16499.jpg
香川県「ゲームは1日60分」条例、違憲性への懸念 「不当な干渉」「憲法13条に違反」…作花弁護士が指摘
2020年03月19日 09時16分

香川県議会で3月18日、ゲームの利用時間を1日60分以内と定めた条例が賛成多数で可決、成立した。

4月1日に施行されるこの条例(「県ネット・ゲーム依存症対策条例」)は、子どものゲームやネット依存を防ぐため、18歳未満の子どもに1日60分(休日は90分)、利用時間を中学生以下は21時、それ以外は22時までの利用を目安とする。罰則はない。

この条例に対しては違憲性を問う声もあがっている。憲法問題に詳しい作花知志弁護士は、「個人の自己決定権などに対する不当な干渉であり、憲法13条に違反している」「多数決で押しつけることは、人権の基本的概念に反している」と厳しく批判する。

以下、作花弁護士に詳しく聞いた。

香川県議会で3月18日、ゲームの利用時間を1日60分以内と定めた条例が賛成多数で可決、成立した。

4月1日に施行されるこの条例(「県ネット・ゲーム依存症対策条例」)は、子どものゲームやネット依存を防ぐため、18歳未満の子どもに1日60分(休日は90分)、利用時間を中学生以下は21時、それ以外は22時までの利用を目安とする。罰則はない。

この条例に対しては違憲性を問う声もあがっている。憲法問題に詳しい作花知志弁護士は、「個人の自己決定権などに対する不当な干渉であり、憲法13条に違反している」「多数決で押しつけることは、人権の基本的概念に反している」と厳しく批判する。

以下、作花弁護士に詳しく聞いた。

●「不当な干渉」「憲法13条に違反している」

この条例は、憲法で保障されている個人の自己決定権、幸福追求権、プライバシー権に対する不当な干渉であり、憲法13条に違反していると考えています。

子がゲームをどのくらいの時間行うか、何時まで行ってよいかは、子とその親が決めるべき事柄であり、行政が決める事柄ではありません。その意味で、この条例は目的において合理性がないと考えます。

●飲酒や喫煙など「個人の自由を制限する法律」と何が違う?

なお、飲酒や喫煙などのように、国がいわば親のような立場となって、個人の自由を制限する法律は確かに存在します。

前提として、飲酒や喫煙が個人の身体にマイナスの影響を与えることは、科学的に解明されています。大人になれば、飲酒や喫煙は個人がコントロールできる範囲内と言えますが、子どもは未発達な存在であるため、個人ではコントロールできません。そのため、国が法律で未成年者の飲酒や喫煙などを規制しているのです。

それに対して、長時間ゲームを行うことによる身体的なデメリットは、科学的には未解明です。その前提が、飲酒や喫煙とは異なっていると考えます。

●「規制の対象が広がる可能性がある」

また、ゲームの時間を行政が決めるとなると、ではTVの時間も決めることができるのか、漫画を読む時間も決めることができるのか、など規制の対象となる可能性はどんどんと広がります。さらに香川県にとどまらず、他自治体へも波及する危険もあります。

憲法が人権を保障したのは、基本的には国や行政から個人を自由にするためです。憲法は必要以上に私生活への干渉を行政に許していないはずです。

元々、人権が保障されるとは「多数決では奪えないものがある」「多数決では決めることができないものがある」ことを意味します。

子がゲームをするのは1時間だけという方針が望ましいと考える家庭は、それを親子で話し合って採用すればいいだけです。行政が決めることを望んでいない家庭にまで、多数決で押しつけることは、人権の基本的概念に反していると思います。

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る