17663.jpg
特急運転中「フェイスブック投稿」した運転士 「懲戒解雇」処分は重すぎないか?
2014年10月17日 15時39分

JR北海道の男性運転士(23)が、特急列車の運転中にフェイスブックに投稿したとして、10月8日に懲戒解雇された。同社によると、この運転士は9月下旬、JR根室線を走る特急「スーパーおおぞら2号」を運転しながら、私物のスマートフォンでフェイスブックに書き込んだという。

不祥事があいついだJR北海道では今年4月から、就業規則に「故意に鉄道の安全運行を阻害する行為をおこなった場合は厳しく懲戒する」というルールを追加していた。そのルールが初めて適用された。

今回は、規則の言葉通り「厳しい懲戒」が下されたわけだが、ネットでは「アホすぎるが、解雇まで発展するのか」といった意見も出ている。たしかに懲戒解雇は、懲戒処分の中で一番重いものだとされる。運転士がやったことと受けた処分とのバランスを、労働問題にくわしい弁護士はどう見るだろうか。今井俊裕弁護士に聞いた。

JR北海道の男性運転士(23)が、特急列車の運転中にフェイスブックに投稿したとして、10月8日に懲戒解雇された。同社によると、この運転士は9月下旬、JR根室線を走る特急「スーパーおおぞら2号」を運転しながら、私物のスマートフォンでフェイスブックに書き込んだという。

不祥事があいついだJR北海道では今年4月から、就業規則に「故意に鉄道の安全運行を阻害する行為をおこなった場合は厳しく懲戒する」というルールを追加していた。そのルールが初めて適用された。

今回は、規則の言葉通り「厳しい懲戒」が下されたわけだが、ネットでは「アホすぎるが、解雇まで発展するのか」といった意見も出ている。たしかに懲戒解雇は、懲戒処分の中で一番重いものだとされる。運転士がやったことと受けた処分とのバランスを、労働問題にくわしい弁護士はどう見るだろうか。今井俊裕弁護士に聞いた。

●「客観的な合理性」と「社会通念上の相当性」がカギ

「企業が従業員に『懲戒処分』を行う場合に、直接的な根拠となるのは『就業規則』です。

この就業規則には通常、こういうことをしたら懲戒処分の対象としますとか、こんな時にはこういった処分が行われますといった決まりが書いてあります。また、処分をする前に弁明の機会を与えるといった、懲戒の手続きも規定されていることも多いです。

そして、懲戒処分の中で、最も重い処分が『懲戒解雇』です」

今回は、その最も重い処分が下されたわけだ。処分の重さは、どうやって決まるのだろうか?

「懲戒の対象になるような行為に対してどんな処分をするかは、基本的に、就業規則で規定された範囲内で、使用者(企業)が自由裁量で選ぶことができます。

しかし、その処分に客観的な合理性がなく、社会通念上相当であると認められない場合は、権利の濫用として無効となります

これが原則的な考え方です」

合理的かどうかと、社会常識に照らしてOKかどうかがポイントだということだが、判断の分かれ目はどこにあるのだろうか?

「実際の判断はケースバイケースで、具体的にどんなことをしたのか、その行為の性質や、その他の事情を見ていく必要があります」

●運転士は「乗客の安全を担う存在」

今回は重すぎないだろうか?

「もし、同様の行為で懲戒処分をうけたことがこれまでに一度もなく、また他の事由によっても処分されたことがないなら、今回のことで即、懲戒解雇までいくのは、厳しすぎるとの意見があるかもしれません。

しかし、運転士は、乗客と列車運行の安全を、直接、担っている存在です。多くの人の運命を握っているといっても過言ではありません。

運行中にフェイスブックに投稿をしていれば、その間の安全管理を怠っていることになります。惰性や気の緩みによって、それが習慣化すれば、由々しき事態といえます。

『歩きスマホ』が社会的に問題視されていることなども踏まえて考えると、今回の処分が一概に厳しすぎるとまでは判断できないでしょう」

今井弁護士はこのように指摘していた。

たしかに駅などで『歩きスマホ』をしている人を見れば、その危なっかしさは一目瞭然だ。多くの人命を預かる列車運転士の行為として、許容できるラインを明らかに越えていると言えそうだ。こうした事態を防ぐためには、運転士のモラル向上に加えて、鉄道会社としての対策も求められることになりそうだ。

(弁護士ドットコムニュース)

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る