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「戸籍がないので結婚できなかった」 無戸籍の男女3人が「公的支援」求めて署名提出
2014年06月19日 21時31分

生まれたときに親が出生届を提出することができず、成人になっても「無戸籍」のまま生活してきた男女3人が6月19日、東京・永田町で記者会見を開いた。3人は「一日も早く戸籍がほしい」と打ち明け、公的な基金の設立を求める約1万2000人分の署名を法務省に提出した。

生まれたときに親が出生届を提出することができず、成人になっても「無戸籍」のまま生活してきた男女3人が6月19日、東京・永田町で記者会見を開いた。3人は「一日も早く戸籍がほしい」と打ち明け、公的な基金の設立を求める約1万2000人分の署名を法務省に提出した。

●離婚後300日以内に生まれた子どもは「前夫」の子に

そもそも、なぜ「無戸籍」になってしまったのだろうか。その背景の一つとして、「離婚後300日以内に生まれた子どもは前夫の子どもと推定される」という民法772条の規定がある。この規定がつくられた明治時代には、父親が誰なのかということをはっきりさせる意味があったが、DNA鑑定で親子関係の判別が可能な近年では「科学的に根拠がない」と批判されている。

そのルールが、いまだに変更されないことが問題を引き起こしている。たとえば、夫のドメスティック・バイオレンス(DV)が原因で離婚した女性が、新たなパートナーとの間に子どもを産んだ場合、離婚から300日が経っていなければ、「前夫の子」となってしまう。これを避けるため母親が出生届を出すのをためらうと、子どもは「無戸籍」になる。

裁判や調停を通じて、「無戸籍」状態を解消することも可能だが、費用の負担が重いことや、制度そのものを知らないケースもあり、そのまま成人を迎える人もいる。会見では、「無戸籍」の成人3人が支援の充実を訴えた。

●41年間無戸籍の男性「普通の生活がしたい」

「41年間、無戸籍です」。大阪に住んでいる無戸籍の男性は会見冒頭、こう自己紹介した。彼が自分に戸籍がないことを知ったのは、20歳くらいのころ。当時のパートナーの女性と結婚しようと役所に婚姻届を持っていくと、職員から「戸籍がないから受理できない」と言われたという。

「すぐに理解できなかったが、生きていくうちに、戸籍謄本がとれないということがわかった。戸籍謄本がないと、当時、免許証には『本籍地が不詳』と書かれた。警察に呼び止められるたびに、普通の人なら5分で終わる話が、根ほり葉ほりと調べられた。『免許証は偽物じゃないのか?』と言われたこともある」

男性は就職でも消極的になったという。「会社から『戸籍を持ってこい!』と言われるんじゃないかと思った。大手企業に勤めることや、資格取得もあきらめざるをえなかった」。今の望みは、パートナーと結婚すること。「パートナーに支えられて生きている。みんなと同じように結婚して、ふつうに暮らしたい。そして、いち早く無戸籍の人がいなくなるようにしたい」と話していた。

●2週間で1万2430人の署名が集まる

無戸籍の人たちを支援する「民法772条による無戸籍児家族の会」の井戸正枝代表によると、「無戸籍の人たちは全国に1万人以上いる」という。井戸さんらが中心になって、無戸籍の人たちの裁判をサポートする公的な「ファンド」の設立を求め、署名サイト「Change.org」で賛同者を募ったところ、6月5日から19日までに1万2430人分集まった。

多くの署名が集まったことについて、会見に出席した無戸籍の34歳男性は「素直にうれしい」と感想を述べた。ふだんは建築の仕事をしているが、戸籍がないために、これまで社会保険や国民健康保険に入れなかったという。「普通に人として国から認められたい」と語った。

また、同じく会見に出席した「無戸籍」の32歳女性は、1週間前に住民票を作成することができた。「先日、初めて歯医者に行ってきた。ふつうの生活だけどうれしい。ふつうの生活ができないのが一番つらい」「まだまだたくさん(無戸籍の人は)いるので、この署名を無駄にしないでほしい」と願いを込めた。

支援団体では、無戸籍の人からの相談を受け付ける「離婚後300日・無戸籍問題24時間無料ホットライン」を設けている。電話番号は03-5981-8205(関東地区)、078-843-1560(関西地区)。

(弁護士ドットコムニュース)

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