入管職員に弁護士活動を組織的に妨害されたとして、難民申請中のカメルーン人の代理人をつとめる弁護士が、国を相手取り、国家賠償法に基づいて損害賠償など660万円を求める訴訟を東京地裁に起こした。提訴は11月7日付。
●不許可処分の連絡をされなかった
訴状によると、カメルーン国籍の男性は、母国の英語圏地域で続く政府による迫害を逃れるため、10月7日に羽田空港に到着した。
しかし入国を拒否されて、東京入管羽田港空港支局に留め置かれた。この際、外部との連絡手段である携帯電話を没収されたという。
原告の吉田幸一郎弁護士(第二東京弁護士会)らは、男性の家族からの依頼を受けて、所在確認や面会を求めたが、入管側は「個人情報」を理由に拒否。その後、ようやく面会が実現し、代理人に就任した。
男性の難民認定申請も受理されたが、わずか数日で不許可処分となった。ところが代理人にはその連絡がなく、男性はそのまま送還されそうになったという。
●入管職員の行為は「組織的で悪質なものだ」
原告側は、入管職員が(1)難民認定申請書の交付を意図的に遅らせたうえで不許可処分を出した、(2)異議申立てや取消訴訟などの法的手段を取る機会を奪う目的で、弁護士との連絡を遮断して送還手続を進めた──と主張。
これらの行為が、弁護士の職務遂行を尊重せず、弁護士活動を妨害されない自由を侵害する「組織的」かつ「悪質」な人権侵害だとして、国に対して慰謝料600万円と弁護士費用60万円の計660万を求めている。