17180.jpg
タクシー会社「実質残業代ゼロ」めぐり最高裁で30日判決 歩合給から残業代差し引く
2020年03月29日 09時03分

残業代の考え方をめぐって注目の判決が3月30日、最高裁第一小法廷(深山卓也裁判長)で言い渡される。問題となっているのは、タクシー大手・国際自動車(kmタクシー)でかつて採用されていた残業代の計算方法だ。

原告である同社のドライバーらは、どれだけ残業しても金額が一緒だとして、「実質残業代ゼロ」の制度だと主張してきた。

というのも、同社で支払われる「歩合給」は、タクシーの売上(揚高)をもとに算出した金額(裁判では「対象額A」と呼ばれている)から、残業代相当額と交通費を引いたものだったからだ。

制度のイメージ(簡略化のため一部手当は省略) 制度のイメージ(簡略化のため一部手当は省略)

形式上、残業代の項目はあるものの、同額が引かれているのだから、確かにいくら働いても残業代がゼロという見方もできそうだ。

しかし、もとになった高裁判決(原判決)は、制度を適法と判断していた。今回、最高裁が弁論を開いているため、結論が見直される可能性がある。

残業代の考え方をめぐって注目の判決が3月30日、最高裁第一小法廷(深山卓也裁判長)で言い渡される。問題となっているのは、タクシー大手・国際自動車(kmタクシー)でかつて採用されていた残業代の計算方法だ。

原告である同社のドライバーらは、どれだけ残業しても金額が一緒だとして、「実質残業代ゼロ」の制度だと主張してきた。

というのも、同社で支払われる「歩合給」は、タクシーの売上(揚高)をもとに算出した金額(裁判では「対象額A」と呼ばれている)から、残業代相当額と交通費を引いたものだったからだ。

制度のイメージ(簡略化のため一部手当は省略) 制度のイメージ(簡略化のため一部手当は省略)

形式上、残業代の項目はあるものの、同額が引かれているのだから、確かにいくら働いても残業代がゼロという見方もできそうだ。

しかし、もとになった高裁判決(原判決)は、制度を適法と判断していた。今回、最高裁が弁論を開いているため、結論が見直される可能性がある。

●高裁は「契約の自由」「労働組合の同意」を重視

3月30日の最高裁では、国際自動車の残業代をめぐる3つの裁判の判決が出る。いずれも論点は同じだが、原告や代理人が異なる。そのため、各原判決にも代理人や判断した裁判官によっていくらかの違いがある。

原告視点でみた訴訟の流れ

ただし、各原判決の大まかなポイントは、法令違反などがない限り、賃金をどのように定めるかは自由として、労使の自治を重視している点だと言えるだろう。

たとえば、労働基準法37条は、時間外労働や深夜労働、休日労働についての割増率を定めている。

問題となった制度をみてみると、歩合給から事実上控除されているとしても、勤務時間に応じた残業代は支給されていた。

また、売上がどんなに少なくても、歩合給はゼロを下回らないという決まりだったため、法定よりも残業代が少なくなることはなかった。つまり、形式面はクリアしている。

そもそも、この制度が残業代の支払いを避けるためのものではなく、ドライバーに短時間で効率よく稼ぐことを動機づけ、労働時間の抑止などを目的としたものだと認定した原判決もある。

そして、この仕組みはドライバーの95%が加盟する最大組合が了承したうえで導入されている(原告らは少数組合に所属している)。

以上のような事情も踏まえて、各原判決は制度を適法と判断していた。

●争点は「労基法37条」

最高裁では、こうした制度が労基法37条に違反していないかが判断されそうだ。

残業代相当額を引くことが、労働者への補償と企業へのペナルティーという残業代の趣旨に反しないか。

また、同条では残業代計算のベースとなる「通常の賃金」と「割増賃金(残業代)」が判別できることが求められているところ、「通常の賃金」に当たる歩合給が残業代によって変動する仕組みは認められるのか。

3つの事件のうち、もっとも古いものの提訴は2012年。どんな決着が待っているだろうか。

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る