朝の通勤ラッシュ、電車の中で近くの人の足をヒールで踏んでしまったーー。
そんな相談が弁護士ドットコムに寄せられています。
相談者によると、乗っていた電車はつり革をつかめないほど混み合っており、電車が揺れた際に後ろに立っていた乗客の足をヒールで踏んでしまったといいます。
相談者はその場ですぐに踏んだことを謝罪し、相手からも「大丈夫です」と言ってもらったため、電車を降りて別れたそうです。
電車内で他人の足を踏んでしまうことはよく起きているようで、SNSにも似た経験が数多く投稿されています。
<電車で足を踏まれ爪割れた…>
<電車で隣の人の足を踏んでしまった>
今回の相談者は「医療費などを請求されるでしょうか?」と心配しています。
電車で他人の足を踏んでけがをさせた場合、治療費などを請求される恐れはあるのでしょうか?
また、刑事責任を問われる可能性はあるのでしょうか?
清水俊弁護士に聞きました。
●民事で損害賠償を請求される可能性あり
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ーー相手から治療費などを請求される可能性はある?
民事上は、過失で足を踏んだ行為について、不法行為に基づき損害賠償を請求される可能性があります。
暴行やケガの程度にもよりますが、損害としては慰謝料、治療費・通院交通費、休業を余儀なくされていれば休業損害などが考えられます。
しかし、相談者はその場で踏んだことについて謝り、相手も「大丈夫です」と言ったため、電車を降りて別れたということですから、互いの名前や住所もわからない状態だと思われます。
相手方が特定できない状況では損害賠償の請求はかなり難しいと言えます。
ただ、被害者の刑事告訴が受理され、警察が捜査権限を使って、目撃者の聞き込みや、駅の防犯カメラ、交通系ICの履歴などを捜査していくことで、被疑者である相談者にたどり着く可能性はあります。
そのような刑事事件の動きをきっかけとして、示談を含めた民事事件の解決につながることはままあります。
●「わざと」でなくても過失傷害罪の可能性
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ーー刑事事件として罪に問われる?
暴行罪や傷害罪はいわゆる故意犯と呼ばれるもので、「わざと」暴力をふるった場合の犯罪であるため、過失は含まれません。
今回の場合は、後ろに立っていた乗客の足を誤って踏んだという過失行為であるため、暴行罪や傷害罪にはなりませんが、それでケガを負わせた場合には、過失傷害罪に問われる可能性があります(刑法209条1項、30万円以下の罰金または科料)。
なお、過失傷害罪は、起訴するために被害者の告訴が必要な犯罪(親告罪)なので、被害者がどこまで積極的に動くのか、動いたとして警察がどこまで本腰を入れて捜査するかがポイントとなります。