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「クラス全員皆勤」は美談か? 「病気でも出席奨励」は違法でないか
2013年03月27日 16時01分

卒業シーズンのいま、学校では「皆勤賞」の表彰が行われるところもある。福岡県の県立筑紫高校では、3年5組がクラス全員で1年間の皆勤を達成。高校側は、このクラスに特別皆勤賞を贈ったと報道された。

記事によると、受賞したのは3年生の男子ばかり36人の理系クラス。昨年4月に担任教諭が「全員で無欠席を目指そう」と呼びかけたことを契機に、「クラス全員皆勤」に挑戦。高熱やケガで欠席しそうになった生徒もいたが、公欠を除いて全員が1日も欠かさず登校したという。クラス委員長のある生徒は「男子ばかりなので、『絶対に休むな』と言いやすかった」と話しているそうだ。

一見すると、微笑ましい青春エピソードだが、ネット上では「インフルエンザの集団感染でも起きたらどう責任取るつもりだ」「社畜予備軍」などと否定的にとらえる声もある。また「教師が皆勤を強いるようなことは体罰では?」「もし休んだらイジメにあうのでは?」と、教師の姿勢を問題視する意見も見られた。

はたして、ことさらに「皆勤」を奨励したり、なかば強制に近い形で出席を求めることは法的に問題ないのだろうか?中島繁樹弁護士に聞いた。

●生徒には授業出席の義務がある

まず中島弁護士は、生徒には授業に出席する義務があるという大前提について、次のように説明する。

「学校というところは、教室での授業という形式で教育をすることを目的としていますので、生徒が与えられたすべての授業に出席することを義務づけられることは当然である、ということになります。

しかし他方、生徒は病気をしたり事故にあったりして授業出席がかなわないことがありますし、身内の不幸に際し服喪のため授業を欠席することが許容されています。このような欠席を学校が許さないということは考えられません」

●皆勤出席を奨励する意味

このように述べたうえで、今回の「クラス皆勤賞」の意味について、中島弁護士は次のように語る。

「授業出席の義務はあっても、現実には生徒が勝手に出席を怠けることがしばしばあります。学校としては、これをどのようにして防止するか、というのが焦点となります。

この点、欠席者を処罰するという方法をとることは困難です。正当な欠席かどうかについて、明確な証拠を収集することは難しいことだからです。逆に皆勤者に賞を与えることの方が一般的には容易です。しかし一人一人の生徒にしてみれば、皆勤する者が大半という中で皆勤を表彰されても、普通は嬉しくも何ともないでしょう。

そこで、この本来個人的な事柄である皆勤をクラス全体の団体の皆勤という形にして、いわば個人競技を団体競技に変えてクラス対抗のゲームにしたのが、この『クラス全員皆勤表彰』というものです」

●クラス全員の皆勤は「ゲームの結果」にすぎない

では、この「クラス皆勤賞」をどう評価すればいいのだろうか。

「クラス対抗の勝ち負けを競うゲームをやる感覚で、目的を達したクラスに賞を与えることにしてゲームの競争心を刺激する、というやり方は、おもしろいやり方だと思われます。

しかし、これとても、卒業というクラス解消を目の前にひかえたそのクラスに、紙1枚の表彰状が与えられるということだけのことに対して、生徒たちがいかほどの興味をそそられるか、大人のさめた目で見れば、その効果の程は疑問でしょう」

このように分析したうえで、中島弁護士は次のようにまとめている。

「この団体ゲームが実行されるときでも、本当に病気になった人が欠席するのは当然です。病気をおして出席することを強要するバカなクラス委員長はいないでしょう。

クラス全員の皆勤というのは、病欠者も忌引者もいないという幸運の条件のもとでようやく勝利する、ゲームの結果にしかすぎません。たまたま病気か忌引で欠席した生徒が他の生徒から白眼視されるなどの弊害はないと思われます。

クラス全員皆勤の表彰が法的に許容されるかどうかという法律問題は、生じる余地はないようです」

ネットで論議を呼んだ「クラス皆勤賞」だが、一種のゲームととらえれば、声を荒げて問題にするようなことではないのかもしれない。

(弁護士ドットコムニュース)

卒業シーズンのいま、学校では「皆勤賞」の表彰が行われるところもある。福岡県の県立筑紫高校では、3年5組がクラス全員で1年間の皆勤を達成。高校側は、このクラスに特別皆勤賞を贈ったと報道された。

記事によると、受賞したのは3年生の男子ばかり36人の理系クラス。昨年4月に担任教諭が「全員で無欠席を目指そう」と呼びかけたことを契機に、「クラス全員皆勤」に挑戦。高熱やケガで欠席しそうになった生徒もいたが、公欠を除いて全員が1日も欠かさず登校したという。クラス委員長のある生徒は「男子ばかりなので、『絶対に休むな』と言いやすかった」と話しているそうだ。

一見すると、微笑ましい青春エピソードだが、ネット上では「インフルエンザの集団感染でも起きたらどう責任取るつもりだ」「社畜予備軍」などと否定的にとらえる声もある。また「教師が皆勤を強いるようなことは体罰では?」「もし休んだらイジメにあうのでは?」と、教師の姿勢を問題視する意見も見られた。

はたして、ことさらに「皆勤」を奨励したり、なかば強制に近い形で出席を求めることは法的に問題ないのだろうか?中島繁樹弁護士に聞いた。

●生徒には授業出席の義務がある

まず中島弁護士は、生徒には授業に出席する義務があるという大前提について、次のように説明する。

「学校というところは、教室での授業という形式で教育をすることを目的としていますので、生徒が与えられたすべての授業に出席することを義務づけられることは当然である、ということになります。

しかし他方、生徒は病気をしたり事故にあったりして授業出席がかなわないことがありますし、身内の不幸に際し服喪のため授業を欠席することが許容されています。このような欠席を学校が許さないということは考えられません」

●皆勤出席を奨励する意味

このように述べたうえで、今回の「クラス皆勤賞」の意味について、中島弁護士は次のように語る。

「授業出席の義務はあっても、現実には生徒が勝手に出席を怠けることがしばしばあります。学校としては、これをどのようにして防止するか、というのが焦点となります。

この点、欠席者を処罰するという方法をとることは困難です。正当な欠席かどうかについて、明確な証拠を収集することは難しいことだからです。逆に皆勤者に賞を与えることの方が一般的には容易です。しかし一人一人の生徒にしてみれば、皆勤する者が大半という中で皆勤を表彰されても、普通は嬉しくも何ともないでしょう。

そこで、この本来個人的な事柄である皆勤をクラス全体の団体の皆勤という形にして、いわば個人競技を団体競技に変えてクラス対抗のゲームにしたのが、この『クラス全員皆勤表彰』というものです」

●クラス全員の皆勤は「ゲームの結果」にすぎない

では、この「クラス皆勤賞」をどう評価すればいいのだろうか。

「クラス対抗の勝ち負けを競うゲームをやる感覚で、目的を達したクラスに賞を与えることにしてゲームの競争心を刺激する、というやり方は、おもしろいやり方だと思われます。

しかし、これとても、卒業というクラス解消を目の前にひかえたそのクラスに、紙1枚の表彰状が与えられるということだけのことに対して、生徒たちがいかほどの興味をそそられるか、大人のさめた目で見れば、その効果の程は疑問でしょう」

このように分析したうえで、中島弁護士は次のようにまとめている。

「この団体ゲームが実行されるときでも、本当に病気になった人が欠席するのは当然です。病気をおして出席することを強要するバカなクラス委員長はいないでしょう。

クラス全員の皆勤というのは、病欠者も忌引者もいないという幸運の条件のもとでようやく勝利する、ゲームの結果にしかすぎません。たまたま病気か忌引で欠席した生徒が他の生徒から白眼視されるなどの弊害はないと思われます。

クラス全員皆勤の表彰が法的に許容されるかどうかという法律問題は、生じる余地はないようです」

ネットで論議を呼んだ「クラス皆勤賞」だが、一種のゲームととらえれば、声を荒げて問題にするようなことではないのかもしれない。

(弁護士ドットコムニュース)

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