16364.jpg
「2万円のおせち」「ブランド洋服」社員の強制買取、買わなきゃだめ?
2016年12月07日 00時00分

勤務先で、商品を強制的に買取させられそうーー。そんな人たちから、弁護士ドットコムの法律相談には、様々な相談が寄せられています。

ある方は、「毎年、年末になると、ほぼ強制的に約2万円の『おせち』を会社から購入しなければなりません」と書きます。強制ではないものの「周りの方がみんな購入しているので、断りづらい雰囲気がすごく感じられます」といい、購入しないことで「不当な扱いをされたら…。なんて考えると買わざるを得ません」。

また、ある紳士ブランドショップで働く方は、「強制的に高額のそのブランドを買って着ろと言われました。職務規定にもそういう事は全く記載されていません」と言います。

このような、断りづらい雰囲気の中で、自社製品の強制的な買取を拒否することはできるのでしょうか?また、商品を明確に「買え」という場合だけでなく、暗黙の了解事項として買取をさせることは、どのような法的な問題があるのでしょうか?村松由紀子弁護士の解説をお届けします。

勤務先で、商品を強制的に買取させられそうーー。そんな人たちから、弁護士ドットコムの法律相談には、様々な相談が寄せられています。

ある方は、「毎年、年末になると、ほぼ強制的に約2万円の『おせち』を会社から購入しなければなりません」と書きます。強制ではないものの「周りの方がみんな購入しているので、断りづらい雰囲気がすごく感じられます」といい、購入しないことで「不当な扱いをされたら…。なんて考えると買わざるを得ません」。

また、ある紳士ブランドショップで働く方は、「強制的に高額のそのブランドを買って着ろと言われました。職務規定にもそういう事は全く記載されていません」と言います。

このような、断りづらい雰囲気の中で、自社製品の強制的な買取を拒否することはできるのでしょうか?また、商品を明確に「買え」という場合だけでなく、暗黙の了解事項として買取をさせることは、どのような法的な問題があるのでしょうか?村松由紀子弁護士の解説をお届けします。

●自社製品購入の義務はある?

会社が従業員に対し、何かを強制するには、法的な根拠が必要です。従業員が、自社製品を購入する義務はどこにもありません。従って、会社は「明示的」であれ、「黙示的」であれ、商品買取を強制することは出来ず、仮に強制された場合は拒否することができます。

買取義務がない以上、従業員が買取を拒否したことを理由に、不当な扱いをすることも許されません。

●購入を強制することの法的な問題は?

仮に会社が買取を強制した結果、商品を購入した場合は、会社の行為を「不法行為」として、民事上の損害賠償請求をすることができる場合があります。刑事上は「強要罪」が問題となりえますが、会社が実際に刑事責任を問われる可能性は少ないでしょう。

裁判例としては、会社側が、商品を理解するために商品を買えと従業員に迫り、従業員が一度は拒否したものの、最後はやむなく会社商品を購入したという事件(「美研事件」)があります。

裁判所は、会社側が立場を利用し従業員に不要な商品を購入させることは、「公序良俗に反し不法行為を構成する」と判断し、購入させられた商品代金について、損害賠償請求を認めました。

実際には、同僚がみな商品を購入しているという場合などでは、拒否しづらいケースもあると思います。しかし、その場合にも「拒否できる」という選択肢があることを意識して欲しいと思います。会社側には、強制が違法行為との認識がない可能性もありますので、職場有志で法律上の根拠をもとに、強制をやめるよう、かけあってみるなどの対応もできるのではないでしょうか。

(弁護士ドットコムライフ)

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る