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「刑務所に戻りたい」出所直後に2人ひき逃げ、男性を「殺人」で起訴 有罪なら量刑は?
2020年07月06日 18時49分

福島県で今年5月に起きた50代の男女2人が死亡したひき逃げ事件で、逮捕された男性が6月30日、殺人などの罪で起訴された。ブレーキ痕がないことなどから、明確な殺意があったとして、逮捕容疑より重い罪名での起訴となった。

報道によると、被告人の男性は事件の2日前に刑務所から出所。知人の会社で働く予定だったが、トラックを盗んで犯行に及んだといい、「刑務所に戻りたかった」などと話しているそうだ。

この通りであれば、出所者支援にも課題があると言えそうだ。とはいえ、あまりにも身勝手な理由に、ネットでは「震えるほど怒りを覚える」「刑務所に戻るにしても別の方法があるだろう」といった意見が多い。

身柄を拘束された被告人は拘置所で過ごすが、もしも死刑が適用された場合、刑務所に行くことはなく、刑が執行される日まで拘置所暮らしとなる。有罪となれば、量刑はどうなるのだろうか。

福島県で今年5月に起きた50代の男女2人が死亡したひき逃げ事件で、逮捕された男性が6月30日、殺人などの罪で起訴された。ブレーキ痕がないことなどから、明確な殺意があったとして、逮捕容疑より重い罪名での起訴となった。

報道によると、被告人の男性は事件の2日前に刑務所から出所。知人の会社で働く予定だったが、トラックを盗んで犯行に及んだといい、「刑務所に戻りたかった」などと話しているそうだ。

この通りであれば、出所者支援にも課題があると言えそうだ。とはいえ、あまりにも身勝手な理由に、ネットでは「震えるほど怒りを覚える」「刑務所に戻るにしても別の方法があるだろう」といった意見が多い。

身柄を拘束された被告人は拘置所で過ごすが、もしも死刑が適用された場合、刑務所に行くことはなく、刑が執行される日まで拘置所暮らしとなる。有罪となれば、量刑はどうなるのだろうか。

●「死んでもかまわない」は故意あり

報道によると、逮捕時の容疑は自動車運転処罰法違反(無免許過失運転致死)と道交法違反(ひき逃げ)だった。その後、6月19日にトラックの窃盗容疑で再逮捕されている。

交通事故や刑事事件にくわしい星野学弁護士は、次のように解説する。

「起訴時に殺人罪に変更されたということは、被告人に殺人の故意があったと検察官が判断したためです。

殺人の故意(殺意)は、人の死という結果を意図し、死の結果を予見、認容することとされています。

したがって、『殺してやろう』(確定的故意)という意思までは必要なく、『死ぬかもしれない』という程度の認識で足りることになります(未必の故意)」

●客観的な事情・証拠から故意を認定できるか?

報道では、「刑務所に戻りたかった」と故意を認めるような供述が伝えられている。

「もっとも、犯人が『殺す気でした』といえば殺意あり、『殺す気はありませんでした』といえば殺意なしになるものではなく、殺意の有無は客観的な事情・証拠により判断されます。

報道等を前提にすれば、本件では以下のような事情が見られ、これらは殺意があったと判断する事情といえます。

(a)被害者に衝突させたのが準中型トラックという比較的大きい車両であること

(b)速度が時速約60から70キロという速いものであること

(c)被害者に車両を衝突させる前に加速していること

(d)ブレーキをかけた跡がないこと

他方で、次のような事柄は殺意を否定する方向に考慮される事情といえます。

(A)車を人に衝突させても必ず人が死ぬとは限らないこと

(B)刑務所に戻りたかったと述べながら死刑になり得る行為をすることは矛盾していること

したがって、裁判では殺意の有無、殺意が認められた場合にはそれが確定的なものであるか未必的なものであるかが争点になると考えられます。

もっとも、『刑務所に戻りたい』といいながら、捕まらないために現場から逃走を図っていること、刑務所に入るのではなく死刑になる可能性がある犯罪を行っていることから、被告人の行動は不合理なものといわざるを得ず、裁判では責任能力の有無・程度も争点になると予想されます」

●前科の内容次第で死刑もありうる

「死刑になる可能性もある」との説明があったが、量刑はどう考えられるだろうか。

「裁判で殺意が認められれば殺人罪、殺意が否定されれば傷害致死罪になるので、言い渡される量刑も大きく異なります。

報道の内容を前提とすれば殺人罪が肯定されると思われますが、この場合、被害者が複数であることから死刑判決の可能性もあります。この点、最高裁はいわゆる永山基準というものを示しています。

(1)犯罪の罪質
(2)動機
(3)事件の態様、特に殺害手段や方法の執拗性・残虐性
(4)結果の重大性、特に殺害された被害者の数
(5)遺族の被害感情
(6)社会的影響
(7)犯人の年齢
(8)前科
(9)犯行後の情状

これらを考慮し、極刑がやむを得ないと認められるときに死刑を科すことができるとするものです。もちろん、死刑判決は必ずこの基準により決まるわけではありません。

しかし、生命を奪う死刑判決を下すに当たっては慎重が期されるべきであるため、個人的には、犯人の前科が殺人でない限り、本件に対する判決では死刑判決が回避されるのではないかと考えています」

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