17603.jpg
「私を死刑にしてください」 被告人の要望は「判決」に影響する?
2013年09月18日 18時55分

中国・北京でこのほど、殺人罪に問われた被告人の男が自ら「死刑にして」と要求し、物議を醸している。

中国メディア「新京報」によると、被告人は今年7月、駐車スペースをめぐって女性と口論になり、女性の娘(2歳)を地面に叩きつけて殺したとして、殺人罪に問われている。被告人は検察官に対し、泣きながら「子どもに酷いことをしてしまった。私を必ず死刑にしてください」と供述したという。

被告人が「死刑にして」などと発言したケースは、2008年の土浦連続殺傷事件や、04年の奈良小1女児殺害事件、01年の附属池田小事件など、日本でも例がある。このように、被告人が自ら死刑を"求刑"することが、判決に影響を与えることはあるのだろうか。検事として28年の経験をもつ野口敏郎弁護士に聞いた。

●「死刑にしてください」という被告人の言葉は「証拠の一つ」にすぎない

「検察官が論告で『被告人を死刑に処するのを相当と思料する』と述べることを『求刑』といいます。しかし、被告人が法廷で『私を死刑にしてください』と述べるのは被告人供述にすぎず、『求刑』ではありません」

このように野口弁護士は述べたうえで、次のように説明する。

「検察官の求刑は、公益の代表者の科刑意見ですから、裁判所も尊重します。検察官が死刑求刑をすれば、ほとんどの場合、死刑判決が出るという意味で、検察官の死刑求刑は判決に大きな影響があると言えます。

一方、被告人が『私を死刑にして下さい』と述べても、それは被告人供述であって、他の証拠と同じく、情状に関する証拠にすぎません」

●裁判所が被告人の「供述」に拘束されることはない

そして「証拠」は、「被告人に有利にも不利にも使用される」という。

「たとえば、『私を死刑にしてください』と述べたことが、罪を悔い改め、心底改悛の情から出た言葉と評価されれば、被告人に有利な証拠となるでしょう。これに対し、何の反省の態度もうかがわれないのに、投げやり的に『私を死刑にしてください」と述べたところで、何の意味もなく、むしろ被告人に不利な証拠と評価される余地があります」

つまり、「私を死刑にしてください」という言葉だけでは、裁判官にどう評価されるかわからないということだ。

「いずれにせよ、検察官の求刑ですら裁判所を拘束するものではないので、被告人の『私を死刑にしてください』という供述が、裁判所を拘束することはありません」

さきに述べたように、日本でも被告人自身が死刑を望み、実際に死刑判決を受けたケースはある。しかしそれは、被告人が望んだからそうなったというわけではなく、裁判所が証拠にもとづいて判断した結果ということなのだ。

(弁護士ドットコムニュース)

中国・北京でこのほど、殺人罪に問われた被告人の男が自ら「死刑にして」と要求し、物議を醸している。

中国メディア「新京報」によると、被告人は今年7月、駐車スペースをめぐって女性と口論になり、女性の娘(2歳)を地面に叩きつけて殺したとして、殺人罪に問われている。被告人は検察官に対し、泣きながら「子どもに酷いことをしてしまった。私を必ず死刑にしてください」と供述したという。

被告人が「死刑にして」などと発言したケースは、2008年の土浦連続殺傷事件や、04年の奈良小1女児殺害事件、01年の附属池田小事件など、日本でも例がある。このように、被告人が自ら死刑を"求刑"することが、判決に影響を与えることはあるのだろうか。検事として28年の経験をもつ野口敏郎弁護士に聞いた。

●「死刑にしてください」という被告人の言葉は「証拠の一つ」にすぎない

「検察官が論告で『被告人を死刑に処するのを相当と思料する』と述べることを『求刑』といいます。しかし、被告人が法廷で『私を死刑にしてください』と述べるのは被告人供述にすぎず、『求刑』ではありません」

このように野口弁護士は述べたうえで、次のように説明する。

「検察官の求刑は、公益の代表者の科刑意見ですから、裁判所も尊重します。検察官が死刑求刑をすれば、ほとんどの場合、死刑判決が出るという意味で、検察官の死刑求刑は判決に大きな影響があると言えます。

一方、被告人が『私を死刑にして下さい』と述べても、それは被告人供述であって、他の証拠と同じく、情状に関する証拠にすぎません」

●裁判所が被告人の「供述」に拘束されることはない

そして「証拠」は、「被告人に有利にも不利にも使用される」という。

「たとえば、『私を死刑にしてください』と述べたことが、罪を悔い改め、心底改悛の情から出た言葉と評価されれば、被告人に有利な証拠となるでしょう。これに対し、何の反省の態度もうかがわれないのに、投げやり的に『私を死刑にしてください」と述べたところで、何の意味もなく、むしろ被告人に不利な証拠と評価される余地があります」

つまり、「私を死刑にしてください」という言葉だけでは、裁判官にどう評価されるかわからないということだ。

「いずれにせよ、検察官の求刑ですら裁判所を拘束するものではないので、被告人の『私を死刑にしてください』という供述が、裁判所を拘束することはありません」

さきに述べたように、日本でも被告人自身が死刑を望み、実際に死刑判決を受けたケースはある。しかしそれは、被告人が望んだからそうなったというわけではなく、裁判所が証拠にもとづいて判断した結果ということなのだ。

(弁護士ドットコムニュース)

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る