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チーズアレルギーで英13歳死亡、原因は同級生? 日本でも悲しい事故、判例を探る
2018年10月16日 09時39分

イギリスで驚きのニュースが報じられた。乳製品などに重度のアレルギーを持つロンドンの男子中学生(当時13)がアレルギー反応により死亡。原因は別の生徒から服の中にチーズを入れられたことだという。

9月19日のインディペンデント紙によると、事件が起きたのは2017年6月で、同い年の男子生徒が殺人未遂で逮捕されている。ただし、起訴はされておらず、現在も調査が進んでいるという。

日本でもアレルギー源を使ったいじめや悪ふざけは十分に考えられる。また何らかの理由で意図せず、アレルギー源を摂取してしまうこともあるだろう。同様の事件や事故が起こった場合、どんな法的な問題になるのか。過去の事例をもとに、佐藤光子弁護士に聞いた。

イギリスで驚きのニュースが報じられた。乳製品などに重度のアレルギーを持つロンドンの男子中学生(当時13)がアレルギー反応により死亡。原因は別の生徒から服の中にチーズを入れられたことだという。

9月19日のインディペンデント紙によると、事件が起きたのは2017年6月で、同い年の男子生徒が殺人未遂で逮捕されている。ただし、起訴はされておらず、現在も調査が進んでいるという。

日本でもアレルギー源を使ったいじめや悪ふざけは十分に考えられる。また何らかの理由で意図せず、アレルギー源を摂取してしまうこともあるだろう。同様の事件や事故が起こった場合、どんな法的な問題になるのか。過去の事例をもとに、佐藤光子弁護士に聞いた。

●刑事ならアレルギーに対する認識がポイントに

――日本で刑事事件となった例はありますか?

「アレルギー物質を無理やり服の中に入れたり、食べさせたりして日本で刑事事件になった事例は聞いたことがありません。

アレルギーのもととなる物質はだれにとっても危険な物質というわけではありません。日本で傷害や殺人、傷害致死などの犯罪となるとすれば、被害者がその物質に対してアレルギー反応を示すことや、その程度について犯人が認識していたり、認識できる可能性があったりすることが必要となります」

ーー故意の有無が問題になってくるのですね。

●過去の民事訴訟では、予見・回避可能性などが争われた

――被害者の持つアレルギーについての認識は、民事でも争点になるかと思います。過去にどんな例があったのでしょうか?

「民事事件では、学校給食でそばを食べた小学生が、そばアレルギーによる喘息発作のため死亡した事故が有名です(1988年)。両親が担当教諭と市教育委員会に対して損害賠償を求め提訴しました。

この事故では、担任は児童の症状を知っており、そばを食べないよう注意しています。しかし、児童が食べてしまったため、家族に連絡したうえで早退させました。その際、養護教員には相談しませんでした。児童は帰り道に嘔吐し、気管を詰まらせて窒息死しています。

このケースでは、担当教諭と市教育委員会に過失があるかどうか、予見可能性と回避可能性が争点となりました。

裁判所は、そばアレルギーを警告する書物や新聞報道などが多くあることなどから、市の教育委員会は、そばアレルギーの発症に関して情報を現場の教師に周知徹底させ、そばアレルギー症による事故の発生を未然に防ぐべき注意義務があり、当該教諭も事故の予見、回避可能性があったとし、双方の過失が認められました」

ーー学校ということもあるかもしれませんが、予見可能性は厳しく判断されているように見えますね。

●アレルギー反応との因果関係も問題となる

ーーほかにはどのような事例がありますか?

「この他にも、児童相談所が、卵等のアレルギーの児童に卵を含むちくわを食べさせ、児童が死亡した事故があります(2006年)。

両親が損害賠償を求め、一審では施設を管理する市に計約5000万円の支払いが命じられました。しかし、二審ではちくわを食べさせたことの過失は認められたものの、アレルギー反応以外の原因による死亡の可能性も否定できないとして相当因果関係が否定され、両親が逆転敗訴しています」

ーーそもそも、アレルギー反応が死因に結びついているかも争点になるんですね。

「食べ物以外でも、アレルギーが問題になることがあります。過去には、患者がアルコールに対するアレルギーを有することを知りながら、消毒のときに看護師がアルコール綿を使い、患者がショックで意識を失うという事故があり、損害賠償請求がなされたケース(結果は請求棄却)などもあります」

(弁護士ドットコムニュース)

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