17812.jpg
武道有段者、孫娘に暴力を振るおうとした「若者」に蹴りで反撃、「正当防衛」になる?
2015年08月18日 10時33分

「義父が私の娘に不埒なことをした酔っ払った若者と喧嘩になって逮捕された」。そんな書き込みがネット掲示板に投稿され、「正当防衛にならないのか」という点をめぐって議論となった。

投稿者によると、お祭りの会場で酔っ払った若者が、投稿者の娘に性的な発言をしたうえ、暴力を振るおうとしたため、一緒にいた義父が蹴りで反撃。武道有段者である義父の蹴りを受けた相手は骨折した。その結果、義父は、傷害の疑いで警察に逮捕されてしまったのだという。

義父は「相手が暴力を振るおうとしたので制止したが聞かず、孫に危害が及ぶと考え仕方なく牽制で蹴りを出した」として、「正当防衛だ」を主張しているそうだ。

一方、投稿者の書き込みに対しては、「逃げればよかった」「やっぱり手を出したら駄目なんだよ。しかも有段者となると尚更」と、武道有段者の義父が蹴りで対抗したことに疑問の声が上がっていた。義父の行為は「正当防衛」にあたらないのだろうか。刑事事件を取り扱う近藤公人弁護士に聞いた。

「義父が私の娘に不埒なことをした酔っ払った若者と喧嘩になって逮捕された」。そんな書き込みがネット掲示板に投稿され、「正当防衛にならないのか」という点をめぐって議論となった。

投稿者によると、お祭りの会場で酔っ払った若者が、投稿者の娘に性的な発言をしたうえ、暴力を振るおうとしたため、一緒にいた義父が蹴りで反撃。武道有段者である義父の蹴りを受けた相手は骨折した。その結果、義父は、傷害の疑いで警察に逮捕されてしまったのだという。

義父は「相手が暴力を振るおうとしたので制止したが聞かず、孫に危害が及ぶと考え仕方なく牽制で蹴りを出した」として、「正当防衛だ」を主張しているそうだ。

一方、投稿者の書き込みに対しては、「逃げればよかった」「やっぱり手を出したら駄目なんだよ。しかも有段者となると尚更」と、武道有段者の義父が蹴りで対抗したことに疑問の声が上がっていた。義父の行為は「正当防衛」にあたらないのだろうか。刑事事件を取り扱う近藤公人弁護士に聞いた。

●義父の行為に「相当性」があるのか

「正当防衛が成立するためには、義父の傷害行為が、刑法36条の『急迫不正の侵害に対して、自己または他人の権利を防衛するため、やむを得ずした行為』であることが必要です」

近藤弁護士はこのように述べる。

「今回のケースでポイントとなるのは、義父の行為に『相当性』があったかという点でしょう。

相当性とは、『法益の相対的な均衡』と『防衛手段の相当性』から判断すべきとされています。

『法益の相対的な均衡』というのは、噛み砕いていえば、防衛行為によって守られる利益と、それにより失われる利益のバランスがとれているかということです」

●必要最小限度の行為だったのか、疑問が残る

今回のケースで、相当性は認められるだろうか。

「単に『有段者』というだけでは、正当防衛を認めないという理由にはなりません。

しかし、『有段者』の場合、日々鍛錬をしているので、どの程度の蹴りでどのような結果が生じるか、ある程度予測できるのではないでしょうか。

また、骨折という重大な結果が生じていますので、必要最小限度の行為だったのか、疑問が残ります」

問題の若者は、投稿者の娘に暴力を振るおうとしていたようだが、そういう状況は関係ないのか。

「若者が投稿者の娘に暴力をふるうことによって、骨折か、それと同じぐらいの傷害結果が生じるような危険があれば、正当防衛が成立する可能性があるといえるでしょう。

しかし、若者は相当酔っぱらっていたようですから、蹴りではなく、手で押しのけるといった対応で、十分だったかもしれません。

明らかになっている事情のもとでは、義父の行為は『相当性がない』として、正当防衛が成立しない可能性が高いでしょう。

ただし、義父の行為は、防衛のための行為だけど、やりすぎだったとして、過剰防衛が成立する可能性があります。過剰防衛が認められると、情状によって刑が減軽されるか免除されます(刑法36条2項)」

近藤弁護士はこのように述べていた。

(弁護士ドットコムニュース)

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る