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CMに出てくる「赤ちゃんおむつモデル」は労働者なのか? 法規制はどうなってる?
2024年03月11日 10時14分

「娘がかわいい!おむつモデルにしたい」「赤ちゃんモデルに応募してみようかな」。ネット上には、わが子を雑誌やCMなどに出演させたいと考えている親の投稿が並ぶ。

芸能事務所のホームページでは、おおむね0から3歳までの赤ちゃんモデルの募集がみられる。企業や出演先などによって報酬額は異なるが、数十万円のギャラをもらえるようだ。

0歳児であっても、モデル業は立派な「お仕事」となる。そもそも、乳幼児は働いてもよいのだろうか。

「娘がかわいい!おむつモデルにしたい」「赤ちゃんモデルに応募してみようかな」。ネット上には、わが子を雑誌やCMなどに出演させたいと考えている親の投稿が並ぶ。

芸能事務所のホームページでは、おおむね0から3歳までの赤ちゃんモデルの募集がみられる。企業や出演先などによって報酬額は異なるが、数十万円のギャラをもらえるようだ。

0歳児であっても、モデル業は立派な「お仕事」となる。そもそも、乳幼児は働いてもよいのだろうか。

●労基法には「児童」に関する規定がある

労働基準法(労基法)では、原則として「児童」(満15歳に達した日以後の最初の3月31日までの者)を労働させることはできないとされている。

【労働基準法56条1項】 使用者は、児童が満15歳に達した日以後の最初の3月31日が終了するまで、これを使用してはならない。

しかし、例外的に児童を「労働者」として使用できる場合も定められている。13歳以上については一定の事業、13歳未満については「映画の製作または演劇の事業」に限り、以下の条件をみたせば使用できる。

・児童の健康および福祉に有害でないこと
・労働が軽易なものであること
・児童の修学時間外であること
・労働基準監督署長の許可を得ること

赤ちゃんモデルも「労働者」にあたる場合はこの例外に含まれるため、乳幼児が仕事すること自体は違法ではないといえるだろう。

しかし、そもそも、赤ちゃんモデルは「労働者」にあたるのだろうか。

●赤ちゃんモデルは「労働者」ではない?

労基法では、労働者とは「使用される者で、賃金を支払われる者」と規定されている。

【労働基準法9条】 この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所(以下「事業」という。)に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。

この文言のみでは、どのような基準で「労働者」と判断されるのかがわかりづらい。労働問題に詳しい笠置裕亮弁護士は、次のように説明する。

「どのような基準を満たせば使用される者にあたり、支払われているお金が賃金といえるかについて、国が判断の目安を示しています。

まず、使用されているといえるためには、下記の要素があるかどうかが重要です。

(1)仕事の依頼・業務従事の指示等に対し、諾否の自由(断ってもよい自由)があるかどうか
(2)業務遂行上の指揮監督(会社が業務の具体的内容及び遂行方法を指示し、業務の進捗状況を把握、管理しているなどの実態)があるかどうか
(3)勤務時間や勤務場所の拘束があるかどうか
(4)代替性(他人がその仕事を代わりにやってもよいこと)があるかどうか

(1)(4)があれば指揮監督関係は薄いと考えられ、使用されているとはいいづらくなります。他方、(2)(3)があれば、指揮監督関係があると考えられるため、使用されているといいやすくなります」

では、支払われている金銭が「賃金」といえるのは、どのような場合だろうか。

「時間給・日給・月給など時間を単位として計算される場合は『賃金』といえる一方で、時間ではなく仕事の成果に対して報酬が支払われる場合はいいづらいでしょう」

以上の点だけで労働者にあたるか否かの判断が難しい場合は、さらに以下の要素を補強しながら判断することになるという。

・仕事に必要な機械・器具をどちらが負担しているか
・報酬の金額
・専属であることを求められているかどうか
・税金などの処理の仕方

「労働者自身が仕事に必要な機械や器具を用意している、極めて高額な報酬額が設定されている、源泉徴収がされずに確定申告している場合は『労働者』といいづらくなりますし、専属であることを求められている場合は『労働者』といいやすくなるでしょう。

これらの判断は、当事者の主観や、契約書にどのように書かれているかなどの形式的な事情ではなく、客観的な事実や労働の実態に基づいておこなわれます。そうでなければ、実態だけみれば労働者で労働法の保護を受けられるにもかかわらず、契約書のタイトルを『労働契約書』ではなく『業務委託契約書』にしておけば、法律の規制をすり抜けられるという不合理な結果を生みかねません。

赤ちゃんモデルは、契約先である芸能プロダクションからモデルの仕事の紹介を受け、仕事をするたびに一定の割合のマネジメント料が支払われるケースが一般的かと思われます。そのような場合は、少なくとも上記(1)~(3)に挙げた拘束性はないと考えられるため、労働者にはあたらないということになるでしょう」  

●報酬は親権者などが代理受領できる

労基法では、乳幼児であっても賃金は直接本人に支払われなければならず、親権者や後見人がかわりに受け取ることを罰則つきで禁止している(労基法59条、120条1号)。笠置弁護士によると「かつて工場などで働く未成年者に賃金を支払わず、親元だけに賃金を送金してしまうという事例が数多く見られたことを受け、規制がなされた」とのことだ。

しかし、これは赤ちゃんモデルが「労働者」といえる場合の話に限られる。

「乳幼児が労働者だと認められるケースはあまりないと思われます。労働者性がない場合には、報酬を親権者や後見人が代理受領することが認められます」

親権者などに認められているのは、あくまで子どもの代わりに報酬を受け取ることだ。我が子が成長し、過去に赤ちゃんモデルをしていたことを知れば、そのギャラの行方が気になるかもしれない。その際には、親権者などが本人に説明できるようにしたほうがよいだろう。

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