16541.jpg
間違えて「漂白剤入り水」を提供した飲食店は、犯罪に問われるのか?
2013年04月03日 15時51分

大阪のミスタードーナツ「豊中駅前店」で3月下旬、高濃度の塩素の入った水が誤って提供され、その水を飲んだ客が体調不良を訴えるという問題が起きた。ミスタードーナツのホームページによると、殺菌用の漂白剤が混入した飲み水を誤って提供したという。

飲食店で働いたことがある人なら、仕事中に不注意からミスを犯し、客に迷惑をかけてしまった経験があるかもしれない。配膳している時に、飲みものを客の衣服にこぼしてしまったり、料理を別のテーブルに提供してしまったりなどだ。

では、飲食店のサービスで、客の健康に被害が出るかもしれない危険なミスを犯した場合、従業員や飲食店はどのような法的な責任を問われるのだろうか。足立敬太弁護士に聞いた。

●危険なミスを犯した従業員は、業務上過失傷害罪に問われる可能性も

足立弁護士は「主な法的責任として、行政上の責任、刑事責任、民事責任が考えられます」と指摘する。「行政上の責任として、飲食店に対して、保健所がおこなう営業停止処分が課せられる可能性があります」

たとえば、食中毒を起こした飲食店に対する営業停止処分などがこれにあたるそうだ。つぎに、足立弁護士は刑事責任について説明する。

「刑事上の責任としては、業務上過失傷害罪(刑法211条)の成立が問題になります。刑事責任が追及される対象は従業員(個人)だけで、飲食店(法人)は対象外です。業務上過失傷害罪で有罪になった場合の法定刑の範囲は、1ヶ月以上5年以下の懲役・禁錮、または1万円以上100万円以下の罰金となります。

このケースでは、幸いにして死者が出なかったこともあり、被害者も限られ、健康被害も限定的であることを考えると、被害弁償をきちんと行えば、罰金程度で済む可能性や不起訴で終わる可能性もあります」

●損害賠償などの民事責任は、従業員だけでなく、飲食店も問われる

危険なミスを犯した飲食店の従業員は、業務上過失傷害罪を問われる可能性があるということだ。では、民事責任はどうなるのだろうか。

「民事上の責任としては、損害賠償責任の有無や、その内容が問題になります。民事責任追及の対象は従業員だけでなく、飲食店も含まれます。内容としては、入院や通院にかかった費用や慰謝料、仕事を休んだ方には休業補償などが考えられます。

企業イメージの問題もありますし、先ほど述べた刑事責任の帰趨(きすう)にも関わりますので、迅速かつ誠実な対応が求められます」

今回のケースでは、ミスタードーナツは保健所からの指導を含め、再発防止につとめるということだが、同じような危険なミスをしたら、店だけではなく従業員個人も責任をとらなければならない場合もあるので、注意が必要だ。

(弁護士ドットコムニュース)

大阪のミスタードーナツ「豊中駅前店」で3月下旬、高濃度の塩素の入った水が誤って提供され、その水を飲んだ客が体調不良を訴えるという問題が起きた。ミスタードーナツのホームページによると、殺菌用の漂白剤が混入した飲み水を誤って提供したという。

飲食店で働いたことがある人なら、仕事中に不注意からミスを犯し、客に迷惑をかけてしまった経験があるかもしれない。配膳している時に、飲みものを客の衣服にこぼしてしまったり、料理を別のテーブルに提供してしまったりなどだ。

では、飲食店のサービスで、客の健康に被害が出るかもしれない危険なミスを犯した場合、従業員や飲食店はどのような法的な責任を問われるのだろうか。足立敬太弁護士に聞いた。

●危険なミスを犯した従業員は、業務上過失傷害罪に問われる可能性も

足立弁護士は「主な法的責任として、行政上の責任、刑事責任、民事責任が考えられます」と指摘する。「行政上の責任として、飲食店に対して、保健所がおこなう営業停止処分が課せられる可能性があります」

たとえば、食中毒を起こした飲食店に対する営業停止処分などがこれにあたるそうだ。つぎに、足立弁護士は刑事責任について説明する。

「刑事上の責任としては、業務上過失傷害罪(刑法211条)の成立が問題になります。刑事責任が追及される対象は従業員(個人)だけで、飲食店(法人)は対象外です。業務上過失傷害罪で有罪になった場合の法定刑の範囲は、1ヶ月以上5年以下の懲役・禁錮、または1万円以上100万円以下の罰金となります。

このケースでは、幸いにして死者が出なかったこともあり、被害者も限られ、健康被害も限定的であることを考えると、被害弁償をきちんと行えば、罰金程度で済む可能性や不起訴で終わる可能性もあります」

●損害賠償などの民事責任は、従業員だけでなく、飲食店も問われる

危険なミスを犯した飲食店の従業員は、業務上過失傷害罪を問われる可能性があるということだ。では、民事責任はどうなるのだろうか。

「民事上の責任としては、損害賠償責任の有無や、その内容が問題になります。民事責任追及の対象は従業員だけでなく、飲食店も含まれます。内容としては、入院や通院にかかった費用や慰謝料、仕事を休んだ方には休業補償などが考えられます。

企業イメージの問題もありますし、先ほど述べた刑事責任の帰趨(きすう)にも関わりますので、迅速かつ誠実な対応が求められます」

今回のケースでは、ミスタードーナツは保健所からの指導を含め、再発防止につとめるということだが、同じような危険なミスをしたら、店だけではなく従業員個人も責任をとらなければならない場合もあるので、注意が必要だ。

(弁護士ドットコムニュース)

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る