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成人年齢引き下げで「18、19歳」へのAV出演強要が増える? 販売差し止めが困難になる懸念
2018年02月07日 09時50分

1月22日から始まった通常国会。審議が見込まれるトピックの中に、18歳への「成人年齢の引き下げ」がある。「18歳選挙権」に伴い、民法や関連法を改正し、年齢を合わせてしまおうという趣旨だが、成立すれば、消費者被害が増えると言われている。

未成年者による契約は、保護者などの同意がない場合、取り消しが可能(民法5条)。しかし、成人年齢が引き下げられると、抑止力がなくなり、対象から外れた18、19歳が悪徳業者に狙われる可能性が高まる。

政府は、消費者契約法を改正して対応する見通し。不安をあおるなど、合理的な判断ができない状況を悪用した契約は、取り消せるようにするという。ただし、消費者庁は「消費者一般のルールであって、18、19歳への特別な対応というところまでは考えていない」としている。

1月22日から始まった通常国会。審議が見込まれるトピックの中に、18歳への「成人年齢の引き下げ」がある。「18歳選挙権」に伴い、民法や関連法を改正し、年齢を合わせてしまおうという趣旨だが、成立すれば、消費者被害が増えると言われている。

未成年者による契約は、保護者などの同意がない場合、取り消しが可能(民法5条)。しかし、成人年齢が引き下げられると、抑止力がなくなり、対象から外れた18、19歳が悪徳業者に狙われる可能性が高まる。

政府は、消費者契約法を改正して対応する見通し。不安をあおるなど、合理的な判断ができない状況を悪用した契約は、取り消せるようにするという。ただし、消費者庁は「消費者一般のルールであって、18、19歳への特別な対応というところまでは考えていない」としている。

●「18、19歳というだけで取り消しに応じてもらえたのに」

法改正によって懸念される被害の中には、アダルトビデオ(AV)への出演強要問題も挙げられる。

「ブラックバイトなど、若年層の知識の乏しさにつけこんだ被害は多い。18、19歳への法教育などが劇的に進んだわけでもないのに、どうして消費者被害が起こりやすくするのか」

そう指摘するのは、AV強要問題に取り組む伊藤和子弁護士。法改正によって、被害が増えることを懸念している。

AV強要問題では、複数の関係者が若者を取り囲み、契約書にサインさせてしまうなどの被害が報告されている。しかし、密室の上、契約書があるため、強要の立証は容易ではなく、解決に時間もかかる。

そんなときでも、当事者が18、19歳なら、基本的に販売差し止めや削除に応じてもらえると伊藤弁護士は話す。これまで複数のケースにかかわってきたという。

たとえば、子役経験のある女性の事例。芸能界に残るため必死になっていた女性は、ある有力者を紹介される。しかし、その人物が持ち込んだ仕事こそがAVだったという。女性は言いくるめられ、AVに出演してしまう。また、別の女性はモデルの撮影に応募したところ、実際はAVの撮影で、やむなく契約書にサインしてしまったという。いずれも未成年だったため、販売を差し止めてもらうことができた。

「取り消し権があるのとないのとではハードルが違う。(成人年齢が引き下げられれば)業界も応じてくれなくなるかもしれない」(伊藤弁護士)

●業界も取り消し権意識…法改正でより若い層がスカウト対象に?

NPO法人のライトハウスとPAPS(ポルノ被害と性暴力を考える会) には、2017年だけで計99件の相談があったが、そのうち2〜3割程度は18、19歳時に業界側から声をかけられているという。

「社会経験の乏しさにつけこむような勧誘が多い。契約取り消しを避けるため、10代のうちに声をかけて、20歳になるまで待って契約するケースもある。成人年齢が引き下げられれば、業界側はより若い層に接触してくる可能性もある」(女性相談員)

経験不足などにつけこまれ、不本意な思い、つらい思いをする人は最小限に抑えなくてはならない。法案が提出されれば、AV強要問題に限らず、18、19歳がどこまで保護されるかを確認する必要がありそうだ。

(弁護士ドットコムニュース)

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