護法人連盟」の今福章二理事長が10月31日、法務省の吉川崇保護局長と面会し、方針を見直すよう求める要望書を手渡した。

●「処遇困難化の結果」を看過、「一律の安易な委託」と大きく誤解

連盟によると、法務省は10月9日付の「事務連絡」で、全国の更生保護施設などに対して、予算のひっ迫を理由に、委託の日数や内容を削減する方針を通知した。

これに対して要望書は、施設が「仮釈放者の3分の1強の受け皿」になっていることや、処遇の難しい人を積極的に支援して地域の安全・安心に貢献していることを説明。

そのうえで、委託日数の増加を「安易な委託」とみなす法務省の姿勢について、次のように反論している。

「委託日数の増が保護対象者の『処遇困難化の結果』であることを看過し、『一律の安易な委託』の表われとみなすという、大きな誤解に基づくものであると考えます」

画像タイトル 全国更生保護法人連盟が10月31日に、法務省保護局長に提出した緊急要望書

●「限界点を踏み越えようとしている」

更生保護施設の関係者の間ではもともと、「委託の期間や費用が十分でない」との声が根強い。今回の要望書も、次のように現場の実情をうったえている。

「予算上設定された委託日数と処遇現場で必要とされる最低限の委託日数の間にはそもそも乖離があり、その矛盾が等閑視(編集部注:しっかり対応せずに放っておくこと)されて年々深刻化し今に至るという事実を直視していいただく必要があります」

さらに連盟は、今回の方針を「限界点を踏み越えようとするものであり、到底受け入れがたい」と強調。「あくまでも、社会復帰・再犯防止を図るために、必要十分な保護のための委託を行うという大原則に立ち返って」とうったえた。

要望書はまた、今回の事態の根本的な原因について「令和7年度当初予算において必要十分な委託延べ件数に見合う予算が確保されなかったことに遡ります」と指摘。「予算の確保がなされなければ、今後存続が危ぶまれる事態も招きかねない」としたうえで、最後にこう求めている。

「今年度執行において少なくとも昨年度並み水準の委託内容を維持するのに十分な財源を緊急に確保していただきますようお願いいたします」

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