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スキャンダル報道で「不倫相手は◯◯似」、まったく関係ないタレントに「かわいそう」の声…法的に問題ないの?
2023年11月08日 09時56分

著名人のスキャンダルで、不倫相手について、特定の俳優やタレントの名前をあげて「◯◯似の美女」などという見出しで報じられることがある。

古くからある手法だが、最近でいえば、自民党埼玉県議団長について『"北川景子似"受付嬢と「不倫キス」』(文春オンライン/2023年10月12日)、山田太郎文部科学政務官について『《有村架純似の色白美女と》』(同/2023年10月23日)が話題になった。

一方、SNS上では「不倫と関係ないのに勝手に名前を出されてかわいそう」といった声も見られた。このように無関係なのに「◯◯似」と報じられることは、タレントにとって問題ないのだろうか。

著名人のスキャンダルで、不倫相手について、特定の俳優やタレントの名前をあげて「◯◯似の美女」などという見出しで報じられることがある。

古くからある手法だが、最近でいえば、自民党埼玉県議団長について『"北川景子似"受付嬢と「不倫キス」』(文春オンライン/2023年10月12日)、山田太郎文部科学政務官について『《有村架純似の色白美女と》』(同/2023年10月23日)が話題になった。

一方、SNS上では「不倫と関係ないのに勝手に名前を出されてかわいそう」といった声も見られた。このように無関係なのに「◯◯似」と報じられることは、タレントにとって問題ないのだろうか。

⚫️大手芸能事務所「犯罪者を美化することにもつながりかねない」

「事件報道や不倫などのスキャンダルの当事者に『似ている』とタレントの名前が使われることを苦々しく感じています。誰もが知っているタレントだからこそなのでしょうが、『有名税』だからといって、許せるわけではないです」

そう話すのは、多くのタレントを抱える大手芸能事務所の関係者だ。

「メディアの『報道の自由』や『表現の自由』は事務所も理解しています。『美しい』『目鼻立ちのはっきりしたイケメン』などと形容するより、誰もが知っている芸能人の顔のほうが、読者はイメージをつかみやすいでしょう

しかし、似ている似ていないの真偽が問題ではなく、タレントの名前が出ること自体がマイナスだと思います。場合によっては、犯罪者を美化することにもつながりえますので、社会的にもよくないのではないでしょうか」

関係者はさらにこう続ける。

「メディアにとっては便利かもしれませんが、編集側の主観で、なんとでもなる"飛び道具"です。メディアは楽してないですか、と言いたいです」

⚫️過激な見出しをつけるメディア、さらにYouTuberが拡散

また別の大手芸能事務所の関係者も、対応に苦慮していることを打ち明ける。

「ポイントはタレント本人の気持ちだと思います。もしも、嫌な気持ちを感じていたら、事務所としては本人のためになんとかしたい。事務所としても、イメージが大切な商売なので、詐欺などの犯罪や不倫などと並べられることは避けたいです。

しかし、残念ながら、おそらく法的には問題がないと思われるので、戦う術がありません。もちろん、法的な措置が取れずとも、メディア側にクレームをつけることは可能ですが、取り下げてはくれないでしょう」

また、近年はネットでの拡散が「被害」を拡大させているという。

「こうした記事は昔からありましたが、今のネットは短い見出しだけが広く拡散されてしまいます。メディアもPV稼ぎが狙いでしょうけど、YouTuberなどが、自分たちのチャンネルの閲覧数を稼ぐため、その記事をもとにさらに過激な見出しをつけて拡散していきます。

それをすべてチェックして潰していくことはとても難しいです。ただし、これまであまり声高に嫌だと意思表示する芸能人はいませんでしたが、業界全体で声を上げていけば何か変わるかもしれないし、メディア側の意識も変わるかもしれません」

⚫️清水陽平弁護士「法的措置は簡単ではない」

大手芸能事務所側は、法的な措置が難しいと見ているが、インターネットの問題にくわしい清水陽平弁護士も「指摘されているとおり、『◯◯似』とされたものについて法的問題があるとすることは簡単ではないといえます」と話す。

その理由を清水弁護士は次のように説明する。

「名前とともに不倫や犯罪行為を組み合わせて報道されている、ということであれば、名誉毀損の問題になりえますが、似ているということであれば本人について報じたものではないことが明らかなため、少なくとも名誉毀損とはならないためです。

この問題は、『名前が勝手に使えないようにできないか』ということと整理できます。

そこで検討すると、氏名それ自体はプライバシーの対象にならないことから、プライバシー権を理由にして制限することは難しそうです。

次に、判例上、氏名は『人が個人として尊重される基礎であり、その個人の人格の象徴であつて、人格権の一内容を構成するものというべきもの』として(最高裁昭和63年2月16日判決)、『氏名権』という権利を認めています。

ただし、氏名権は氏名を正確に呼称されたり、なりすましをされないといった場面で問題になるものであり、これを適用することも難しいといえます」

⚫️今後認められる可能性は「まったくないとはいえない」

では、今後も法的措置をとることはできないのだろうか。清水弁護士はこうも指摘する。

「氏名権に関係して、『パブリシティ権』という権利も判例上認められています(最高裁平成24年2月2日判決/ピンク・レディー無断写真掲載事件)。

パブリシティ権は、氏名、肖像等に生じるもので、顧客吸引力を排他的に利用する権利とされています。

この判例によれば、『肖像等を無断で使用する行為は、(1)肖像等それ自体を独立して鑑賞の対象となる商品等として使用し、(2)商品等の差別化を図る目的で肖像等を商品等に付し、(3)肖像等を商品等の広告として使用するなど、専ら肖像等の有する顧客吸引力の利用を目的とするといえる場合に、パブリシティ権を侵害するものとして、不法行為法上違法となると解するのが相当である』とされています。

記事も一つの商品ということができるでしょうから、タレントの名前を『◯◯似』という形で使う場合、(2)または(3)の使い方をしていると構成する余地はあるといえます。

このような構成でパブリシティ権侵害が認められている例は、少なくとも自分は認識していないのですが、何が不法行為にあたるかは時代によっても変わっていくものであり、『◯◯似』という報道に対して、現在、批判的な声が発せられるようになったことからすれば、今後は認められる可能性がまったくないとまではいえないと思います」

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