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「爆」の字が間違っていた「爆破予告」 わざと違う字を書いても犯罪なのか?
2013年11月29日 16時00分

10月中旬、岐阜県の小学校で、ガラス戸に「爆破する!!」という物騒な落書きがされているのが見つかった。しかしよく見ると、「爆破」の「爆」の字が間違っていた……。なんとも間の抜けた事件だが、学校はその日を臨時休校とし、教諭らが校内を警戒してまわったという。

文部科学省の「学年別漢字配当表」によれば、「爆」の字は小学校6年生までに習う漢字の中に入っていないため、漢字を知らない小学生によるいたずらの可能性も指摘された。だが、もし犯人がおとなで、「わざと違う字を書いた。『爆破する』とはひと言も書いていない」と主張したら……。

一見、犯罪予告のメッセージに見えるが、誤字のせいで厳密に読むと意味が通じないという場合、どういう扱いを受けるのだろうか。ただのジョークとして、犯罪にはならないのだろうか。元検事で刑事事件にくわしい野口敏郎弁護士に聞いた。

10月中旬、岐阜県の小学校で、ガラス戸に「爆破する!!」という物騒な落書きがされているのが見つかった。しかしよく見ると、「爆破」の「爆」の字が間違っていた……。なんとも間の抜けた事件だが、学校はその日を臨時休校とし、教諭らが校内を警戒してまわったという。

文部科学省の「学年別漢字配当表」によれば、「爆」の字は小学校6年生までに習う漢字の中に入っていないため、漢字を知らない小学生によるいたずらの可能性も指摘された。だが、もし犯人がおとなで、「わざと違う字を書いた。『爆破する』とはひと言も書いていない」と主張したら……。

一見、犯罪予告のメッセージに見えるが、誤字のせいで厳密に読むと意味が通じないという場合、どういう扱いを受けるのだろうか。ただのジョークとして、犯罪にはならないのだろうか。元検事で刑事事件にくわしい野口敏郎弁護士に聞いた。

●「一般人に恐怖心を生じさせる内容」はアウト

「脅迫とは、『生命・身体・自由・名誉または財産に対する害悪の告知』と定義されています。相手に伝える方法は、口頭や文書だけでなく、動作・身振りでもかまいません。落書きでも、立派な害悪の告知と言えます」

野口弁護士は「脅迫」の法律的な定義について、このように説明する。つまり、相手に危害を及ぼすというメッセージが伝われば、その手段は問われないようだ。内容についてはどうだろうか。

「告知される害悪は、『一般人に恐怖心を生じさせる内容』でなくてはなりません。一方で、告知を受けた人が、現実に恐怖心を感じたかどうかは問題ではありません」

そのメッセージの内容が脅迫にあたるかどうかは、一般人の感覚を基準にして判断され、受け取った人が特別恐がりだったり、肝が太かったりしても関係ないようだ。

その観点からすれば、今回の「落書き」は、どう判断されるだろうか。

「『爆破する!!』という落書きは、害悪の告知であり、一般人をして恐怖心を生じさせる内容と言えるでしょう。

『爆』の字が違っていることや、落書きであることからすると、一般人に恐怖心を生じさせるとは言えない場合もあるかもしれません。

しかし、本件では、学校も臨時休校となり、教諭らが校内を警戒して回ったとのことですから、たとえ『爆』の字が間違っていたとしても、一般人に恐怖心を生じさせるものであったと言えるでしょう」

他人が恐怖を抱くような内容であれば、誤字は問題とはならないようだ。そうすると、ジョークのつもりだったので、わざと間違えた、という言い訳は通じないのだろうか?

「ジョークと脅迫は両立するものです。

犯人が『ジョークだから、わざと字を間違えた』と弁明しても、それを見る人が文字通り『爆破する』という意味に理解するであろうことや、相手に恐怖心が生ずるかもしれないことを認識していれば、脅迫罪の犯意はあると言えます」

野口弁護士はこのように結論付けていた。

つまり、たとえ主観的にはジョークだったとしても、相手が怖がる可能性を認識していたらダメだ、ということだろう。どんな目的であったとしても、メッセージを受け取った相手が脅迫だと受け取るような、たちの悪い表現は避けたほうがよさそうだ。

(弁護士ドットコムニュース)

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