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山本一郎氏の請求却下、川上量生氏「唐澤先生が予想されたとおりの結末」…東京地裁
2021年02月10日 20時00分

正当な理由もなく、ブログ記事・ツイートの削除を要求されたとして、作家・投資家の山本一郎氏が、ドワンゴの創業者である川上量生氏らを相手取り、削除義務がないことの確認などをもとめた訴訟で、東京地裁は2月10日、山本氏側の請求を退ける判決を言い渡した。

東京地裁の大濱寿美裁判長は、すでに川上氏らが「現在は削除を求めていないし、将来も削除をもとめることはない」と反論していることから、訴えの利益がないと判断した。

また、川上氏の抗議文が公表されたことで、名誉毀損を受けたという主張についても「社会的評価を低下したさせたとはいえず、名誉毀損が成立したとしても違法性は阻却される」とした。

正当な理由もなく、ブログ記事・ツイートの削除を要求されたとして、作家・投資家の山本一郎氏が、ドワンゴの創業者である川上量生氏らを相手取り、削除義務がないことの確認などをもとめた訴訟で、東京地裁は2月10日、山本氏側の請求を退ける判決を言い渡した。

東京地裁の大濱寿美裁判長は、すでに川上氏らが「現在は削除を求めていないし、将来も削除をもとめることはない」と反論していることから、訴えの利益がないと判断した。

また、川上氏の抗議文が公表されたことで、名誉毀損を受けたという主張についても「社会的評価を低下したさせたとはいえず、名誉毀損が成立したとしても違法性は阻却される」とした。

●海賊版サイトのブロッキングをめぐる対立をしていた

漫画やアニメの「海賊版サイト」のブロッキングをめぐって、ブロッキング賛成派の川上氏と反対派の山本氏は2018年春以降、インターネット上で対立していた。

川上氏は同年11月7日、山本氏からネット上で攻撃を受けたとして、山本氏が上席研究員として所属する一般社団法人「情報法制研究所」に対して、記事・ツイートの削除や謝罪を要求する抗議文を送った。

これを受けて、山本氏は同年11月14日、川上氏らを相手取り、削除義務の不存在を確認する訴訟を起こした。のちに山本氏は、抗議文によって名誉毀損を受けたとして損害賠償200万円を追加請求していた。

●名誉毀損は成立しないとされた

名誉毀損に関して、東京地裁は次のように判断している(抜粋・要約)。

「海賊版サイトのブロッキングに反対していた山本氏が、ブログ記事やツイッターなどで、ブロッキングに賛成する川上氏などに対して、揶揄、愚弄、嘲笑あるいは蔑視と評価せざるを得ない投稿をおこなっていたこと・・・(中略)・・・などからすれば、通常有する程度の否定的な意味合いを持たず、抗議文は、原告の社会的評価を低下させたとはいえない」

「自己の正当な利益を擁護するためやむを得ず他人の名誉、信用を毀損するような言動をおこなった場合、相手の言動とくらべて、その方法・内容において適当と認められる限度を超えない限り、違法性を欠く。抗議文が公表されたことで、原告に対する名誉毀損が成立するとしても、その違法性は上記の観点からも阻却されるというべき」

●川上氏「唐澤先生が最初に予想されたとおりの展開と結末」

この日の判決を受けて、川上氏は弁護士ドットコムニュースの取材に次のようにコメントした。

「(代理人の)唐澤(貴洋)先生は非常に信頼できる弁護士です。いまのところ、ほぼ唐澤先生が最初に予想されたとおりの展開と結末になっています。

今回の裁判は、そもそも私がおこなった情報法制研究所への抗議を妨害する目的で、山本一郎氏が起こした訴訟であると理解しています。事実、情報法制研究所は、この裁判に山本一郎氏側として補助参加しています。

今日の判決を受けて、あらためて情報法制研究所には山本一郎氏をネット世論誘導のために利用していることの説明を求めていきたいと思います」

一方、山本氏は、弁護士ドットコムニュースの取材に「川上量生さんとの本件訴訟においては、すでに抗議は川上さんが取り下げていたために主たる部分では争いがなく、一方であれだけ川上さんが書かれた記事では私どもの社会的地位は全く低下しなかったとの認定は感無量です」とコメント。控訴などの対応については検討中としている。

なお、山本氏と川上氏は、今回も含めて3つの裁判で争っており、そのうち1つは山本氏の勝訴が確定している。

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