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「プールの水」流失で小学校教諭が個人弁済――弁護士「ブラック企業と変わらない」
2016年03月07日 11時55分

千葉市中央区の市立小学校で昨夏、男性教諭がプールの給水口の栓を閉め忘れて、大量の水を流失させる事故が起きた。この際に発生した水道料金約438万円をめぐって、誰が責任をとるべきかが問題になったが、今年2月中旬、小学校の校長と教頭、男性教諭の3人が全額弁済した。

千葉市教育委員会によると、体育主任をつとめる男性教諭が昨年721日、小学校で行われた水泳教室のあとで、給水栓を閉めるのを忘れた。その後、87日に閉栓されるまで、18日間も注水が続いた。プール脇の排水口に流出して、無駄になった水は約9200立方メートルにのぼった。

県水道局から請求された水道料金約438万円。市教委はその支払について、学校関係者や顧問弁護士と相談して検討していた。今回、3人が弁済した背景について、市教委保健体育課の担当者は、弁護士ドットコムニュースの取材に対して「本人たちから『全額弁済したい』という強い申し入れがあり、その意向を尊重した」と説明した。

だが、インターネット上では、個人が損害の穴埋めをしたことについて、疑問を投げかける声もあがっている。今回のように、仕事のミスによって生じた損害について、誰が責任をとるべきなのだろうか。今泉義竜弁護士に聞いた。

千葉市中央区の市立小学校で昨夏、男性教諭がプールの給水口の栓を閉め忘れて、大量の水を流失させる事故が起きた。この際に発生した水道料金約438万円をめぐって、誰が責任をとるべきかが問題になったが、今年2月中旬、小学校の校長と教頭、男性教諭の3人が全額弁済した。

千葉市教育委員会によると、体育主任をつとめる男性教諭が昨年721日、小学校で行われた水泳教室のあとで、給水栓を閉めるのを忘れた。その後、87日に閉栓されるまで、18日間も注水が続いた。プール脇の排水口に流出して、無駄になった水は約9200立方メートルにのぼった。

県水道局から請求された水道料金約438万円。市教委はその支払について、学校関係者や顧問弁護士と相談して検討していた。今回、3人が弁済した背景について、市教委保健体育課の担当者は、弁護士ドットコムニュースの取材に対して「本人たちから『全額弁済したい』という強い申し入れがあり、その意向を尊重した」と説明した。

だが、インターネット上では、個人が損害の穴埋めをしたことについて、疑問を投げかける声もあがっている。今回のように、仕事のミスによって生じた損害について、誰が責任をとるべきなのだろうか。今泉義竜弁護士に聞いた。

「人間であれば誰しも『うっかりミス』をする」

「一般的な法律上のルールでは、『わざと』(故意)・『うっかり』(過失)によって、他人に損害を与えた場合、生じた損害を賠償しなければいけないことになっています。

ただし、労働者と使用者との関係においては、『わざと』損害を与えた場合や『重大な過失』がある場合を除いて、労働者に損害賠償をする義務は生じません」

今泉弁護士はこのように述べる。どうしてそんなルールになっているのだろうか。

「毎日働いているなかで、人間であれば誰しも、『うっかりミス』をすることはあります。使用者は、当然そのことを予想して対策を考えるべきです。また、使用者は労働者を使うことによって利益を得ているのですから、損害が発生したときにはそれを負担するのも当然というように考えるべきだからです。

裁判例においても、労働者が損害賠償責任を負うケースは、ごくごく例外的な場合に限られています。コンビニなどで釣銭があわない場合に、バイトの店員に支払わせるといった話をよく聞きますが、これは許されないことです。

結論として、一般企業の場合、業務上のミスによって生じた損害について、労働者個人が穴埋めすべきではありません」

「再発防止のための体制改善をすべき」

今回のケースは一般企業ではなく、公立小学校で起きた事故だが、どう考えるべきだろうか。

「今回のケースは、水道代438万円という高額な金額について、小学校の校長、教頭、男性教諭という3人の個人に支払わせています。このような対応は、ブラック企業と変わりません。

たとえ、本人たちが『全額弁済したい』と言っていたとしても、労使間の力関係からして、自由な意思によるものであるというのは、相当な疑問があります。

そもそも、ミスが起こり得ることを想定したうえで、複数人によるチェック体制や、定期的な見回りの体制がとられていなかったことが問題です。とりわけ、公立小学校の教員は残業代のつかない長時間労働で多忙を極めており、『うっかりミス』が生じやすい職場環境におかれています。

市教委は、再発防止のための体制改善をすべきです。個人の自己責任に問題を矮小化してしまうような今回の対応は、最悪の例として記憶されるべきでしょう」

今泉弁護士はこのように述べていた。

(弁護士ドットコムニュース)

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