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福島原発、生業訴訟で最高裁弁論 原告「私たちは人生を変えられてしまった」 6月に判決
2022年04月26日 11時52分

東京電力福島第一原発事故当時、福島県内や隣県に住んでいた住民らが、国や東京電力に対し、損害賠償や原状回復を求める集団訴訟「地域を返せ、生業を返せ!福島原発訴訟(生業訴訟)」の弁論が4月25日、最高裁第二小法廷で開かれた。

東電の責任をめぐっては2022年3月、最高裁第二小法廷がすでに東電の上告を退けているため、残されている争点は国の責任のみとなっている。

国の責任については、最高裁に係属中の同種の集団訴訟において判断がわかれている。生業訴訟については、2審・仙台高裁が「対策を講じていれば事故は防げた」として国の責任を認めた。

原告側は、国の機関が地震に関して警告を発していたとされる「長期評価」の信頼性に言及。2002年の時点で「津波が来る」という警告があったにもかかわらず、原子力保安院(国)と東京電力は津波対策を取らなかったとして、規制権限を持つ国に責任があると訴えた。

一方、国側は、「(国が出した)長期評価には信頼性が低く、対策を指示しても事故を防げなかった」と主張。原告側の請求を棄却するよう求め、結審した。

生業訴訟の原告団長をつとめる中島孝さんは、弁論期日後に開かれた会見で、「国は全く反省をしていないから、たとえばトリチウム汚染水の海洋放出の方針でもわかるように、被害を繰り返す。断罪されないと、これからもやるだろう」と国の姿勢を厳しく批判した。(ライター・吉田千亜)

東京電力福島第一原発事故当時、福島県内や隣県に住んでいた住民らが、国や東京電力に対し、損害賠償や原状回復を求める集団訴訟「地域を返せ、生業を返せ!福島原発訴訟(生業訴訟)」の弁論が4月25日、最高裁第二小法廷で開かれた。

東電の責任をめぐっては2022年3月、最高裁第二小法廷がすでに東電の上告を退けているため、残されている争点は国の責任のみとなっている。

国の責任については、最高裁に係属中の同種の集団訴訟において判断がわかれている。生業訴訟については、2審・仙台高裁が「対策を講じていれば事故は防げた」として国の責任を認めた。

原告側は、国の機関が地震に関して警告を発していたとされる「長期評価」の信頼性に言及。2002年の時点で「津波が来る」という警告があったにもかかわらず、原子力保安院(国)と東京電力は津波対策を取らなかったとして、規制権限を持つ国に責任があると訴えた。

一方、国側は、「(国が出した)長期評価には信頼性が低く、対策を指示しても事故を防げなかった」と主張。原告側の請求を棄却するよう求め、結審した。

生業訴訟の原告団長をつとめる中島孝さんは、弁論期日後に開かれた会見で、「国は全く反省をしていないから、たとえばトリチウム汚染水の海洋放出の方針でもわかるように、被害を繰り返す。断罪されないと、これからもやるだろう」と国の姿勢を厳しく批判した。(ライター・吉田千亜)

●「私たちは人生を変えられてしまった」

画像タイトル 最高裁前で訴える原告・支援者たち。街宣車の上にいるのは原告団長の中島孝さん(2022年4月25日/筆者撮影)

弁論期日には、福島県からは県内の地域ごとに浜通りの相双発、福島(県北)発、郡山(県中)発、白河(県南)発、農民運動全国連合会(福島)の5台のバスが最高裁へと向かい、福島県内外から約350人が集まり、最高裁前では多くののぼりや横断幕が掲げられた。

この日、当日朝6時に福島市のバスで出発したという原告の女性は最高裁前の沿道で、「原発事故当時、小学生の子どもが2人いて、放射能の心配から、マラソン大会など、外で行われる行事に参加させなかったんです」と胸の内を語った。

原発事故によって生活環境の放射線量が高くなり、子どもたちを被ばくさせないために、できるだけ屋外活動をやめさせる判断をした保護者も多かった。

「今になると、みんなと同じ思い出がなく、かわいそうなことをしてしまったとも思うんです。あの時、子どもたちは何も言わなかったけれど、最近になって、『みんなとやりたかったよ』と言われました。私たちは人生を変えられてしまった。国に責任がないなんていうことはありません。元通りの暮らしを返してほしいです」(原告女性)

また、隣にいた原告の別の女性も、「被害を受けた一人ひとりに話を聞いたら、みんなに原発事故の物語があるのよ」と言葉を添えた。

●原発事故後「11年間で11回の引っ越し」

この日、弁論に立ったのは、福島県富岡町に住んでいた深谷敬子さん。記者会見では、「この11年の間に11回の引っ越しをしたんです。どれだけ大変な思いをしてきたか。そのことを裁判長にわかってほしかった」と話した。

深谷さんは、子育てをしながら美容師として浪江町や富岡町の店舗で40年間働いたあと、60歳の時に自宅に美容室を開いた。地域の客を迎え、自家菜園の野菜を一緒に食べ、楽しくおしゃべりをすることが生きがいだった。

原発事故が起きた時は仕事中で、ほとんど何も持たずに避難。その後、11回の引っ越しをしたが、どこに行っても気の休まる時はなかったという。避難中に70歳を迎え、新しい土地で家や店を作る気力もなかった。

「原発事故が奪っていった私の人生そのものを返してもらいたい。それが無理なら、事故がどうして起きたのか、誰の責任なのかをはっきりさせてもらいたいから、裁判に加わりました」(深谷さん)

3年前の控訴審では、仙台高裁の裁判官が、深谷さんの自宅や店を見にきた。その裁判官は、東電の過失だけではなく、国の責任を認める控訴審判決を出している。

●「裁判は大きな足掛かりだが、これで終わりではない」

画像タイトル 弁論後の会見の様子。左・深谷敬子さん、中央・中島孝さん、右・馬奈木厳太郎弁護士(2022年4月25日/筆者撮影)

この日の弁論で、原告側は、国の機関が地震に関して警告を発していたとされる「長期評価」の信頼性について言及した。

2002年の時点で「津波が来る」という警告があり、無視できるものではなかったにもかかわらず、原子力保安院(国)と東電は津波対策を取らなかったことについて、規制権限を持つ国に責任があると主張した。

原告団の代理人を務める馬奈木厳太郎弁護士は「人々の命や健康に関わる甚大な被害が起こりうることから、万が一にも事故は起きてはならないと、国に規制権限を委ねているのだから、適切に行使しなかった国には責任がある」と話す。

一方、国側は、「(国が出した)長期評価には信頼性が低く、対策を指示しても事故を防げなかった」と主張している。

原告団長の中島さんは、弁論期日後の会見で、「国は全く反省をしていないから、たとえばトリチウム汚染水の海洋放出の方針でもわかるように、被害を繰り返す。断罪されないと、これからもやるだろう」と責任を認めない国の姿勢を批判した。

「私たちの裁判が国の違法性を認めることと同時に、原告にとどまらない国民世論で、国の姿勢を改めさせていくことが求められていると思います。裁判は大きな足掛かりだけど、それだけでは終わらないだろうと思っています」(中島さん)

生業訴訟のほか、千葉・群馬・愛媛の3件が最高裁で争われている。最高裁での弁論は生業訴訟が3件目。6月に迎える判決の前に、5月16日の愛媛原発訴訟の弁論期日が控えている。

【筆者プロフィール】吉田 千亜(よしだ ちあ):フリーライター。福島第一原発事故後、被害者・避難者の取材を続ける。著書に『ルポ母子避難』(岩波新書)、『その後の福島──原発事故後を生きる人々』(人文書院)、『孤塁 双葉郡消防士たちの3・11』(岩波書店)、共著『原発避難白書』(人文書院)。

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