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日本の「過労死」から世界の「KAROSHI」へ…撲滅に奔走して30年…弁護団が書籍刊行
2022年11月25日 19時55分

過労死問題に取り組む全国の弁護士でつくる「過労死弁護団全国連絡会議」が、これまでの過労死の裁判例や被害事例などをまとめた書籍「過労死」(旬報社)を11月28日、出版する。

本書では、グローバリゼーションが日本の過労死問題を世界的に拡大させているとして、その根絶のための提言をしている。

編著者の1人で、連絡会議の代表幹事である川人博弁護士は11月25日、東京・霞が関で記者会見を開き、「サッカーW杯が開催され、世界的な熱狂のもとプレーされていますが、その陰では、労働者が酷暑の労働環境下で長時間労働した結果、多数亡くなったという報告があります。労働現場を直視して、もっとこの問題を知ってほしいです」と訴えた。

過労死問題に取り組む全国の弁護士でつくる「過労死弁護団全国連絡会議」が、これまでの過労死の裁判例や被害事例などをまとめた書籍「過労死」(旬報社)を11月28日、出版する。

本書では、グローバリゼーションが日本の過労死問題を世界的に拡大させているとして、その根絶のための提言をしている。

編著者の1人で、連絡会議の代表幹事である川人博弁護士は11月25日、東京・霞が関で記者会見を開き、「サッカーW杯が開催され、世界的な熱狂のもとプレーされていますが、その陰では、労働者が酷暑の労働環境下で長時間労働した結果、多数亡くなったという報告があります。労働現場を直視して、もっとこの問題を知ってほしいです」と訴えた。

●30年経っても解決しない過労死

本書は2部構成となっており、第1部では「過労死と過労自殺の実例」として、世界的企業であるトヨタで起きた事例などを紹介している。また、電通の高橋まつりさんの母親である高橋幸美さんなど、過労で家族を亡くした人たちの声も載せている。

第2部では、「過労死と過労自殺の分析」として、精神科医の天笠崇さんなど専門家や弁護士らが、なぜ過労死が起きてしまうのか、さまざまな視点から分析。解決への糸口を提言している。

本書が出版されたきっかけは、1991年に弁護団が初めて刊行した「KAROSHI国際版」(英語)だった。世界に向けて日本の過労死問題の実態を訴えた本で、今回、約30年ぶりの刷新となった。日本語版だけでなく、英語版も同時に発売される。

画像タイトル 書籍「過労死」を刊行した川人弁護士(右)と須田弁護士(2022年11月25日、弁護士ドットコム撮影)

川人弁護士は会見で、その目的を次のように話した。

「日本における過重労働・ハラスメントによる疾病、死亡は依然として多数発生しており、30年経っても解決していません。特に若い世代や女性の過労死や過労自殺は増えています。あらためて、世界的日本の過労死の実態を発信するためにこの本をつくりました」

また、同じく弁護団のメンバーである須田洋平弁護士も「ビジネスと人権の問題が世界で急速に広まっている」として、次のように語った。

「(国連の)社会権規約第7条は、公正かつ良好な労働条件を享受する権利を定めており、人間として尊厳が守られた形での労働の権利が含まれています。過労死や過労自殺をなくすことは、国際人権法上の責務でもあります」

過労死弁護団全国連絡会議は、過労死110番全国一斉相談が始まった1988年10月に結成された。以後、過労死110番ネットワークや、過労死家族の会、過労死防止学会などと連携しながら、過労死や過労自殺の労災認定や訴訟、啓蒙活動など、さまざまな側面から問題に取り組んでいる。

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