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大阪駅の「顔認証追跡実験」が延期へ 「個人情報保護」の視点からみた問題とは?
2014年03月11日 13時32分

JR大阪駅の駅ビル内に多数のカメラを設置し、通行人の「顔」を撮影して人の流れを調べる実証実験が予定されていたが、市民団体などの反発によって、延期される見通しとなっている。本来ならば4月から、顔認証技術などを使った実験を開始する計画だったが、抗議を受けて、第三者委員会で実験手法などについて議論することになった。

実施主体である総務省の外郭団体「情報通信研究機構」が昨年発表した資料などによると、実験は人の流れを正確に把握し、災害発生時の安全対策などに利用するのが狙い。駅ビル内に設置された約90台のカメラで、通行人の顔を撮影し、その特徴をデータ化。別のカメラが同じ特徴を持った人物をとらえると、同一人物だと識別して、その動きを追跡していく仕組みだとされていた。

一方で、取得した通行人の映像は、その特徴をデータ化したあとですぐに消去するとしていた。また、その特徴データから元の映像が復元できないようにするなど、個人の特定につながらない処理を行うとしていた。しかし、大学教授などでつくる市民団体「監視社会を拒否する会」が実証実験の中止を要請するなど、反発する声があいついでいた。

このJR大阪駅での「顔認証追跡実験」については、第三者委員会でさまざまな角度から議論が行われることになりそうだが、個人情報保護の観点からはどんな論点があるのだろうか。小林正啓弁護士に聞いた。

JR大阪駅の駅ビル内に多数のカメラを設置し、通行人の「顔」を撮影して人の流れを調べる実証実験が予定されていたが、市民団体などの反発によって、延期される見通しとなっている。本来ならば4月から、顔認証技術などを使った実験を開始する計画だったが、抗議を受けて、第三者委員会で実験手法などについて議論することになった。

実施主体である総務省の外郭団体「情報通信研究機構」が昨年発表した資料などによると、実験は人の流れを正確に把握し、災害発生時の安全対策などに利用するのが狙い。駅ビル内に設置された約90台のカメラで、通行人の顔を撮影し、その特徴をデータ化。別のカメラが同じ特徴を持った人物をとらえると、同一人物だと識別して、その動きを追跡していく仕組みだとされていた。

一方で、取得した通行人の映像は、その特徴をデータ化したあとですぐに消去するとしていた。また、その特徴データから元の映像が復元できないようにするなど、個人の特定につながらない処理を行うとしていた。しかし、大学教授などでつくる市民団体「監視社会を拒否する会」が実証実験の中止を要請するなど、反発する声があいついでいた。

このJR大阪駅での「顔認証追跡実験」については、第三者委員会でさまざまな角度から議論が行われることになりそうだが、個人情報保護の観点からはどんな論点があるのだろうか。小林正啓弁護士に聞いた。

●駅で撮影された「顔の映像」は「個人情報」か?

「JR大阪駅での実証実験は、顔認証技術を使う計画だと報道されています。

顔認証技術とは、人間の顔をカメラで撮影し、人相を分析して数値化することによって、コンピューターによる解析や、他の画像との照合を行うものです。

現在の顔認証技術は、運転免許証の写真のような画像であれば、9割以上の確率で本人特定ができると言われています。近い将来には、防犯カメラ画像を解析して犯人の逃走経路を特定したり、購買行動を分析してマーケティングに用いたりすることが期待されています」

このように小林弁護士は説明する。大阪駅での実験については今後、第三者委員会で議論するということだが、集めたデータは、法律上の「個人情報」にあたるものなのだろうか?

「個人情報保護法上の『個人情報』とは、『生存する個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)をいう』と、定義されています」

大阪駅の実験の場合、カメラが撮影した映像は「個人情報」にあたるのだろうか。

「駅に設置されたカメラで撮影された『顔の映像』が、それによって撮影された人が誰なのかを識別できるなら、個人情報にあたります。

しかし、『顔の映像をもとに数値化されたデータ』は、人間が見て誰かを特定することは不可能です。もちろん、元の映像が保存され、それと数値データをヒモづけることができるといった状況であれば、数値データも個人情報にあたると解される余地があります。

しかし、『元の映像は直ちに破棄する』として、数値データが個人に結びつけられない運用を行うのであれば、現行法上、数値データを『個人情報』として扱うことは難しいように思います」

●「個人情報」にあたらなくても「法的保護は必要」

個人情報にあたらないならば、どう使っても問題ないということだろうか?

「いいえ。そうではありません。私はむしろ、そういったデータが個人情報にあたらない場合でも、法的な保護が必要だと考えています。

元の顔映像との結びつきが断ち切られていたとしても、そういったデータと、何らかの他の情報とを組み合わせることによって、特定個人が識別されてしまう可能性が否定できないからです。

また、人間の身体的特徴に関する情報である『生体認証情報』と、住所や氏名などの『個人情報』は、情報の性質が異なるので、必要な法的保護の程度や内容が違ってくるだろうと考えています」

どういうことだろうか?

「住所は引っ越せば変更できますし、氏名すら、生命の危険がある場合などには変更可能です。ところが、生体認証情報は、絶対に変更できません。そのため、一旦悪用されたり、悪人の手に渡ったりすれば、本人は危険から逃れられなくなります。したがって、個人情報よりも強い保護、たとえば『本人が同意しても、データの譲渡は無効』というようなルールが必要とされる場合もあるでしょう」

そういった情報は、これまでの「個人情報」とは違うのだろうか?

「日本には、プライバシーデータやパーソナルデータと呼ばれる情報を保護する特別法が、個人情報保護法しか存在しないので、なんでもかんでも『個人情報に含めてしまえ』という傾向があるように思えます。

こうした風潮は、保護すべき情報は何か、とか、情報の性質に照らしてどの程度保護すべきか、という議論を混乱させ、適正な情報流通とプライバシー権との調整を妨げることになると思います」

小林弁護士はこのように述べ、プライバシーや個人情報をめぐる法的枠組みを、大きく捉え直す必要性を示唆していた。

(弁護士ドットコムニュース)

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