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人体を冷凍保存する「コールドスリープ」、記憶の移植や財産管理の法的問題は?
2017年02月18日 07時42分

医療技術が発達した「未来」で治療を受けようと、遺体を冷凍保存するサービスが海外で始まっている。「人体冷凍保存(クライオニクス)」といい、すでにアメリカやロシアなど、世界で200体以上が保存されているという。中には日本人もいるそうだ。

小学館の月刊誌「SAPIO」2017年2月号が紹介している。記事によると、対象となるのは「生体」ではなく「遺体」。登録者が死亡すると、細胞を傷つけないよう血液を不凍液に入れ替え、液体窒素で冷凍するのだそうだ。全身を保存するプランと、切断した頭部のみのプランの2つがあるという。

まだ冷凍保存から生き返った人間はいないが、いずれ、SFの「コールドスリープ(冷凍睡眠)」が実現するかもしれない。この人体冷凍保存サービスは、日本でもできるのだろうか。小林正啓弁護士に聞いた。

医療技術が発達した「未来」で治療を受けようと、遺体を冷凍保存するサービスが海外で始まっている。「人体冷凍保存(クライオニクス)」といい、すでにアメリカやロシアなど、世界で200体以上が保存されているという。中には日本人もいるそうだ。

小学館の月刊誌「SAPIO」2017年2月号が紹介している。記事によると、対象となるのは「生体」ではなく「遺体」。登録者が死亡すると、細胞を傷つけないよう血液を不凍液に入れ替え、液体窒素で冷凍するのだそうだ。全身を保存するプランと、切断した頭部のみのプランの2つがあるという。

まだ冷凍保存から生き返った人間はいないが、いずれ、SFの「コールドスリープ(冷凍睡眠)」が実現するかもしれない。この人体冷凍保存サービスは、日本でもできるのだろうか。小林正啓弁護士に聞いた。

●「死体遺棄罪」や「死体損壊罪」に

「刑法上、人の死とは、『心臓の鼓動と自発呼吸の不可逆停止及び瞳孔反応などの消失』といういわゆる『三兆候』を総合判断して決められます。この段階を過ぎたら死体となり、その前なら生きていることになります。

死体については、適切な埋葬を行わなければ『死体遺棄罪』が成立します。遺体を冷凍するわけですから、コールドスリープも例外ではありません。頭部だけを保存するプランもあるようですが、頭部を切断すれば『死体損壊罪』になります」

どうやら、現在の日本の法律では「人体冷凍保存」サービスは展開できないようだ。では、SFのように生きたまま冷凍した場合はどうだろうか?

「生きているうちに冬眠状態にしたうえ、生命の三兆候を極限まで低下させて保存すれば、刑法上の罪には問われないかもしれません。

もっとも、コールドスリープが失敗して死亡すれば、担当した医師らは、『業務上過失致死罪』や、場合により『殺人罪』を問われることになります」

●現行法だと、せっかく目覚めても「無一文」の可能性が…

コールドスリープが合法化された場合、どんな法律問題が出てくるだろうか?

「SFの中には、体は捨てて、脳内記憶だけをコンピューターに保存するというものもあります。そんな技術が実現した場合、本人の同意があれば、違法とはいえないでしょうね。

もっとも、脳内記憶は個人情報の塊なので、記憶の移植は『個人情報保護法』をはじめとする規制法規に従う必要があります」

持っていた財産はどうなるのだろうか?

「相続との関係も問題になります。まず、死亡後冷凍保存した場合は、死亡時に相続が発生します。もし、その後に生き返っても、現行法上、相続が無効になるとはいえないと考えます。現行法は、死亡後生き返ることは想定していないからです。

もっとも、民法32条2項は、『失踪宣告によって財産を得た者は、その取消によって権利を失う』と規定し、現存利益の返還義務を負わせているので、その類推適用はあるかもしれません」

では、生きたまま冷凍保存した場合は?

「生前に冷凍保存した場合は、相続が発生しません。この場合、家族が勝手に相続手続を進めたとしても、本人が目覚めたら、所有権等に基づく返還請求を行うことができます。

もっとも、目覚めるのが数十年後ということになると、返還請求権が時効消滅したり、取得時効が成立してしまうことになりますね。これを防ぐためには、コールドスリープ前に、弁護士に財産管理を依頼しておく必要があります。ただし、管理にも費用がかかりますから、目覚めたころには全財産が弁護士費用に消えていた、ということがないとも限りません。

脳内情報だけコンピューターにコピーした場合は、死亡の事実は明らかなので、遺体の埋葬が必要ですし、相続も発生します。したがって、もし、意識だけがコンピューターに残るとすれば、その意識は、無一文になってしまいます」

せっかく目覚めても、お金がなくて途方に暮れてしまう可能性があるとは…。どうやら、コールドスリープが実現するためには、科学技術や医療だけでなく、新たな法律問題も考える必要があるようだ。

(弁護士ドットコムニュース)

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